誤解と理解の狭間 1

 

いつものペースに戻った鬼頭組。もう2月も近い・・・

 

「春日様・・・いきなり、なんですか・・」

星野留美子に、いきなり呼び出されて、”アンジェリーク”にやって来た伊吹・・・

「ごめん、忙しかった?」

そう言いつつ、客室に招き、紅茶とケーキを差し出す。

「いえ、仕事終わって帰るとこでしたし」

椅子に腰掛けて、伊吹は笑う。

「8代目は・・・」

「今日は、訪問の日と違いますから、ご心配なく」

ふふふ・・・留美子は含み笑いをする。

「8代目は淡白そうに見えて、タフね。行ったり来り・・・」

はあ・・・伊吹はあきれる。

「淡白なモンですか。独占欲の塊ですし」

目に見えるようで、大爆笑な留美子。

「そうか・・・押されてるんだ、藤島は。若い恋人持つと大変だ。」

(そういう話題は・・・・)

苦笑しつつ、まだ、留美子が自分をここに呼んだ意図がつかめない。

 「もうそろそろ来るかなあ・・・」

と、時計を見る留美子を見上げる伊吹。

「あ、桃香ちゃんが藤島に会いたいって言ってきてね、だから、藤島を呼んだの。」

「嬢さんが?」

何の用だろう・・・

「彼女、南原が藤島の事、想ってたのも、藤島が8代目の情夫(いろ)なのも知ってるよ」

だから・・・何がしたいんだろうか?

理解に苦しむ鬼頭のカリスマ

「私に脅しでもかける気ですか・・・」

はははははは・・・・

大笑いの留美子。

「8代目じゃあるまいし・・・」

え・・・・

「8代目だったら、”俺の情夫(いろ)に手ぇ出すな”とか言いそうだよね」

(いや・・・言うてますけど)

 「安心しな。南原はもう、吹っ切ってるよ。桃香ちゃん見る目がも〜うメロメロつうか・・・」

「それで、何が心配で、私とサシで話すことがあると?」

ふっ・・・

留美子は煙草を取り出して火をつけ、吸う。

「惚れた男の、かつての想い人に会ってみたい・・・そういうものよ」

「悪趣味ですね」

「知りたいのよ。全部。丸ごと。南原が今まで何を思って、どんな風に生きてきたのか」

それじゃあ・・・・と伊吹は思う

まるっきり龍さんじゃないか・・・・・

「似てるよね〜彼女。8代目に。」

どきっ・・・・

留美子には悟られている

「ああ見えて、独占欲強いし、甘えただし・・・・」

 

くしゅん・・・

くしゃみの音が聞こえた

「留美さん・・・・」

店の方から桃香の声がした。

「ほら。来た」

 

 

「嬢さん・・・話とは・・・」

桃香が入ってきて席に着くなり、伊吹はそう きりだす。

「藤島、肩の傷、見せてくれへんか?」

はああ・・・・・・

思いがけない要望に、伊吹は言葉を失う。

「すまん。ヘンなこと言うやろ。でも、圭吾を庇ってついた傷痕を、一目見ておきたい。そこに圭吾の想いも、

弟分を思う藤島の思いも込められてるから・・・・」

ああ・・・

そうか・・・伊吹は微笑む。

「結婚したら、うちは藤島の部下の妻や、こんな事 頼めへん。そやから・・・親組の組長の義妹であるうちに、

お願いに上がったんや。・・・・嫌やったら、ええよ。」

伊吹は頷く。

「そうですか」

「あの・・・8代目に怒られるかな・・・」

戸惑いや、恥じらいを纏いつつ、しかし一直線。それが桃香なのだ。

「他ならぬ嬢さんの頼みですから、でも、傷は肩にあるんで、少し、露出しますけど・・・」

あ・・・

真っ赤になって俯く桃香。

「藤島!おぼこい娘に何言う!」

留美子が怒鳴る。

「でも・・・ここで肌蹴てええんですか?」

「ああ、肩くらい思いっきりやれ!」

そう言って、留美子は伊吹のネクタイを緩め始める・・・

ぎょっ・・・

桃香は、とんでもないことをお願いしたのでは・・・と後悔した。

伊吹は諦めたように上着を脱ぎ、ワイシャツのボタンを外す・・・

中間までボタンを外すと、右肩を晒した

「これがドスで着られた傷で・・これが・・・被弾した時の・・・」

伊吹が、そう説明する間、桃香は立ち上がり、伊吹の横に歩み寄る。

「おおきに・・・圭吾を庇ってくれて・・・これからは、うちが、命がけで、圭吾を守るから・・・」

傷に手をあてて、桃香は涙を流す・・・

(嬢さん・・・)

 

 

 

突如・・・・

しんみりした場面を一転させる事件がおこった

 

「おい!何してる!」

げっ・・・・・・

留美子も、桃香も、伊吹も、凍りついた。

「8代目・・・・」

留美子はフォローしようと焦るが、今、この場面は誤解されるに充分ではないか

「春日が、伊吹を呼び出したと聞いて、心配して来てみたら・・・・いくら春日でも、コレは許せんなあ・・・

女二人で伊吹をひん剥いて何しとんねん」

「8代目〜〜〜」

半泣きな留美子・・・・・

 

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