繋がり 3

 

「兄さん!」

高坂の大声が鬼頭に響き渡る

「静かにせい!ぼんが起きるやろ!」

抱っこホルダーで、優希を前抱っこしている組長側近の姿があった・・・

「何してはるんですか?」

「ぼんの守りやないか・・」

「姐さんは?」

「美容室、カットしに。」

え?

固まる高坂の後ろから龍之介が現れる・・・

「全く・・・なんで聡子は、優希を伊吹に預けるねん・・・親父は俺やぞ・・・」

と言う、龍之介の手にはミルク入りの哺乳瓶が。

「組長まで!!!」

「組長、ぼんは寝てしまいましたから。ミルクは後で・・」

「寝たか・・・」

夫婦かと錯覚しそうな光景に、高坂は声も出ない。

「おい、高坂、行くぞ。」

南原に呼ばれて我に帰る。

淀川に行く南原の運転手を申し付かっていたのだ。

 

 

「兄さん、藤島の兄さんが完全にオカン化してましたよ」

ハンドルを握りつつ高坂は呟く

「組長育ててる時はあんな感じやったし・・・」

他の者は見慣れた光景らしい

「でも・・・組長と二人、夫婦してましたよ・・・」

「実質上、夫婦やんか・・・」

「違和感無いんですねえ・・・?兄さん?南原の兄さんが鬼頭に来た頃は、組長は中学生やったんでしょう?」

「ああ、兄さんにベタベタの中学生やった。それでも、違和感無いくらい組長は可愛かったんや・・」

血は繋がらなくても、優希は伊吹の息子同然だ。

皆そう思っている。

しかし・・・はたと、高坂は気付く。

「でも、赤子を抱っこする極道って、どうなんですか!」

「お前かて、子供が出来たら抱っこに、おんぶに、オムツ替え・・・何でもするやろ?」

「そういうもんですか?」

「姐さんも、兄さんには気ぃ使こうてはる。ぼんには親が3人おるようなモンや」

花園医院に伊吹を訪ねて、聡子と行った帰りの車で、聡子はこういった・・・

 

ー南原さん、私ね、伊吹さんの変わりに子供産むの。貸し腹とか言うあれ。

だから、優希には伊吹さんが必要なの。見つかってよかった・・・−

 

「そやから、一々ぼんのお守りする兄さんにびっくりせんでええ。」

しかし・・・3人の親に、よってたかって可愛がられる優希の行く末は、やはりヘタレだろうか・・・

と南原はふと思う。

それでも龍之介の子だ。立派に成長するだろう。

 

「それはそうと・・・兄さん、稲垣の兄さんの義弟になるのって、どうですか?」

今まで ”稲垣” ”南原の兄さん”と呼び合っていた二人は

”組長” ”南原” と呼び合う事になる・・・・

「そういう問題とちゃうぞ。淀川の組長になるんやからな。ウチの組長より上やぞ。」

とんだ下克上だ・・・・

「婿養子やから・・・稲垣やのうて、淀川になるしなあ」

世代は交代して行く  そういうものだ。

「ウチのぼんが組、継ぐころは俺ら何してるかなあ・・・」

南原はしみじみ呟く

「まだ現役でしょう?」

「ぎりぎり現役か?引退か?いうとこかな・・・」

淀川組の駐車場に止めた車から降りて、南原は空を見上げる

その時も、鬼頭組は今と変わらない鬼頭組であって欲しいと思いつつ・・・・・

 

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