復活 3

 

「それと、言わなあかん事があるんやけど」

しばらくして、龍之介は顔を上げる

「もし、生き別れの妹が現れたらどうする?」

突然の質問に伊吹は困る。しかし、夢のせいか逢いたい気持ちが溢れてきていた。

「鈴木紀子という、お前の妹らしき女性が現れた。」

「ホンマですか?」

「昔の、お前が15歳の頃の写真見せて、確認してもらったら ”生き別れの兄”やというた。間違いない」

伊吹はしかし、やくざの自分を思えば、名乗りを上げないほうがいいような気がしていた。

「彼女は、もう知ってる。お前が兄と。すまん、俺がバラした」

伊吹は龍之介を見つめる

「彼女、記憶なくしてたお前に惚れててな、結婚してくれとか言うたらしい。まさか結婚はせんまでも、

後で判って傷つくと思て・・・話した」

伊吹は その間の龍之介の気苦労を思うといたたまれなかった。

「で、彼女はお前がやくざでも受け入れた。名乗りは、お前が記憶取り戻すまであげへんと

俺と約束してな。会うたってくれ。婚約もしてる、お前の記憶が戻ったら結婚する事になってるらしい。」

「結婚相手は・・・私の事・・・」

「相手は、お前を拾うて助けたあの医者や。もちろん、やくざちゅうのも知ってるし、

気にするような人とちゃうし。」

「判りました、会います」

龍之介はその言葉に、ふと気付いて大笑いする。

「すまん。もう会うとったわ・・・お前。あの医者と一緒におった看護婦、あの人や。」

よくは思い出せないが、そういえば看護婦がいた。

会えばすぐわかると思っていたのに、判らなかったことがショックだった。

 

「一応 必要な話は一通りしたと思うけど・・・妹とか婚約者とかは おいおい、

お前の目で、人柄みたらええ。向こうは、お前が鬼頭に引き取られるまで一緒におったから、

お前の事は よう知ってるけど・・・ちゅうても、天然伊吹のお前をな。」

行方不明に記憶喪失・・・その代償が妹との再会

人生は上手く出来ている

 

「あ、生まれた子供は男でな、名前は優希。もう決めてあんねん」

思い出したように言う龍之介に、伊吹は改めてお祝いの言葉を述べる

「おめでとうございます。」

「お前が教育せいよ。」

「え?」

「当たりまえやろ?へタレな俺を組長にした男や、お前ならできる。」

ふ〜

ため息混じりに伊吹は呟く

「まあ・・・龍さんの子は私の子も同然ですし・・・」

オカン決定である・・・・

「龍さんに似てたら可愛いでしょうね〜」

出会った頃の5歳の龍之介が目に浮かぶ・・・・

「おい!手ぇ出すなよ」

「私はロリコンとちゃいます!何度言うたらわかるんですか!」

だからショタだといくら言えば判る!!!

「それに・・・それは、精神的近親相姦になるでしょうが!」

ナンやそれ・・・・・

龍之介はあきれる。

「でも。正直、俺に似んとお前に似たらええと思うんや・・・」

いったい誰の子なんですか・・・・・・・・

言葉も無い伊吹。

 

「明日は病院で聡子に付き添って過ごそう。お前も。」

「でも、女手要りますね。」

「そやな、実家の母親いうても、忙しい吉原の姐さんが付きっきり看護は難しい。看護人雇うか。」

ふぁぁ・・・・

龍之介の口からあくびが出る

「にしても、今日はハードやったな・・・俺。お前も聡子も大事のうてよかったけどな」

やっと、肩の荷を降ろした龍之介・・・・

 

「だいぶ、変わらはりましたね。成長したと言うか・・・」

「お前の苦労が判った」

ははははは・・・・伊吹は大笑いする

「それはありがたい事ですね。で・・・ずっと気になってたんですが・・・」

伊吹は龍之介に詰め寄る

「襲うかもしれんと言うてた私は・・・実際、襲ったんですか?」

ああ・・・・

ため息の龍之介。

「それが・・・いざとなるとお前、”男同士でどうやるんですか?”とか訊いてくるんや。

判るか?俺の苦労が!」

え・・・・・・

「それで・・・私らは、今まで、ずっと・・・」

「ああ、心配すんな、そう言いながらお前、身体で覚えてた。問題ない」

記憶が無いんですが・・・・・

伊吹は内心半泣きだった。

「記憶失くしたくらいで、俺らの仲はどうにもならん。不死身や!」

はっはっはっはっ・・・・・

強気な龍之介の横で一人落ち込む伊吹・・・記憶が無い・・・・

 

しばらくすると龍之介の寝息が聞こえてきた。

本当に疲れているらしい。

張り詰めていた緊張も解け、安らかに眠る龍之介の髪をなでながら、伊吹は微笑む。

(お疲れ様・・・・)

 

父親の顔を少し覗かせて龍之介は深い眠りに落ちていた。

 

 

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