内部紛争 1

 

 あわただしく年が明け、哲三と龍之介、伊吹は親組に挨拶回りに行く

「まず組長の病院に寄ろうか・・・・」

哲三の意見でまず淀川組組長の入院している病院へと向かった。

 

病室には桃香、室戸、南原、そして四天王がすでに来ていた・・・・

「ようきてくれたなあ・・・鬼頭・・・」

長い病闘生活にやつれた幸助の顔が、静かに微笑んだ・・・・・

「組長、はよう退院しはらへんと、嬢さんが痩せ細りますよ・・・」

幸助の手を握り哲三は微笑む・・・

「いや・・もう、思い残す事はない。鬼頭・・・南原もらうぞ」

「え?」

「婿養子に・・・・」

鬼頭組一同は沈黙する・・・・・・

もう幸助の耳にまで南原の恋人宣言は届いていた

ことのほか喜んでいる幸助に あれは嘘です・・・とも言えないまま、そのまま通すことになったのだ・・・・

「南原が桃香と結婚してくれて、組継いでくれたらワシはいつでも死ねる・・・」

「死なはったらあきません・・・・孫の顔見んことには・・・ねえ・・・」

室戸も必死だ・・・・・

「桃香・・・高校卒業まで待てん・・・・すぐ結婚せい・・・」

「お父さん・・・・」

困り果てている桃香と南原

一番後ろで凍り付いている龍之介と伊吹・・・・・・

「ええんですか?子組から婿なんかとって・・・」

苦笑しつつ哲三は訊く

「子組は子組でも、南原は鬼頭の若頭や、それもポスト藤島伊吹やないか・・・何の不満もない。

桃香が南原に助けられたあん時から、ワシはこうなる事を願っとったんじゃあ・・・・」

「は・・・はあ・・・」

哲三は南原を見る・・・・・・

助けを求めるような南原のすがる目に、首を振る哲三・・・・

諦めたようにうなだれる南原・・・・・・

 

 

鬼頭一行はその後淀川組により、一通り挨拶をして帰ってきた

「南原・・・・覚悟せなあかんかもなあ・・・」

哲三がつぶやく・・・・・

「別に悪い話と違うし・・・・若い嫁さんもろて組長になれるんやし・・・」

無理に納得しようと頷く哲三・・・・・

「美人やし・・・・うん」

 

とても無理やりに見えて、龍之介と伊吹は何も言えずにいた・・・・・・

 

 

その後は、鬼頭に来る挨拶客で賑わい、吉原から組長と姐、そして聡子も来て

楽しく談笑しつつ、ひと時を過ごした・・・

 

そうして元旦は幕を閉じる・・・・・・

 

 

その夜、組内宴会となった大広間で、龍之介と伊吹は浮かない顔で杯を傾けていた。

「おい・・・大丈夫か・・南原・・・」

「今ホンマの事話したら、淀川の組長の病状が悪化しますから・・・そういうことにしときましょう」

「困っとったぞ・・・嬢さんも南原も・・・」

「やぶへびなんか、瓢箪からコマなんか・・・よう判りませんわ」

ため息の伊吹・・・・・・

「南原・・・狙われるんと違うやろなあ・・・」

はあ・・・・

その可能性は大・・・・・・

(室戸譲・・・南原と嬢さんの事、組長の耳に入れたのはあの側近や、なんかたくらんでる・・・

嬢さん守る為に南原を標的に仕立て上げたんと違うか・・・・)

しかし、それを責めることは伊吹には出来ない。

高校生の娘の盾にやくざの若頭を立てたとして、それは正当なことではないか?

「南原は恋人のふりを続けんとあきません・・・今嘘がばれたら鬼頭が火の粉被りますよ・・・」

龍之介は頷く・・・・・

南原を送ったのは龍之介だ・・・・・

南原を使って、淀川組を吸収合併しようとしていると思われても仕方ない・・・・・

「切り抜けられるか・・・南原・・・」

しかめっ面で煙草を取り出す龍之介・・・・・

すばやく伊吹はライターで火をつける

「量・・・増えてますよ・・・・」

龍之介の健康を気にする伊吹・・・・

「ストレスたまるんや・・・・・どうにかしてくれ・・・・」

「南原の事、信じましょう。きっと切り抜けますよ、あいつは。」

と部屋の隅から灰皿を持ってくる伊吹

「龍さんの、あの時の判断はまちごうてないと思いますから」

そうだ、この騒ぎは南原でなくては収まらなかったのだ・・・・

伊吹はそう確信する

 

様々な問題を孕みつつ、新しい年は明けた・・・

 

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