内部紛争 3

 

 正月が開け、学校が始まった桃香の送り迎えが日課になった南原

桃香の友達が、毎日 南原を見に群がってくる・・・・

「桃香〜いいなあ・・・イケメンのカレシ見つけたじゃん」

「ボディーガードしてくれてるんでしょ?うらやましい〜」

「やくざにもあんなカッコいい人いるんだ・・・」

後ろからついて来る友達のかしましさにうんざりする桃香

「圭吾はうちのもんやから盗るなよ!」

うんうん・・・・・

桃香の怖さを知っている彼女らは、大きく頷く・・・・

しかし・・・・・

正義の戦士のように勇ましい桃香を、お姫様のように守る白馬の騎士がいるというのは 注目の的以外の何者でもない。

クラスの男子も女扱いしない男勝りをお姫様扱いするその男を、一目見たいのは人情というもの・・・

 

「桃香」

校門の前で車を停めて待っている南原・・・・

「圭吾〜」

駆け寄る桃香の後姿に、女学生達はため息をつく・・・・・

「いいなあ、大人の魅力だよねえ」

 

当の2人はそれどころではないのだが・・・・・・・

 

 

「圭吾、父さんまであんな感じで・・・迷惑かけるなあ・・・」

息抜きにカフェに寄り、お茶する2人・・・・・

「いいえ、それより、正月の間、休む暇なかったでしょう?」

「うん・・・」

「内部に危険分子が潜んでる。ちゅうのが室戸の兄さんの見解です」

桃香の表情が暗くなる・・・・・

「組のもん疑いとうはないなあ・・・」

「組長の退院はわざと遅らせてます」

「え?」

「組に帰ったら一番に組長狙われますから・・・・」

病院は室戸が隠密にガードをさせている・・・

「桃香も私も当然、狙われてます。私から離れんようにしてください」

桃香は防弾着の着用はしている・・・が拳銃の所持は室戸も南原も、よしとはしなかった

未成年と言う事もあるが・・・・使い方を誤れば暴発の恐れもあるためだ・・・

「一見、変わりなく見えますが、敵は着実に事を進めてます。室戸の兄さんは危険を冒しても ここで確実に危険分子を捕まえるつもりです」

「圭吾・・・巻き込んですまん・・・」

ふっ・・・

南原は笑う

「自分も危ないのに、私の心配ですか・・・・」

「お前に何かあったら・・・・」

ぽん・・・・

南原の手が桃香の頭をたたく

「私はこう見えてもやくざです。銃弾かいくぐってきてるんですよ・・・」

 それでも・・・・・・失うのが怖い・・・と桃香は思う

「怖いもの無しの桃香が、なに怖がってるんですか」

「お前を失う事が一番怖い・・・・」

その気持ちは痛いほどわかる・・・・

南原は昔、自分を庇った伊吹が、肩をドスで斬りつけられた時の恐怖を思い出す・・・・

見る見る血に染まる伊吹の肩を見て、気を失いそうになった

自分が斬りつけられたよりも何倍もの強い痛みを感じた・・・・・

そして・・・・・

 失うかもしれない喪失感・・・・・

 

伊吹の肩のその傷はおそらく今も残っているだろう・・・・・

龍之介はその傷を夜毎、見続けるのだろう・・・・・・・

 

しかし・・・・

どのような形の愛情であれ、伊吹の南原への愛の証が、伊吹の肩に刻まれている、というその事だけで、彼は満足できた

 

「圭吾・・・」

桃香の声で南原は我に帰る

「何を考えてた?」

 

ああ・・・・

苦笑する南原

「昔の事を・・・・」

 

今はただ・・・・伊吹が龍之介と添い遂げる事だけを願う・・・・

そして・・・・

自分は永遠に藤島伊吹の弟分で残ることを・・・・・・

 

 

「行きましょうか・・・」

南原は立ち上がる・・・・・

一瞬、手の届かない遠い人のように見えた南原の後ろを追いかけつつ、桃香は不安になって南原のひじを掴む

「圭吾・・・・」

迷子の子猫のような桃香に振り返った南原は微笑む・・・・

「はい」

「もっと、ゆっくり歩いてくれ・・・」

「すみません」

腕を組んで、歩いて行く桃香と南原

 

自分を頼って寄り添う小さな腕・・・・・

その温かさに南原は伊吹を思う

(こうやって、兄さんも組長の腕に温められてきたんかなあ・・・)

守るものがあるという、その確かさだけで勇気付けられた・・・・

 

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