始まりは突然に    .

  

 

  

 帰国の準備に追われている騎士達を見詰めつつ、テントで智はボーゼンとする。

元に返れなかったら・・・・不安が次から次から湧いてくる・・・・

永遠にテリウスの替え玉をしているわけにはいかない・・・いつかばれる

まず、家に帰ってテリウスの母親に会えば、ばれる・・・

(痣の位置は逆だし・・・・・)

ばれたら自分はお払い箱・・・・行き場も無い・・・

それとも、ドラゴンズ・ブラットだといって重宝されるのか・・・・・

それも・・・能力(ちから)あればの話。自分にはそんなものありはしない・・・

(修行でもするのかな・・・・痣があるだけで勝利の女神になれるわけでもないだろうに・・・・

手に職があるわけでも、騎士として闘えるわけでもないし・・・・あ!弓!)

自分が弓道部だったことに気付く・・・・

(でも・・・洋弓でないし。やはり・・・ここでは馬に乗って・・・)

ふうーため息をつく・・・・

 

「どうしたのだ?さっきから百面相をしているぞ」

気付けばユリシーズが立っていた。

「いえ・・・これからのことを思うと・・・・」

「希望を持て。私も・・・テリィのことは諦めてはいない。あいつはドラゴンズ・ブラッド。

簡単には死にはしない・・・」

言葉とは裏腹に彼の瞳は潤んでいた。

「ユーリ・・・」

「すまない・・・・つい・・・」

ユリシーズは左手の人指し指からリングを抜き取った・・・・智と同じクロウリングだった。

「これのせいだ・・・・」

「!なぜ?貴方がこれを?」

「竜と契った証のリング・・・・このリングを受け取った者はドラゴンズ・ブラッドの保護を受ける。

逆に言えばドラゴンズ・ブラッドはリングの所有者に忠誠を誓い、贄となる誓いを立てる。

私はテリィにリングを捧げられた。何度断っても彼は・・・私しかいないと」

「テリウスは・・・ユーリの身代わりになったというのですか?」

外したリングを見詰めつつユリシーズは頷く

「もし・・・・私があの時死ぬ運命だったとしたなら・・・・」

ユリシーズは後悔を隠しきれなかった・・・・・

「エンゲージ(契約)などするのではなかった」

「でも・・・彼は幸せだったのでしょう?」

会ったことも無いテリウスという青年の気持ちが、何故か智にはよくわかった。

 

その時リングがユリシーズの手の中で光を放ち消え去った・・・・・・

 

「!!テリィ・・・・・本当に逝ってしまったらしい。クロウリングはドラゴンズ・ブラッドの魂・・・

テリィは息を引き取ったのだ。」

 うなだれるユリシーズに智は何も言えずにいた・・・・・・

 

まるで智にバトンタッチして逝ったかのようなタイミングだった・・・・・

 

                                                          

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