懐妊 1

 

11月下旬ごろ・・・・聡子が体不調になり、食事の支度は完全に家政婦任せになった・・・

哲三が、聡子に家事一切をさせないようにしたのだ。

「聡子、何処か悪いんですか?一日中寝込んでるし・・・・夜中に吐いてるんですけど・・・・

訊いても”大丈夫”としか言わんし・・・」

夜、哲三に部屋に呼ばれた龍之介は心配して訊く

「病気ちゃうぞ・・・・たぶん。あさってくらい一緒に病院、行って来い」

「病気ちゃうのに・・・病院ですか?」

 訳のわからない龍之介・・・・

一緒に呼んだ伊吹を哲三は見る・・・・

「伊吹、お前が車、運転して連れて行ってやれ。」

「はい。」

伊吹は察しているが龍之介はまだ判かっていない。

 

「お前・・・判ってるんか・・・」

哲三の部屋を出てすぐ、龍之介は伊吹に訊く

「夫が気付かんのも問題ですなあ・・・」

「明日・・・やっぱり内科か・・・」

「行くのは、産婦人科です。こういうとき、女手が無いと、ほんまにねえ。男2人が産婦人科行くとは・・・・」

「そんなトコ・・・・行きた無いぞ・・・」

ため息をつく伊吹・・・・

「旦那が行かんでどうします?おめでとうとか、ありがとうとか・・・言うてあげなあかんでしょう?」

「は・・・?」

そのまま龍之介の書斎に入る2人・・・・・・・・

「ご懐妊かも知れへんという事です」

「吐いてるのは・・・・つわりか?」

「先代が、そう判断されてるんならそうでしょう・・・私ら、つわりの体験ないし、

身近でそういうものに接した事はありませんが、先代は紗枝様が組長を身篭って、

産まはるまで傍にいてはったそうやないですか・・・・」

ふうん・・・・・

頷く龍之介・・・・・・・

「跡取りの問題ありますから、姐さんも気ぃ使うてはった問題ですよ・・・ここは女手無いし、

大事とって、吉原の実家に一時戻らはる方がええかもしれませんねえ・・・まあ、ご懐妊と決まったらですが」

ふうん・・・・・

いきなり深刻な龍之介・・・・

「オヤジになるのって・・・・プレッャーやなあ・・・」

「生まれるまで10ヶ月ありますから、その間に覚悟するんですね。」

時は進んで行く・・・・後戻りはしない・・・・

「まだ確定したわけや無いから、組のモンには言わんように。病院で診断されるまでは、

姐さんも気付いてても組長に報告するのをためらってはるんでしょう。ぬか喜びさせるのもなんですからねえ・・・」

跡取りは鬼頭には必須・・・普通の既婚女性以上に聡子は慎重だろう・・・・・

 

鬼頭組も新たな展開を迎える・・・・・

 

 

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