繋がり 5

 

夕食後、後片付けをする聡子の代わりに、寝室で優希をみている龍之介は

ソファーで優希を抱きつつ、うとうとしていた

「龍之介さん・・・」

入ってきた聡子の声で起きる。

「ああ・・」

「終わりましたから、もう休んでください。」

と、優希を抱き上げる。

「なあ、何で、優希は伊吹にあんなに懐くんかなあ・・」

昼間、眠った優希を伊吹がベッドに下ろそうとすると、とたんに泣き出すのだ。

龍之介が抱こうとしても泣く・・・・

「龍之介さんの子だからでしょう?」

笑いながら聡子は言う・・・

「というか・・・伊吹さんは、もともとお年寄りと、子供に懐かれる体質なんじゃあないですか?

花園医院でもお年寄り受けよかったそうですよ」

「オバはんみたいなとこ、あるからなあ・・あいつ」

龍之介の言葉に笑いつつ、聡子はベビーベッドに優希を寝かす。

「お前も、育児に組の事・・・大変やろ?」

「手間かかるのは今だけ。そのうち、ひとり立ちして、親なんか見向きもせんでしょう?

だから大事にしないと。今を」

そうか・・・

龍之介は笑う・・・・

「優希に嫁が来たら、お前も楽できるのになあ」

「何時の事ですか・・・」

笑いあう二人・・・

鬼頭にいる時も、もう龍之介は違和感が無い。

優希が、聡子と自分をつないでいると思える。家族とは、そんなものなのかも知れない。

伊吹の方も近くに紀子がいる為、なんとなく安心できる。

少なくとも、伊吹を一人で放置している という罪悪感は無い。

 

「龍之介さん、今年は優希で忙しくて、バースディケーキを焼くのは無理だわ。」

そう言われて、誕生日が近い事を思い出す龍之介・・・

「ああ・・・気にするな。」

「その代わり、休暇あげます。義父さんにお願いしたの。」

毎年、龍之介の誕生日には気を使っている聡子・・・

龍之介は、少しの痛みと、多くの感謝でそれを受け取る。

「お前の誕生日には、優希を伊吹に任せて、二人でどっか行くか?」

「龍之介さん!」

苦笑しつつ聡子は鏡台の前に座ると、結い上げた髪を下ろす。

後ろでその様子を見ていると、龍之介は懐かしい気がする。

あまり覚えていないが、母のそんな後ろ姿を見つめつつ、眠りについた思い出が蘇る・・・

伸びをしてベッドに腰掛ける

無性に伊吹に会いたくなる時もあるが、最近は、親子でまったり出来る自分になれたという自負心がある。

 

ずるかろうが、自己中心的だろうが、伊吹は死んでも離さない。

それでも家庭は守る。

 

彼のそんな我侭なスタンスを、妻と情夫(いろ)は許している。

だから、龍之介は妻も情夫(いろ)どちらも、ないがしろに出来ず、頭が上がらない。

 

(つまりは・・・俺は死ぬまでヘタレか・・・)

諦めたようにベッドに横たわる。それでも幸せだと実感しつつ・・・・

 

 

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