遥想 2

 

南原が新婚旅行から帰ってきて、2日後

鬼頭のメンバーは、夕食の招待を受けて南原宅に集まった。

淀川の嬢さんでなく、鬼頭の若頭の妻になった桃香は、すっかりしおらしい新妻になっていた。

「変われば変わるもんやな・・」

龍之介は伊吹に耳打ちする

「男次第ですね・・・」

「そうか・・・俺の二十歳の時の急激な成長もそれか?」

「はあぁ?」

確かに、おかしな成長の仕方をした龍之介ではあるが・・・

 

2次会の酒の席で、新婚旅行の話が出る

「南原〜護衛つきで行って来て、面白かったか?」

龍之介の質問に苦笑する南原・・・

「町内あげてのかくれんぼ大会・・・てとこですか・・・」

(なんやそれは?)

よくわからない・・・・・

 「もう、何処行っても、あちこちの物陰からガサガサ・・と、潜んでるんですわ。」

「災難やな」

同情する龍之介

「まあ、何事もなく、無事に帰ってきたんやからええやろ」

伊吹の観点は少しずれている

しかし、無事で何より・・その事は、龍之介も伊吹も実感している事。

「とにかく、お帰りなさい。仕事たまってますから、宜しくお願いします」

岩崎が頭を下げる

「役立たず!」

笑いながら岩崎を小突く南原。

いつもの鬼頭に完全に戻って行く・・・少しずつ変化しながら・・・

 

 

「とにかく新婚の家に長居は無用やから・・・」

龍之介の配慮で、1時間くらいで宴会はお開きになる。

「そんな・・・もう少しいてくださいよ・・」

寂しげな南原を背に、鬼頭のメンバーは去っていく。

「組の為に、家庭を粗末にするな」

ヘンに説得力のある龍之介の言葉に、後ろにいる伊吹は驚く。

もう迷いは無いのだ・・・

そう確信する。

姐と情夫(いろ)の狭間で悩んでいた新米組長はもういない。

「桃香さん、困った事があったら何でも相談してね」

去り際に、聡子は桃香にそう言った。

「はい、色々教えてください」

母のような、姉のような聡子に、すでに桃香は懐いている

組には姐が必要・・・

哲三の言葉が身にしみる。

 

「聡子、今までありがとう」

帰りの車の中で龍之介はふと、聡子にそう言った

「どうしたんですか?急に」

「いや、お前には色々頭が上がらんから・・俺は我侭やし」

ふふふふ・・・・

聡子は笑う

「いいえ、龍之介さんは気ぃ使いすぎです。組の皆が疲れるんで、自然体でいてください」

運転していた高坂、助手席の岩崎、後部座席の哲三らは、つられて笑う。

「仲ええですよね・・・組長のとこは」

別に帰った伊吹を思いつつ、高坂は この優しく、悲しい三角関係を思う。

「やはり私、鬼頭に来てよかったですわ。」

入って、いきなり色んな騒動はあったが、龍之介も、伊吹も聡子も、南原の事も今まで以上に好きになった。

「お前、いつもそればっかりや・・・」

岩崎があきれる

「ホンマにそう、思うてますから・・・」

高坂は必死に弁明する

「ああ。そう思とけ」

哲三のフォローに大爆笑しながら、だんだん組長らしくなってゆく龍之介がいた。

 

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