繋がり 2

 

伊吹が紀子の部屋から帰ると、ダイニングに 風呂上りの姿でカンビールを飲んでいる龍之介の姿があった。

「龍さん!」

「いきなり来てすまんな。」

「電話してくださいよ」

「妹との団欒を邪魔したらあかんやろ・・・」

紀子の処で夕食をとることは知っていた。だからあえて電話で呼び出さなかった。

鬼頭からの様子では、衝動的に来たことは明白である。

「風呂入ってこい。俺は先に寝室に行ってるぞ」

「はい」

 

パジャマを持って浴室に向かう伊吹。

おかしい・・・

いつもは風呂上りに紅茶を飲む龍之介が、ビールを飲んでいる・・・

様子もいつもと違う・・・・

(妹のとこに行ったから怒ってるとか?まさか・・・それはあまりに心狭すぎやな)

あれこれ思いつつシャワーを済ませ、浴室を出る。

 

「龍さん・・」

寝室に入ると、ベッドに座り、煙草をふかしている龍之介がいた。

「早いな。カラスの行水か?頭・・・雫落ちてるぞ・・・」

黙ってベッドに腰掛ける伊吹の髪を、龍之介は肩に掛けられたタオルで拭き始める。

最近、めっきりオカンである。

「そんなに我慢してたんか?言うたら俺、いつでも来るのに」

何のことですか・・・???

「でも、濡れ髪で、したら・・・明日、ハネまくってエライ事になるぞ」

わざとテンションを上げているのが判る・・・・

「龍さん・・・」

沈黙が流れる・・・・

「何かあったんですか?」

「いや」

煙草の火を消し、ベッドに横たわる龍之介

「なんもない。ただ、寂しいだけや」

タオルを椅子の背もたれに掛け、湿った髪のまま、伊吹は床に入る。

「チョット・・・湿ってるな・・・」

伊吹の髪を撫でつつ、龍之介は呟く。

「龍さん」

ふうっ・・・

ため息とともに観念する。

「ただの嫉妬や。妹にお前、取られた気がしてな。紀子さんとは血が繋がってるけど、俺とは

血ぃ繋がってないやないか・・」

「私らが血ぃ繋がってたら、近親相姦や無いですか!」

げえぇっ・・・・一瞬、龍之介の渋い顔が現れた。

「それは・・・萎えるな」

「それが萌えやったら、ヘンタイです。」

ああ・・・・

血が繋がってなくてよかった・・・ほっとする。

「ていうか・・・妹にお前取られて、俺がこんなに嫉妬するのに、俺なんか嫁までおるし・・・」

結納前に一度、ぶつかり合った過去を思い出す。

「お前はどれだけ辛いか・・・そやのに、あの時、俺は妬いてもくれへんて、ブツブツ文句ばっかり言うてたし・・」

「私が揺らいだら、龍さんはあの時、結婚できませんでしたよ。ぼんを結婚させて、8代目継がせるのが

私の役目でしたし」

「それでも、結婚なんかするな!とか言って欲しかったな。あん時ほど、お前のポーカーフェイスが

憎そかった事なかった」

苦笑する伊吹・・・

「それだけ、お前に我慢させて、重荷を負わせてきたんやなあと思うと、いてもたってもいられへんかった・・・」

昔と変わらない、愛しい龍之介がそこにいる

「それで、慰めに来てくれたんですか?」

「朝まで慰めてやるから喜べ。」

はあ?

「いや、もう遅いから・・・寝ましょう」

「遠慮するな」

「してません・・・・・」

「どうして、正直になれんのかなあ・・・お前は」

ああ・・・思い当たる伊吹

「そうですね、お召しのあるうちが、華やという事を忘れてました」

「正直に言え!俺がごつうなったから嫌なんやろ?やっぱり、19歳の、可愛い頃がよかったとか思ってるやろ?」

そういう駄々をこねる所は少しも変わっていない。

「今も充分可愛いですよ〜私のほうこそ、そのうち老けて、嫌われるかヒヤヒヤしてるんですから」

歳の差は縮まらないが、だんだん、二人の精神年齢は縮まって行く気がする・・・

「いつまでも龍さんは初々しいから、ずっと新婚気分ですよ」

しかし、やはり年の功。伊吹に黙らされてしまう。

慣れ親しんでも肌を合わせると、やはりドキドキする。永遠の初恋・・・そんな少女のような自分に気付く龍之介。

「何か、俺が、お前にしてやれる事はないんかな・・」

仰向けの伊吹の胸に覆いかぶさり顔を埋める

「こうして、来てくださるだけで充分です」

「ずっとずっと、お前のこと、待たせてばっかりやな」

「でも、来てくれるから」

そうか・・・龍之介は目を閉じる

そっと、龍之介の背に腕をまわす。昔に比べて遥かに広い背中を実感する伊吹。

大きくなった・・・鬼頭を背負えるほど成長した龍之介。

彼が愛した微少年は、無限大に伸びて行く

「ずっと、こうして私の腕の中に龍さんを抱いていられたら、最高に幸せでしょうねえ」

「俺は、俺の中にお前がずっといてくれたら、最高に幸せやけど・・・」

「・・・・・」

「何とか言えよ!収拾つかんやろ!」

頭を起こして龍之介が叫ぶ

「オチやなかったんですか・・・・・」

「この天然!誘っても ノってこんし!」

「龍さん判りにくいんですよ・・・」

「判った。これからは誘わんと襲う!」

そうい言いつつ、伊吹のパジャマを脱がし始める龍之介・・・

襲い受けに転向か・・・・・・・

 

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