旅の途中 1

 

朝、身支度を済ませた紀子が、寝室に入ってくる。

「拓海さん〜起きて・・・なんだ、もう起きたの?」

身支度を終えた拓海が振り返る。

「今すんだとこ。おはよう紀ちゃん早いね」

「女は化粧とかあるからね。残念だなあ。昨日早々に寝ちゃったから、お詫びにちゅーして起こしてあげようかと

思ったのに」

ははは・・・

「気使わなくていいよ〜結婚したら、毎日起こしてください」

「よく眠れた?」

「うん・・・不思議によく眠れた」

「じゃあ、ロビーに行こう。島津さん来てるかもよ」

朝8時にロビーに集合して、島津宅で朝食の予定だった。

その後、拓海、紀子コンビは結婚式の式場を島津と検討し、龍之介、伊吹コンビは鬼頭商事の視察に向かう。

 

ロビーにはすでに龍之介、伊吹、島津が来ていた。

「お待たせしました」

「よう眠れましたか?」

拓海カップルを、おちょくりにかかろうとする島津・・・・

「もう、ぐっすり・・・」

にこやかな笑顔で拓海は答える。

「それは残念ですな」

「先は長いですから・・・」

龍之介はそんな拓海にあきれる。

「昨日はあれほど部屋割りぐずっといて・・・今朝の、その余裕はなんですか?」

「ぐずったんか?」

「兄さん!無駄話はおしまいにして、行きませんか?」

伊吹に促されて、仕方なく島津は玄関に向かう

「藤島はホンマに固いヤツやな。冗談も通じんし・・・」

「低俗は冗談は辞めてください」

ホテルの前に止めてある島津の車に乗り込み、一同は島津宅へ・・・・

 

ダイニングで由布子夫人のもてなしで朝食を終え、リビングでゆったりとコーヒータイムとなる・・・

「信さん顔広いから、式場探しも何とかなるやろ?」

島津に任せきりたい龍之介・・・

「ああ、こういうことは任せとき。お兄さんら、大阪に来はるんやったら、宿も用意せなあかんな」

「新居に泊まってもらうのは・・・」

拓海の意見に、島津は腕組みをする。

「夫婦で来はるからな・・・2組となると、ちと不便かな。ええ、ホテルの部屋とるわ。」

「心配せんでええですよ。鬼頭でそれくらい、なんとでもしますから」

戸惑う拓海の背中を龍之介がドンと叩く。

「はあ・・・・」

「やっぱり、秋頃やなあ。今からとなると」

「夏真っ盛りはちょっとやな・・・」

「兄さん、結婚指輪は私が負担しますから・・・」

「そうか・・・で・・やっぱあれか?藤島が父親の代わりに新婦の手を引いて入場か?」

「え!!!それは・・・」

「新郎新婦同時入場でええやろ・・・信さん」

「ぼん、それ おもろないで」

「おもろなくてええんですけど・・・兄さん!」

 

当の二人を差し置いて話が弾んでしまっていた・・・・

取り残された拓海と紀子は静かにコーヒーを飲んでいる・・・

しかし・・

紀子はこれが嬉しい

両親が不在のため、二人だけで結婚式の準備をしなければならないのかと思っていた紀子には、

結婚式の世話をやいてくれる人たちがいてくれる事だけでありがたい。

 

「先生んとこ親族何人くらい来ます?」

「母方の親戚は5,6人くらいですね。父方は3,4人・・」

島津がうなる・・・

「式場の割りに人が少ないぞ・・・」

「家の若いもん貸しますよ」

龍之介が口をはさむ

「え・・・やくざで式場うめるんか?」

島津は嫌な顔をする。自分も元やくざの癖に・・・・

「商店街の人たちと、よく来る患者さんたちの家族が皆、来てくれるって行ってましたよ」

紀子は思い出したように言う

「医者の結婚式に、日ごろお世話になっている患者さんたちが来る・・・なかなか感動的やなあ・・・」

「大学病院のほうも、教授と親しい看護婦さんたちは来ますしね」

拓海の言葉に島津は頷く

「頭数はよさそうやな。」

 

そこへ由布子夫人が井上を連れてきた。

「井上さんこられましたよ」

「信さん、俺ら鬼頭商事のほうに行って来るわ」

龍之介と伊吹は立ち上がる。

「気ぃ付けてな・・」

由布子夫人に見送られつつ井上と龍之介、伊吹は島津邸を後にした。 

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