第12話 最終戦1 

 

 

 

 

 

 

夕食の準備を終えて茜は一息つく。

 

土御門も、来栖も、あれから音沙汰が無い。少し不気味ではあるが、平和な日々を過ごしていた。

夢幻斎は精神的に、日に日に張り詰めて行く。何時始まるか判らない戦いに精神をすり減らしていた。

 

 

「茜様・・・」

聖児が地下から上がって来た。

「終わりましたか。お食事を・・・」

顔色が冴えない・・・・・

「夢幻斎様は?」

「・・・・・始まりました。部屋には・・・近寄るなと」

政宗が信号を送ったのだ。

「茜様、夢幻斎様は、この戦いで・・・」

命を落とす事になる。

「聖児様、貴方は待機していなければならなくてよ」

次期夢幻斎は、師の屍で人形を作らなければならない。

(師が亡くなるのを、ここで待てと?)

聖児は茜を見詰めた・・・・茜は頷く。

「しっかりして。夢幻斎の継承の為、越えなければならない壁よ。藤霞さまに連絡しなければ」

茜が立ち上がると同時に、藤霞が入ってきた・・・・急いで来たようだ。

「御長老!」

「始まりましたか・・・・」

夢幻斎が使い魔を送ったようだ。

「史也さん・・・・」

藤霞は目を閉じる。

 

 

 

 

 その頃、皇居付近の高いビルの屋上に、矢守和磨と土御門政宗は向かい合って立っていた。

「やはり・・・ミカドか?狙いは」

和磨はそれに答えず、嘲笑う。

「架怜に放火したそうだな。発火能力者に放火とは、相変わらずふざけたやつだな」

黒衣に身を包んだ矢守和磨・・・・鋭く尖った容姿から、吸血鬼のような印象さえ受ける。

「マントまで着用とは、芝居がかってるな」

「お前こそ、陰陽師の癖にスーツ着て、ふざけてるじゃないか」

ふっー政宗は笑う。

「今時、式服着て町を歩く奴もいないって」

「どうやって探り合てた?」

政宗は右手を和磨にかざす・・・・

「どうやら、お前と俺は繋がっているらしい」

和磨はその手に高彬の証を見て、息をのんだ。

「何時・・・そんなものが・・・」

「お前とおそろいの痣が出てきたんだ、俺にも。するとな、気配を感じるようになってな・・・お前の」

「・・・・そんな事が・・・」

「あるのかって?俺にも判らんさ。ところで、お前の相棒は来栖家か?」

「今頃は、黒薔薇団と薔薇十字との対決が繰り広げられているはず・・・」

夜風が吹きすさぶ。

「こんなことしてなんになる・・・辞めろ」

和磨は自らの手をかざす。

「俺の意思ではない。コイツがさせてるんだ」

まったく同じ痣が二人の右手にあった。

 「どうすれば、おまえを救えるのか?」

和磨は嘲笑う。

「救うだと?何様のつもりだ」

そう叫んで呪符を投げつけた。呪符は竜に姿を変えて政宗に襲い掛かる。それを政宗は五芒星の印を結んで跳ね返した。

すかさず政宗は呪符にライターで火をつけ投げつけると、それは火の鳥と化して和磨を襲う・・・・

和磨は、瞬間移動でそれを避けると、マントで風を起こし、竜巻を起こす・・・・葉羽瑠を切り裂いたカマイタチである。

政宗は右手でそれを跳ね返す・・・

「・・・・これが・・・夢幻斎と交わした契約の力か?」

「俺は二人分の能力(ちから)を持っている」

はははは・・・・・和磨は笑う。

「しかし、お前はその能力(ちから)を使いこなせない。よってお前が交わした契約は命取りだ。」

 

 

 

 

 

 「政宗様!」

地下の結界の中、夢幻斎は叫ぶ。

(和磨は知っている。政宗様の弱点を・・・)

戦いが夢幻斎の意識の中で繰り広げられる・・・じっと見守るしかない自分。

(ためらってはいけません!心を決められたのではなかったのですか!)

夢幻斎が一番恐れていた事。

和磨は政宗を限界に追い込む・・・・しとめるでもなく、外すでもない攻撃・・・・・

 

攻防戦は1時間続き、夢幻斎は仮眠用ソファーにもたれる。

(和磨をここまで動かしているのは怨念・・・それは戦いで昇華されるのか・・・・)

政宗が持ち去ろうとしないので、夢幻斎は自ら能力(ちから)を政宗に送り続けた。

 (どうすれば、和磨の怨念は解ける?)

政宗の自問自答が夢幻斎にも伝わる。倒すのではなく開放する・・・・・・それが政宗の答え。

方法は見つからないまま戦いは続いた。

 

  

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