闘争 2

 

 

病院の霊安室で、室戸と桃香、南原が淀川組組長の棺の前で座っていた。

「今・・・この状態で、葬儀も襲名式も無理です・・・・」

室戸が途方に暮れたように言う。

ー南原を婿養子にして組長に。ただし、桃香が高校卒業して結婚するまでは、室戸が後見人として代理組長に立つー

これが遺言・・・・・

そして、極秘の追伸が、室戸個人に直接手渡されていた・・・・

ー万が一南原が組長を拒否した時は鬼頭に合併の事・・・ー

(組長はご存知やったんや。南原が嬢さん守る為についた嘘を・・・)

しかし、最後まで南原に、桃香と組を託す事を望んでいたことは確かだ。

(しかし南原はたとえ嬢さんと一緒になったとしても、組長は継がんやろう・・・あいつは鬼頭捨てられへん)

鬼頭に合併・・・これが漏れたら、鬼頭は狙われる・・・・

「告別式も葬儀も見合わせる。父さんは組が荒れることは望まんやろう」

桃香は南原に支えられて、やっとのことで体制を整えている・・・・・

「では・・・室戸の兄さんが、それまで臨時組長で・・・」

南原はため息をつく

どちらにしても、室戸も、桃香も、南原も、龍之介も、狙われている事にはかわりない。

一人一人・・・徐々に消されていくのは目に見えている

「兄さん、一気に火種消しませんか?」

決意したように南原は顔を上げる

「え?」

「葬儀と婚約式と継承式しましょう。」

「お前・・・自分を標的にする気か・・・」

室戸が南原を見詰める。

「鬼頭に火の粉、被らせるわけにはいきません。嬢さん然り。私と兄さんが犠牲になればええ事です」

「もちろん、ワシはかまわん。それに・・・お前の命も保障する。ワシの持ってる力総て使って守る・・・

しかし、それでええんか?」

「室戸!圭吾!何言うんや!うちが許さん。そんな事。」

桃香が叫ぶ

「このままやと黒幕は出てきません。トカゲの尻尾切りですわ。そやから」

南原がつぶやく・・・

「南原、どっちにしても、鬼頭には・・・迷惑かかるかもなあ・・」

室戸の言葉に唇を噛む南原・・・・・

「圭吾・・・」

青ざめる桃香・・・

南原は笑う・・・・・

「うまくいきます・・・総て」

桃香の瞳から涙が流れた。

 

 

 

「まあ・・・南原がそういう賭けに出たということです・・・・」

哲三の部屋に伊吹と龍之介を呼んで、自分が聞いてきた霊安室での会話を報告していた宮川が話を終える。

「兄さん、病院に行ってきはったんですか」

伊吹があきれて訊いた

朝から宮沢が一人で外出していたのは知っていたが・・・・

「見舞いに来た振りして、霊安室の近くをうろついて得た情報や」

 

「伊吹、行くなよ・・・」

龍之介が不意に口を開いた

「お前やったら、南原心配して、そこに顔出すやろ」

「まさか・・・」

「組長、藤島はそこまでしませんよ。組長も狙われてるのに・・・・」

宮沢はフォローする

「内輪でするやろうなあ・・・」

哲三もかなり心配している・・・

「そうでしょう・・・たぶん・・・」

 宮沢は頷く

「まさかとは思うが、組内も用心して見ててくれ」

哲三の言葉に宮沢は笑う

「聞いててくれ・・・の間違いですよ」

しかし・・・伊吹は笑えない・・・・

南原は一人で、これを切り抜けるしかない。それよりも心配なのは龍之介・・・・・

表には出さないが、かなり張り詰めている。

哲三は伊吹を見詰める・・・・・

「伊吹・・・お前は龍之介から離れるな。組捨てても、龍之介を守るんやろ?お前は。」

「はい」

「頼んだぞ」

 

 

次の朝  室戸から、葬儀は内輪で行うという連絡が、正式に哲三宛に届いた・・・・

 

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