襲名式 3

 

 

「いよいよ明日ですね」

龍之介の洗い髪をドライヤーで乾かしながら伊吹は笑う。

「お前も昇進か・・・」

龍之介の襲名式は世話役の伊吹の晴れ舞台でもある

「龍さんは立派にこなせるから大丈夫です」

迷いは無い・・・・生まれたときから誰に言われなくても、鬼頭の跡取りの自覚はあった。

継ぐものなんだろうと思っていた・・・・

伊吹がいてくれたから、なおさら

「お前さえ傍にいてくれたら、俺は何処までもいける・・・・だから離れるな」

ドライヤーをしまいつつ、伊吹は微笑む

「はい。死んでも離れませんから、覚悟してください。」

「老後の面倒も見てやるからな・・・」

ははは・・・・・

「情夫(いろ)は終身契約でしたか?」

「当たり前だ」

立ち上がって伊吹を抱きしめる

「今日は早めに休まれたほうが・・・」

「同居最後の夜なのに?」

「いつでもまた逢えます・・・」

 

しかし・・・・・・

当分は自粛しないといけなくなる事を2人は知っている・・・・・・

 

「おめでとうございます」

「襲名がか?結婚がか?」

「どちらも・・・」

 龍之介は伊吹の背にまわした腕に力を入れる・・・・・

「お前は・・・それでいいのか?」

「貴方の傍にいれるなら幸せです」

伊吹もそっと龍之介を抱きしめた・・・・・・・

「こうして腕の中に龍さんを抱いていることさえ、奇跡みたいなことなんですよ・・・」

「よかったなあ・・・・俺達、相思相愛で。」

はははは・・・・

肩の震えが龍之介にも伝わる・・・・・・・

「そうですねえ・・・振られたら漫才のネタにしかなりませんから」

相思相愛でも宮沢には漫才のネタとなっている・・・・・・・・

ふと龍之介は左手を見詰める・・・・指輪が無い 結婚式に使うため島津に預けてある・・・・

しかし、カタチはどうでもいい。

「俺達は・・・出逢ったときから、こうなる運命だったんだ。だから・・・乗り越えていける」

明日の龍之介の晴れ姿を思い浮かべる伊吹・・・・

 

 

「・・・・また、何考えてんだ?」

龍之介のの鋭い目に見据えられて伊吹は微笑む

「幸せを感じておりました」

 

「色々あったよなあ・・・」

「これからも色々ありますよ」

そういうものだ・・・・・

これはただの一区切りでしかない・・・

「色々あったとしてもお前は変わらない そうだろう?」

「はい」

 

変わらないどころか、龍之介は18の頃よりも19の頃よりも今の自分が、もっともっと伊吹を愛してる事に気付く・・・

 

言葉に表せないほど・・・・

 

子供の頃の依存とは違う、大切にしたい思い。守りたい思い・・・・そんなものが溢れている・・・・

 

「とにかく・・・今日で同居最後なんだから、悔いの無いように・・・」

伊吹の腕を引いて寝室に向かう龍之介

「だから・・・・早く休みましょう・・・」

明日のことが気がかりな伊吹

「さっさと済ませて早く休もうなあ〜」

 

(龍さん、中身は変わってない・・・・)

19歳の当時と内容は変わっていない龍之介・・・・・甘えん坊・・・

しかし、変にひとり立ちされるのもつらい伊吹は、そんな龍之介が密かに好きだったりする・・・・

 

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