契約者(マスター) 3.

 

 

    帰宅後、夕食を早々にすませて、智は自分の部屋で 悠利から借りた本を読み始めた

 

ー昔、竜と人は同じ種族だった・・・・しかし戦争が起こり、竜族は滅ぼされた。

数少ない生き残りの竜の能力を手に入れるため、貴族たちは血眼になってドラゴンズ・ブラッドを探すー

 

その戦争のいきさつはこうだった・・・・

 

 

ーアルメニア王国のマリナ公主が、城内で夜盗に襲われたとき、一人の騎士が現れ、それを救った。

二人は一目で恋に落ち、騎士は夜毎、公主の部屋のバルコニーに現れる・・・・・・・

そして、二人の時を過ごし明け方去ってゆくのだが、身分を明かそうとしない騎士を不振に思った公主は

騎士が来るのを待ち伏せて カーテンの隙間から彼の姿を除き見た・・・・その光景は・・・・

夕日を背景にバルコニーに舞降りた竜が、闇が帳を落とす頃、騎士へと姿を変えるというものだった・・・・・

 

その夜、騎士は自分が竜の一族の王であることを明かす。

昼は竜の姿・・・夜は人の姿になるという竜族の彼は ある日マリナ公主を見かけて恋に落ち、

遠くから公主を守っていたところ、あの夜盗事件が起こったのだと・・・・

竜の姿を見られ、もう公主の愛は受けられないと思った彼は 別れの言葉を残して去る。

 悲しみにくれる公主は、自分は本当に竜族の王を愛している事に気付く。

そして、彼の子を身篭っている事も。

密かに城を抜け、竜族の王の元へむかう公主・・・・ 

竜の森での再会、そして永遠を誓う。

一方、城ではマリナ公主の失踪に大騒動となる。

末娘で、誰からも愛されていたマリナ公主がいなくなったと、大捜索が繰り広げられる・・・・・

それを知り、竜の王は公主を伴い王に挨拶にむかう。

王は竜に公主を嫁がせる事をよしとせず、竜王を捕らえようとするが、竜王は公主を連れて自国に逃れた

公主を取り戻す為、王は竜の国を攻め滅ぼそうとする。

長い戦いの中、互いを殺しあう事に疲れた竜王は、自らの死をもって戦いを終わらせ、

一族を他国にちらばらせ、血族の保存を図った。

公主は竜王の子を産み育てる決意をし、城に帰り、セレスティア公爵に嫁ぐ・・・・

王がかねてから 公主に好意を抱いていた公爵に無理やり嫁がせたのだ。

竜王との事があったにもかかわらず、公爵の公主への愛は変わらず、

公爵は、胎内の竜王の子を自分の子として育てることを承諾する。

公主はやがて、竜王似の黒髪の双子の男の子を産む。これが竜王の王家の血筋となる・・・・

その後・・・公爵の愛情にだんだん公主も心を開き、2人は仲のよい夫婦となった

後に公主は公爵の子を産む。

金髪碧眼の公爵に似たその男の子は跡取りとなり、先の双子は彼に誠心誠意仕えたとされている・・・・・

 

デューク・エミール・セレスティア・・・・

 

彼が最初のドラゴンズ・ブラッドの契約者だった。

セレスティア家は代々竜使いの家系となり、多くのドラゴンズ・ブラッドが仕えた。

・・・・ドラゴンズ・ブラッド・・・・血はだんだん薄まりつつも 今もなお生き続ける竜の眷族ー

 

 

 

 

そこまで読んで智は一息つく・・・・

(つまり、ユリシーズの家系は、竜使い・・・・ドラゴンマスターだったと言う事か・・)

夢でユリシーズから聞いた話を思い出した・・・・

 

・・・・テリウスの母は、テリウスを連れてセレスティア公爵の後妻に入った。

そしてテリウスは、セレスティア家の嫡子ユリシーズに忠誠を誓い、命を捧げた・・・・・

 

巡り巡る運命や宿命というものはあるのかもしれない。

 

竜王がマリナ公主を守ったように、ドラゴンズ・ブラッドは公主の血族である、セレスティアの嫡子を

代々守ってきたのだ。

 

それが竜王の公主への愛なのだろうか・・・・・・

 

ユリシーズ・・・・・

 

智はユリシーズに無性に逢いたくなる・・・・・・

 

(あのお香を焚けば・・・・・)

 

逢えるかも知れないと思う

 

一本取り出し、火をつけくゆらせる・・・・・・・・ユリシーズとの唯一つのツール・・・・・・

 智の中に眠る竜の血が自らのマスター(契約者)を求めていた。

 

 

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