淀川組の日々 4

 

「圭吾・・・本気か?」

 桃香の寝室、ドア付近のついたての前で佇む桃香と南原・・・・

「はい。嬢さん・・・覚悟はええですか・・・」

室戸に説得されて、南原に寝室の護衛を許したものの、ぎこちない桃香。

「一応念のため、これ持っててください」

と小刀を差し出す南原・・・・

(時代劇か?)

呆れつつ、受け取る桃香・・・・

「お前の覚悟はわかった。信用する。それでなあ・・・組のモンに恋人宣言したのに”嬢さん”はおかしいやろ」

「ああ、ほな・・・桃ちゃんとか、桃香ちゃんとか・・・」

「鳥肌立つわ」

確かに似合わない・・・・・・・

「大体、うちに桃香なんて名前付けるほうがおかしいんやけどなあ・・・ついてしもたんはしゃあない、桃香と呼べ」

「呼び捨てですかい・・・・」

弱気な南原にイラつく桃香。

「今朝は”桃香は俺の女や”と啖呵きっといて、その弱気はナンや!」

「それは・・・カムフラージュ・・・・・」

(コイツ、へタレや・・・・・)

少し、ひき気味な桃香・・・・・・

「思い切って呼び捨てせい!」

「はい」

 

「まさかとは思うけど、念のため言うとく。うちは圭吾が好きやけど、それは何してもええ、と言う事とは違うぞ」

「もちろんです。結婚するまで、貞操は守ってください。私も兄貴分に負けん位、貞操堅いですから。」

ああ・・・・

と桃香は伊吹を思い浮かべる・・・・

「藤島も・・・堅そうやなあ。というか、あれは女に関心ないで・・・アッチか?」

ドキッ・・・・・・

(おぼこいくせに、カンは鋭いなあ)

「鬼頭さんも、藤島に対してな〜〜んか微妙やし。怪しいなあ・・・」

伊吹を引き合いに出した事を後悔する南原・・・・・・

「圭吾、もしかして、藤島・・・お前に色目使こたりしてへんか?」

(すみません。それは、逆です・・・)

心で号泣する南原・・・・・・・

「藤島の兄さんの事、軽々しゅう話題にすることは私が許しませんよ」

キッパリ言う南原に素直に頷く桃香・・・・

「すまん。失礼な事言うたなあ。藤島が特別に圭吾を可愛がってるみたいやったから・・・気になってつい。」

特別に可愛がっている・・・・・その言葉にホッコリする南原・・・・

「そう・・・見えますか?」

「ああ。これほどの兄弟分はめずらしいよ。それに・・・うち、藤島は嫌いと違う。あんな側近いてくれたら、どれだけええか・・・

いつもそう思うし・・・」

ふっー

南原は微笑んで桃香の頭を撫でる

「・・・おやすみなさい」

「うん・・・」

顔を真っ赤にして頷く桃香が愛しい・・・・・

「うちらも・・・兄妹からはじめへん?」

小声でそういって奥に消える桃香・・・・

「そうですねえ・・・」

とはいったものの・・・・・

兄妹になるんじゃなくて、そこからはじめるとは・・・・・・

悩む南原・・・・・・

(一体・・・・最後は何処に行くんだ?)

 

クローゼットを開け閉めする音が聞こえ、しばらくして奥のスタンドがついた。

「圭吾・・・電気消してええよ」

「はい」

部屋の明かりを消し、南原は手元のスタンドの明かりをONにする

 

 

(とにかく・・・・休もう・・・)

しかれた布団に横たわる・・・・・・

 

若頭代理を押し付けてしまった岩崎の事が、ふと頭をよぎった・・・・・・・

 

 

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