離別     

 

 

 セレスティア家の最上階のテラスで、ユリシーズと智はプリンス・フィルバートと

プリンセス・ダイナの婚礼のパレードを見守っていた。

「今日が無事に終われば・・・・」

ユリシーズは祈るようにそうつぶやく・・・・

プリンセス・ダイナとユリシーズの破局が話題にされるのも、今日で終わるのだ。

 

が・・・

その静寂を破って、階下で争う声がした。

 

ユリシーズと智は顔を見合わせると階段を下りていった。

もしもの時の為に、今日は2人とも帯刀していた・・・・・

玄関口でルミナールの暴徒が、ユリシーズを出せと叫んでいる。

12.3人はいたろうか・・・・・

「自国の王子の婚礼を潰すとは、とんだ愛国者だな!」

騎士としてのユリシーズがそこにいた。

「うるさい!こんな国に婿入りするほど俺らの国は落ちぶれちゃあいない!こんな婚礼ぶっ壊してやる!

まずは、元婚約者を血祭りにあげてから城に乗り込む」

「そんなことしても何にもならんだろう・・・」

静かにユリシーズは剣を抜いた・・・・・

公爵家の使用人達も、剣を携えて周りを囲んでいる。

「やれ!」

いっせいに切りかかる暴徒達を斬りつけつつ、ユリシーズは1人2人と処理して行く・・・・

智は斬りかかって来る者を剣で防ぎつつ、倒された者達が、何かを懐から取り出すのを見た

明らかにダイナマイトのようなもの・・・それに火をつけようとしている

「剣で勝てないならいっそ、もろとも爆破するのみ・・・・」

ユリシーズと剣を交えている最後の暴徒がそういった

それが合図となり火が付けられようとしていた・・・・・

「ユリシーズ!!」

智の叫びと共に、強い竜巻が怒り暴徒達は天井高く吹き上げられる・・・・

 

 

そして・・・・・

最後は塵一つ残りはしなかった。

 

 

あっけに取られる使用人達を掻き分けて、ユリシーズはくず折れる智を受け止めた・・・・・

「ユリシーズ様・・・・・」

「暴徒は・・・来なかった。ここで何も起こりはしなかった。いいな、王室の婚礼に

ケチがついてはいけない。幸い痕跡は何一つ無い。死体一つ・・・・」

そう言うと、智を抱き上げ自室に引き上げた。

 

暴走する竜の血は、力の加減が出来ない・・・・・必要以上の力で相手を倒し自らも消耗する。

 

(もう一刻の猶予もならない。王室の婚礼に父と共に招かれて行ったルチアの帰りを待って

智を完全に、もとの世界に帰さないといけない)

 

寝台に智を寝かせて彼の髪を撫でる・・・・

もし、ここがもっと平和な世界だったなら・・・・

もし、自分が危険が付きまとう騎士という立場でなかったら・・・・

智を拒みはしなかったろう。

 

しかし・・・・

これ以上は限界だった・・・・

 

エンゲージをして、能力(ちから)のコントロールが出来たとしても、ユリシーズが危険に晒されるたびに

智は自らの命をすり減らして能力(ちから)を使う・・・・

この世界にいる限り、ユリシーズが騎士である限り、頻繁に使われるであろう竜の力・・・・

 

「お前はここにいてはいけない・・・・」

哀しい笑顔で、ユリシーズは意識を失っている智にそう告げた・・・・

 

 

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