淀川組の日々 1

 

淀川組では助っ人に、ポスト藤島が来たと大騒ぎだった・・・・・

鬼頭が親組を狙っているだの、色々な噂も飛び交った。

 

「南原・・・お前が個人的に嬢さん守る目的で来たという事は信じる。気ぃ付けろ・・・今となってはここは下克上や。

何があってもおかしゅうない、お前は嬢さんだけ守れ。組潰しても嬢さんだけ守れ。」

組長の側近である、室戸譲が夜、南原を呼びつけてそういった。

50がらみの白髪の目立つ気のよさそうな男だ・・・

が・・・・・彼は”修羅”の異名を持つ、この業界のカオだ。長い間 淀川の内と外を守ってきた・・・・

 「ワシは全力で組を守る」

「室戸、すまん・・・跡継ぎがおらんばっかりに」

セーターにジーンズのラフな服装に着替えた桃香が、ため息混じりに言う。

「女やから、組長は無理やと言う考えは間違うてます。嬢さんなら立派に組長やれます。

ただ、ワシは・・・そのために女としての人生、捨てたらあかんと思うんです。大嬢さんがそうです・・・

好きな男がおるのに、組のためにやくざと結婚するのは組長もワシも望みません。

中嬢さんも末嬢さんに対してもそうです。最善は尽くしますが・・・あかん時は嬢さん、

自分の道を行ってください。」

「室戸・・・」

「お休みなさい・・・」

優しい笑顔で室戸は頷いた。頷いて出てゆく桃香・・・・・・・

その姿を見送る南原・・・・・・・

 

「どう思てる?嬢さんの事。嬢さんは南原の事好きみたいやけど・・・」

一息ついて、室戸は南原を振返った。

「妹みたいに思うてます」

「万が一の時、お前に任せたらあかんか?」

思いつめたような室戸の言葉に、南原は眉間に皺を寄せる。

「というと・・・」

「嫁に貰う気は無いか」

南原は言葉をなくす・・・・・・・

「嫌か・・・・」

苦笑の南原・・・・・・・

「嫌も何も・・・・まだ17でしょう?子供やないですか」

ははははは・・・・

室戸は大笑いした

「そやから、お前の事好きなんやワシは・・・・・」

「え?」

「ワシは17の小娘、とって食うようなロリコンも、淀川狙いで婿に入ろうとする詐欺師も好かん」

(はあ・・・・・)

「嬢さんが大人になるまで保留にしてくれ。お前、いくつや・・・」

「28になりました・・・・」

「一回りほど離れとるなあ、子供に思えるのもしゃあないなあ。でもな、嬢さん、ああ見えて甘えたやから、

親父みたいな男が必要なんや・・・・」

甘えたいのに甘えることが出来なかった子供・・・・それが桃香・・・・・

「まあ・・・寝室共にしても問題ないな」

(え!)

「問題でしょう!!!」

「子供なんやろ?こう・・・腕枕でもしてやってなあ・・・・」

「兄さん!てんごは辞めてください!!」

ははははは・・・・・・・

「まあ・・・腕枕は言い過ぎや・・・・が、お前は警護に来たんやから、一晩中 嬢さん守る義務がある。

ついたて一つ隔てて、ドア側で休んでもらうぞ・・・明日から・・」

ほっ・・・・ため息をつく南原・・・・

(そういうことか・・・・)

「でも・・・嬢さんが嫌がらはりませんか?」

「問題はそれや・・・・うちの嬢さんは突っ張ってるけど、ああ見えておぼこい。男と交際する事も全くなしで来た・・・・

お前を連れまわしたんが、生まれて初めてやな。いきなり寝室に男入れるのは酷やなあ・・・・

しかも、惚れた男ならなおさら・・・・心臓麻痺起こさんか心配や・・・・」

言葉をなくす南原

今時の女子高生とは思えない。いや・・・あの、怖いもの無しに見えた桃香とは思えない室戸の言葉・・・・

「まさか、お前に襲い掛かることはないと思うけど・・・・気ぃ付けや・・・」

(脅さんといてください)

「明日は嬢さんを説得する。今日は隣室で休め・・・物音に気ぃつけて護衛せい」

「はい」

何処か、誰かが辿ったような道を辿るハメになった南原・・・・・・・

受難の日々は始まったばかりだった・・・・・・・

  

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