宴の後 1

 

 夏の間、花園医院の改築工事に、結婚式の準備にと島津、伊吹、紀子兄妹は忙しく

拓海は、仮の施設で通院患者のフォローをして過ごしていた。

一方、淀川も、稲垣と梅乃の婚姻準備に追われ、南原も かり出される中、

龍之介は、岩崎と二人で 伊吹、南原の空席を埋めるのに忙しかった。

 

「兄さんら、二人抜けたらきついですわ・・・」

鬼頭の事務室のコンピューターの前で、事務処理中の岩崎が悲鳴を上げる。

「しゃあないな、南原も淀川の組長の義弟になる立場やし・・・知らん振りできんしな。」

梅乃の結婚式と同時に、南原と桃香の婚約披露宴も行うらしい。

「若い美人の嫁さん貰うなんて、羨ましいですね・・」

「つーか・・・若すぎやろ」

高校生とは・・・・

「南原の兄さん、マジで藤島の兄さんと似てますよね」

「はあ?」

龍之介は帳簿から顔を上げる

「どっちも相手は18,19・・・10以上年下やし・・」

(それ・・・俺の事か?)

氷の刃に見つめられて岩崎は、はっとする。

(失言した・・・・・)

だから・・・どっちにしても、伊吹と南原は結ばれないのだ。N局とN局、+と+は引き合わない・・・・

だが、似ているから魅かれはする・・・

「どっちにしろ・・・あの事件からは、総てが順調に事が進みますね」

苦笑しつつ、岩崎は話題を変える。

 

「組長、お茶入りました」

高坂が紅茶と洋菓子を運んできた。

岩崎はテーブルに移動して、カップを受け取る。

「このチーズケーキは紀子さんの差し入れですよ」

と高坂は龍之介に差し出す

「来てたんか」

「昨日寄って行かはりました」

紀子はすでに、鬼頭になじんでしまっている。

「組長・・・藤島の兄さん、いはらへんと寂しいですね・・・」

相変わらず高坂は伊吹の追っかけをしている。

ふぅ〜〜〜

ため息の龍之介。。

仕方ない・・・自分には、聡子も優希もいるように、伊吹には紀子や拓海という家族がいるのだ。

それをとやかく言う事はできない事も知っている。

「この秋は、淀川組と紀子さんとこと・・・結婚式続きますね」

岩崎はそう言いつつ、チーズケーキを一口

「それで、春には南原の兄さんが結婚」

高坂はそう呟きつつ紅茶を飲む 皆、結婚して行くのがなんとなく寂しい・・・

 

「明日は一日、組空けるから、そのつもりで」

龍之介の言葉に岩崎は膝を叩いた

「ああ、淀川でしたねえ・・・明日」

「え?」

高坂は意味が判らない

「淀川で大嬢さんの婚約披露宴があるんや」

ああ・・・

そんな事いってたなあ・・・と高坂は頷く。

「会食式で夕方から、親父と俺と伊吹、南原は出席するから、高坂は運転手で来い」

「はい」

「お前は運転手やから飲むなよ」

岩崎が釘を刺す

 ああ・・・高坂は頷く。二次会は宴会になるはず・・・

「酒の席は好きやないなあ・・・」

龍之介はため息をつく

「その割には組長ザルですよね・・・」

体質的に酒に強いというだけで、龍之介は甘党だった・・・

「藤島の兄さん・・・最近、めっきり酒、弱なりましたけど大丈夫ですか?」

岩崎が心配して訊いてくる。

伊吹は元は下戸だ。訓練と精神力で乗り越えては来たが・・・

が・・・記憶喪失の間、アルコールと程遠い生活をしていたため、鍛えた体質が元に戻ってしまっていた。

龍之介はため息をつく・・・・鬼頭のカリスマが下戸とは、口が裂けても言えない・・・

(あいつの分まで、飲まなあかんかなあ・・・)

伊吹は酔っても表に表れないのが幸いだが・・・周りは、そうとは知らずに酒を勧めるのが弱点だ。

(頭痛いなあ。連れて行かんわけにはいかんし・・)

「やくざの宴会なんて、浸かるほど飲みますからねえ」

岩崎の言葉に沈没する龍之介・・・

「あさっては、伊吹は休暇やなあ」

岩崎と高坂は頷く

「仕方ないですね」

 覚悟して、敵陣にのり込まないと大変な事になりそうだった。

 

 

TOP          NEXT 

 

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system