淀川組の日々 2

 

 次の朝、いきなり大騒ぎになった。

昨日は訳もわからず一応、南原の来訪を許した淀川組の組員が、一夜明けて談判にきたのだ・・・・

組員代表として若頭の志賀、若頭側近の田代、その弟分近江、稲垣・・・・・

淀川四天王が会議室に詰め掛けた。

対するは、室戸、南原・・・そして、桃香。

 

「文句があったらいうてみい!」

初めから威圧的な室戸、それに負けじと気合の志賀博久・・・・・

「南原が、何で淀川に来るのか、教えてもらえませんか」

志賀は伊吹と同い年で、表面クールな伊吹とは対照的に直情的な男だった。

あちこちで騒ぎも起こすが、竹を割ったような性格で、ガキ大将を大人にした憎めないタイプである。

「子組からの援助は、受けたらあかんのか?」

「兄さん・・・鬼頭がうちを吸収しようと、たくらんでると言う噂がありますが」

(あほか・・・・)

内心あきれる南原・・・・・・・

「鬼頭は関係ない。うちが個人的に護衛を頼んだ」

桃香の言葉に顔をしかめる四天王・・・・・

「知ってるやろ?今まで圭吾はうちの ボディーガードを何回かしてた事・・・」

「なんで他所から護衛頼むんですか?」

「お前らが信じられへんからやろ!大嬢さんのこと・・・・お前も責任あるぞ。監督不行き届きじゃ」

言葉をなくす志賀・・・・・・

「上司の情婦(いろ)に手ぇ出しても指ツメのこの業界で、組長の娘に手ぇだしたらどうなるか、

もう一回教えたろか・・・・・・

舎弟の教育がなってへんやろが!!!」

力で丸め込もうとする室戸・・・・・

「でも・・・なんで南原なんですか?」

田代が口を挟む

「お前ら、南原がそんなに怖いんか?」

室戸の言葉で、色めき立つ四天王・・・・

しかし・・・・・事実だった

 

やがて、決意したように南原は口を開く。

「私も嫌われたもんですね。兄さん・・・すみませんが、これは譲れません。大嬢さんに手ぇ出すような奴が

おるようなトコに、中嬢さん独り置いとけませんから」

「そやから、何で お前が首突っ込むんや!」

近江も、とうとう業を煮やして叫ぶ

「まだ、判りはらへんのですか・・・・鈍いですよ」

(はあ?)

いっせいに南原を睨みつける四天王達・・・・・・

「ここまで言わせるんですか・・・・桃香は私の女です。手ぇ出す奴は容赦しません」

「おい!」

身を乗り出す四天王にびくともしない南原、凍りついた桃香・・・・・頷く室戸・・・・・・

「お前、ここの婿養子狙ろとるんか!」

「とんでもない。淀川なんか要りません。婿養子は末嬢さんにでも取らせたらええですやろ・・・

私が欲しいんは桃香だけですから。自分の女、守りに来て何が悪いんですか?」

「圭吾・・・・」

事態の急変に戸惑う桃香・・・・・

「もう隠す事ないですやろ・・・・」

言いつつ、南原は桃香の肩を抱きよせる・・・・・

「・・・そういうことか・・・判った」

力なくひき上げる四天王・・・・・

 

 

「圭吾・・・なんであんな事・・・・」

四天王が出て行くと桃香は小声でささやく・・・・

「すみません・・・あの場納めるためにああ言いましたけど・・・嬢さんの将来にキズがつくような事しました・・・・・・」

「嘘がホンマになったらええけどなあ・・・・つーか、責任とって嫁に貰えよ」

大笑いする室戸・・・・

「志賀は、お前の兄貴分の藤島とは正反対な性格やからしんどいやろ・・・・と言うか、

藤島は苦労してるだけあって人間出来てるもんなあ・・・・」

なんとなく伊吹が恋しい南原・・・・・・・

「嬢さんも、バレんように恋人のふりしてくださいよ」

室戸の言葉に顔から火をだす桃香・・・・・

「いつも通りでええんですよ・・・・ようなついてはったのに・・・」

南原も笑いつつそう言う

「圭吾!!!」

 

「まあ、虫除けはしたと。後は隠れた敵を探すことやなあ」

ため息混じりに室戸はつぶやく。

 

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