内部紛争 2 

 

 大忙しの年末年始を無事に越え、鬼頭組も落ち着いた・・・・

「岩崎・・・お疲れさん。帰って休め。明日は休暇やる」

哲三は、大広間の片付けの指揮をしている岩崎にそう言った。

「皆も聞け!明日一日ゆっくり休め」

伊吹は大声で告げる

歓声とともに、片付けのピッチが上がる。

 

「龍之介・・・・お前が一番しんどかったやろう。襲名後、初めての正月や・・・気も使うし・・・」

哲三は隣の龍之介に微笑みかける

「親父が毎年やって来たこと・・・弱音吐くわけにはいかんからなあ・・」

「そう肩肘張るな。わしも最初はめちゃめちゃしんどかった・・・7日ぐらいから3日間寝込んだわ・・・」

(この親父が?)

言葉をなくす龍之介・・・・・

「だんだん慣れていったらええ。お前も明日は休め。今晩から外泊してええ。留守はわしが守るさかい」

「親父・・・・」

哲三を見上げる龍之介・・・・

「伊吹・・・龍之介連れて行け」

「はい」

 

 

 

 

「やはり・・・親父は親父なんやなあ・・・」

寝室のベッドに腰掛け、龍之介はつぶやく

ルームライトをつけ、灯りを消すと伊吹も、その隣に腰掛ける。

「当たり前のことを・・・もっと、先代に甘えてええんですよ」

「そうか・・・・」

「龍さん・・・髪・・・半乾きやないですか。だから、ドライヤー私がするって言うてるのに・・・」

龍之介の髪をなでつつ、伊吹がオカン化する・・・・・

「時間が・・・もったいない」

伊吹の肩にもたれて龍之介はつぶやく・・・・

「ほんまは・・・・すぐにでも抱きつきたい」

ははははは・・・

伊吹は笑う

「焦ってますね・・・ええですよ、抱きついて」

「お前・・・嫌がるし・・」

「いつ嫌がりました?困った人やなあ・・・」

イタズラっぽく笑うと伊吹は龍之介を押し倒す

「伊吹!」

「こうして欲しかったんですか?」

「おちょくるな・・・」

照れたように顔を背ける龍之介の額に、伊吹は口付ける・・・

「堅いですよ」

「!伊吹!!」

小さく叫んで伊吹を睨みつける・・・

「心が・・・堅く閉ざされてます・・・」

「心か・・・」

安心する龍之介に、伊吹は突っ込む

「心の他に、堅いとこあるんですか・・・・どれ・・・探しましょうか・・・」

くすぐりだす伊吹の下でジタバタする龍之介

「やめんか!」

くすぐられて大笑いの龍之介・・・・・

「そういうことすると、ヤる気がうせる・・・」

「残念ですねえ・・・私なりに迫ってみたんですが」

(どんな迫り方や!!!)

「色気のない奴!」

「オカンですから・・・」

しかし・・・・

完全に龍之介の心は、ほぐれている・・・・・・伊吹式、心の開放術なのだろう・・・

欠点は・・・ヤる気がうせる事・・・・

 

「なあ、期間限定で、今だけマーキングしてもええぞ・・・」

ヤル気をそがれても、すぐ復活する龍之介は、パジャマのボタンを外し胸元を広げる・・・

「そういうシュミないですよ・・・・」

「そう言わんと・・聡子がおらんうちに、思う存分どうや?」

「基本的に、私は相手に傷や痣をつけるような事はしません」

「堅いな・・・・お前、真面目すぎ。それとも・・・完全犯罪派?」

 「失礼な・・・」

今度は、伊吹のパジャマのボタンを外し始める龍之介・・・

「じゃあ・・・・・お前にマーキングするかなあ・・・」

(え!)

あの時の苦労が蘇る伊吹・・・・・

「あの後・・隠すのどれだけ苦労したか・・・やめてください」

結婚式の後、新婚旅行に旅立つ前に、龍之介が伊吹の首の付け根につけた所有印・・・・

「宮沢の兄さんにはバレてるし・・・もう・・・」

泣きが入る伊吹・・・・・・

「そんなに意識し続けたちゅう事は、俺の事一時も忘れへんかった・・・ちゅう事やなあ・・」

心が開いたとたん、誘いモードに入る龍之介・・・・

「そんなモン無くても、龍さんの事、忘れた時なんて一時もありません」

「ずっと、お前の中に俺は・・・いる事ができるんか?」

「私の中で、貴方は一生消えないでしょう・・・だから、いつか消えてしまう痕なんか必要ありません」

優しい微笑みが近づいてくる・・・・・・

眩暈を覚えた瞬間、龍之介の唇はふさがれた

 

「今ので、組の事もみ~んな吹っ飛んだ・・・・」

「頭の痛いことは、一時忘れてください」

組長でなくなる一瞬・・・・安らぎに時はそこにある・・・

 

薄明かりの中、龍之介は伊吹の肩の古傷を探り当て、くちづける

19歳の初めての夜に、この傷を見て誓った・・・・もう二度と伊吹を傷つけるまいと・・・・

誰であっても伊吹を傷つけるものは許さないと・・・・・

 今もう一度誓う・・・・

何処かで、これからやってくる嵐の予感を感じながら・・・・・・・

 

TOP          NEXT 

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system