復活 1

 

「組長、入院手続き終わりました。先代が帰る言うてはりますが・・・」

南原が採血室に入ってきた。

「伊吹も覚めたから、帰ろうか」

龍之介の言葉に頷いて、伊吹はベッドから降りる

「兄さん大丈夫ですか?」

「ああ、大事無い」

あれ?

様子が違う伊吹に、南原は固まる。

「記憶戻ったぞ」

龍之介の言葉に顔がほころぶ南原

「よかったですね。」

しかし、伊吹は何の事か判らずにいる。

「先生、またゆっくりお伺いします。今日はありがとうございました。紀子さんもありがとうございました」

礼をして、龍之介は、伊吹と南原を連れて部屋を出る。

 

「ほんとに、お兄ちゃん全然違う・・・」

紀子はひきつっている

天真爛漫だった伊吹が、突然ハードボイルドになってしまった・・・・

「もう、名乗り上げたくなくなった?」

拓海の言葉に紀子は首をふる

「何か・・・ちょーカッコいい!!!クールで、”男”ですよね〜〜〜」

え・・・・

拓海は不満げだ

「そうだね・・・なよっちい僕なんかとは比べもんにならないよね・・・・」

「やだ!妬いてるんですか?可愛い〜〜」

恋をするとテンションが上がるのか・・・紀子は最近、ハイテンションであった・・・・

 

 

「オヤジ・・・」

聡子の病室にはいると、哲三と岩崎、高坂が中にいた。

「伊吹、記憶戻ったわ」

「よかったなあ!」

哲三も嬉しそうだ

「先代、よう覚えてませんが、ご迷惑おかけしました」

と頭を下げる伊吹を見て、岩崎も高坂も鬼頭のカリスマを実感する

「先代、姐さんは?」

病室に聡子がいないので、伊吹が不審げに聞いた。

「峠は越した と医者が言うてなあ・・・明日から、病室に入ることになった。一安心や、

入院手続きも済ましたし、今日は一旦 鬼頭に帰ろう。」

「よかったですね・・・」

ほっとする伊吹

「兄さんが てきぱきと行動してくれはったから好かったものの、私と高坂では、

あの時どうなってたか・・・」

南原は、まだあの時の事を思うとヒヤヒヤする。

「まあ。そういう事やから、岩崎の車で、ワシと南原は鬼頭に帰る。高坂は龍之介と

伊吹を伊吹のマンションに送って行け」

「オヤジ?」

「今までのいきさつ、説明せなあかんやろ?明日からは、聡子の方に集中して気を使わせるから、

今日中にお前らの事は処理せい」

確かに・・・話すことは山ほどある。

「すまんな」

哲三がいてくれてありがたいと龍之介は思う・・・

 

 

 

夕食と沐浴を済ませて、寝室で会議を始める龍之介・・・・

「大事な話があるて・・・ここでするんですか?」

しかも・・・腕枕状態だった・・・

「ダイニングで椅子に座ってしても、寝室で寝転んでしても話には変わりない」

「緊張感が抜けますが・・・」

きっー

龍之介は伊吹を睨みつける

「お前のお蔭で、俺の寿命は20年縮まったんやぞ!どんだけお前のせいで泣いたか

判っとんのか?緊張抜いて何が悪い!」

ほっとしたとたんに緊張感が抜けて、我侭になった龍之介を伊吹は笑顔であやした

「はいはい。ご迷惑おかけしました。龍さんを泣かしてしもうたんなら、償なわなあきませんね」

「と言う事で、はじめるぞ」

そう言いつつ、龍之介は伊吹のパジャマのボタンを外し始めた・・・・

「!龍さん!」

「勘違いするな!見てみい、ここに新しい傷跡があるやろ?」

伊吹は自らの肩を見る、確かに見慣れない傷が増えていた。

「お前は、吉原の組長の見舞いに行った帰りに、淀川の近江の雇ったチンピラに襲われて被弾した」

ああ・・・・伊吹は思い出す

(淀川は内部紛争の最中だった・・・先代を岩崎に任せて、俺は1人でその場を離れて・・・土手で・・・)

 「土手を転げ落ちて、川にはまって、流されて行方不明になった。そのお前を、

拾って治療したんが今日、採血室におった眼鏡の頼りなさそうなあの医者。」

「そんな恩人に、”どなたですか?” なんて言うたんですね。私は。」

罪悪感がひしひしと来る・・・

「しゃあないやろ。で、記憶失くしたお前は、あの医者のボロ病院、手伝いながら暮らしてた。

それを南原が見つけて、オヤジが鬼頭に引きとったんや。記憶の無いまま。」

簡単に話す龍之介だが、その奥に様々な葛藤と苦悩が見える・・・・・

 「それは・・ご迷惑をおかけしました」

「しばらくお前の面倒見るために、俺がここでお前と2人暮らししたんやけどな、

まあ・・・色々あったわ・・・」

 

遠い昔のように龍之介は思いを馳せる・・・・

 TOP         NEXT 

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system