内部紛争 5

 

 いつも変わりない鬼頭組の朝。

しかし、その日常の中に嵐の予感を孕んでいた・・・

岩崎は組長代理で外回りが多くなり、龍之介は隠遁生活を余儀なくされていた。

 

岩崎が外回りで忙しいため、おろそかになった事務処理を、事務所でしている伊吹に宮沢は静かに歩み寄る

「気になるとは思うけど藤島、南原とは接触するな。お前が一番に守らなあかんのは組長や」

そういいつつ、持ち運び用ホワイトボードを差し出す宮沢・・・

「それは・・・判ってますが、これなんですか・・・!!!まさか・・・」

「余計なお世話かと思ったけど・・・なかなかのグッドアイデアやから・・・プレゼント。」

(・・・・・・・・・)

「心置きなく筆談してくれ・・・」

「完全に・・・キャラクター変わってますよ」

昔の 何を考えているのか判らず、無表情で、無口なサイボーグ宮沢は跡形もなく消え去った・・・

人間味が出てきたというか・・・・・

鬼頭組にいるとこうなるのか・・・・・

「俺は今の自分、気に入ってるけど。お前はどうや?」

「はあ・・・」

「藤島のおかげで人間らしゅうなれたわ・・・」

(いや、人間らしいというより・・・お笑い芸人風)

「兄さんが幸せなら・・・何よりです・・・」

「当分のあいだ俺、24時間体制で壁耳対策してるから・・・気ぃ付けろ・・・」

(・・・・・・・)

無言の伊吹に微笑みかける宮沢・・・

「あ、なんか・・・俺、嫌われてる?」

「いえ、たいした技をお持ちで・・・・」

「あと・・・千里眼とか、見つけて雇ったら面白いなあ・・・」

(面白ないです・・・・・・)

しかし・・・・

伊吹は知っている・・・・・

宮沢がやっと、自分の特異体質を受け入れるようになれたということ・・・・

自分の能力を忌み嫌い、押し隠してきた彼が、伊吹に吉本並の突込みを入れられるようになったこの進歩・・・・

今の宮沢はとても自然体に見える・・・・・

ふっ・・・・・

笑いがこみ上げる・・・・・

「私も・・・今の兄さん好きですよ」

「愛の告白は禁止やぞ。組長に睨まれる」

はははははは・・・・・

大笑いの伊吹・・・・・

(何処からこんな余裕が出てくるんや)

こんな時に・・・・・いや、こんな時だからこそ・・・・

「鬼頭は団結してるから居心地ええわ・・・」

淀川の有様を見てきた宮川の実感・・・・・

「近江がアヤシイ・・・けど・・裏に黒幕がおる。田代か・・・志賀か・・」

「室戸の兄さんはそれ・・・」

「知ってはる。この3人はマークしてはるが・・・いくら万全の対策練っても淀川の組長の病院、爆破されたら終わりや・・・・そこまでしてきよったら、防ぎよう無いぞ・・・・」

 

一般市民を巻き込む事はタブーであるが・・・・

そんな決まりを守るくらいなら、自分の組の組長を襲ったりはしないだろう・・・

淀川の組長の死をきっかけに淀川、鬼頭ともに修羅場と化すのは目に見えている・・・・・

 

「淀川の組長は・・・死なしたらあかん・・・・」

小さくつぶやく宮沢の苦しげな声に伊吹はうなづく・・・・

 

 

 

 

仁義なき闘争の幕開けが迫っていた。

 

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