鬼頭組の事情   1

 

いつものように鬼頭組の朝が訪れ、新入りの高坂知樹は居間の掃除を始める。

「高坂さん、おはようございます。毎日せいが出ますね」

「姐さん。おはようございます」

台所で朝食の準備をする姐、聡子の美しい笑顔に癒されつつ、鼻歌で雑巾掛けをする高坂。

噂に聞く、鬼頭の藤島伊吹に憧れて1ヶ月前に鬼頭の門をくぐった高坂・・・・

毎日、組長側近の伊吹に間近で会えるという、ミーハー的な喜びに浸っている。

 

藤島伊吹・・・・・・

8代目現組長 鬼頭龍之介を育て、養育した極道界のスター・・・・

わずか、10歳差しかない鬼頭の跡取りを立派に襲名させた凄腕・・・・

ハードボイルドな男らしい容姿と、カリスマを併せ持つエリート中のエリート

理想のやくざである・・・・・・・

 

 ーあんまり藤島の兄さんの事、理想化するとがっかりするぞ・・・ー

兄貴分の安田がそう言った。

意味がわからないまま高坂は、1ヶ月を伊吹の追っかけで過ごした・・・・・・

 

組長の鬼頭龍之介

大学卒業後、22歳の若さで8代目を襲名した。

名だたるクールビューティー。

背の高い美丈夫で、涼しげな大きな瞳は刃のように鋭い。

口数少なく、感情は滅多に表に出さないが、それゆえにはかり知れない怖さがある・・・・

業界では”氷の刃”と異名を持つ。

伊吹と並ぶと、華やかさと威圧感で皆、一瞬見惚れるほどだった。

 

「鬼頭に来てよかったなあ」

雑巾掛けを終えて独り言を言う高坂・・・・・・・・

「何をしみじみ感動してるんや?」

後ろから南原が突っ込んでくる

「!若頭!今日はお早いですね・・・・」

起立して挨拶する高坂の肩を叩きつつ、笑う南原

「仕事が混んでて・・・・昨日、ここに泊まりやったんや」

伊吹に負けず劣らずの容姿と、能力でポスト藤島伊吹と噂の若頭・・・・・

「で・・・鬼頭に来てよかった・・・って?」

「はい。ここは美男、美女の坩堝ですから。組長も藤島の兄さんも男前やし・・・・姐さんは美人やし・・・・・

極道界の綺麗どころと噂ですよ」

あきれて苦笑する南原・・・・・

「そんな事で感動するなよ。かなりがっかりするぞ・・・お前」

 古株たちは知っている・・・・・

組長の龍之介は昔、今の姿では想像もつかないほど、チビで華奢な天真爛漫な天然美少年だった事・・・

鬼頭のカリスマと言われたコワモテ、藤島伊吹は実は、家事一般をこなすオカンキャラだと言う事を・・・・・・

 

しかし・・・・・高坂はまだ知らなかった・・・・・

 

鬼頭の内情を・・・・

 

 

朝食後・・・・・・

「兄さん、おはようございます」

「おう」

多くの声に迎えられて高坂のアイドル、憧れの君、伊吹が出勤してくる

そして、真っ先に組長の書斎に向かう伊吹を、憧れの眼で見つめる高坂・・・・・

(かっちょええ〜〜〜〜)

心配そうに見つめる南原・・・・・・・・

夢が破られる日はそう遠くない・・・・・

 

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