襲名式 2

 

 

5月にはいると結婚式の準備に襲名式の準備に忙しくなった。

 

「サイズはぴったり・・・・よう似合わはりますよ」

聡子が鬼頭に紋付袴を持ってきて、龍之介に着付けた。

「龍之介さんて・・・和装も似合うんですね。西洋風の顔立ちしてはるから、どうかと思いいましたけど」

聡子に着付けてもらっている間、龍之介はふと七五三の時を思い出していた・・・・・

紗枝があの時、着付けしてくれて近くの神社に行った・・・・・・・

あの時のような錯覚を起こした・・・・・・

「当日は着付け専門呼びます。結婚式の後、襲名式ですから、着崩れんようにせんといかんしねえ・・・」

「聡子さんは衣装合わせ、すんだんか?」

横にいた哲三が訊く

「はい、着付けは自分で出来ますし」

接客業だっただけあり、聡子は てきぱきとこなして行く・・・・・

 

伊吹は・・と言うと、彼は彼で忙しい・・・・

若頭になる南原に引継ぎをして、更に側近として襲名式参加の準備もしなければいけない。

とりあえずスーツを一揃い新調し、龍之介のサポートの為、式順の把握、段取りまで請け負っている・・・・・・

 

あまり忙しいと、寂しさも感じないと言う事に気付く・・・・・・

そういうものなんだろう・・・・・

そんな気がした。

 

 

「お疲れ様でした」

マンションに帰ると伊吹が迎えてくれる・・・・

別行動だった今日一日・・・伊吹の顔を見るとほっとする。

「今日、忙しかったでしょう?」

「ああ・・・・」

笑う龍之介・・・・夕食も別々だった・・・・・・

ソファーに座ると紅茶が出てくる

「どうでした?」

「何とかなりそうな気がしてきた・・・」

カップを受け取りつつ微笑む龍之介

「よかったですね」

振り向けばいてくれる・・・・・そんな安心感で、龍之介は伊吹の不在さえも乗り越えられる・・・・・

「大人になったと思わないか?」

ふふふ・・・

笑いつつ伊吹は龍之介の隣に座る

「18の頃とは比べ物にならん位 成長されましたよ」

「だろ?」

「ひ〜〜〜んとか言ってたあの頃は、嘘のようですね・・・・」

ぶっー

紅茶を吹く龍之介・・・・・・・

「言ってたか?そんな事?」

「言うてました。”伊吹と一緒でなきゃいや〜〜〜〜”とか」

やれやれ・・・・・・・

ため息の龍之介・・・・・伊吹には頭が上がらない。

(5歳の頃からの付き合いなんだからしょうがないか)

「私があげた婚約指輪・・・どうしました?」

「とってある。1号も2号も。プリクラまで永久保存版だ」

え〜!!!!

伊吹は蒼白になる・・・・・・・・

「それ、誰かに見られたらどうするんですか!」

「封印してあるから大丈夫だ。」

・・・・・でも・・・・・・

 

「お前だって、処分してないでとってあるだろう?」

どきっー

「い・・・いいえ・・・」

「隠し持ってるの知ってるぞ・・・」

「まさか・・・・」

引きつった笑いを浮かべる伊吹に龍之介は突っ込む・・・・・

「お前の部屋にある小さい金庫・・・アレ怪しいよな」

え!!!!!!

「金目のものなんか入ってないだろ?知ってんだぞ・・・」

「金なんかより、もっと重要なものが入ってます」

ふっー

伊吹の肩に頭を乗せる龍之介・・・・・

「そうか・・・・俺も金庫にしまうかなあ。指輪とプリクラ・・・・」

「そうですねえ」

「でも一番重要な物は入らないなあ」

と伊吹の方を振り向く・・・・・・

「こんなでかい男、入れる金庫なんてなあ。もしあったら一緒に入ろうなあ・・・」

「死にますよ・・・・それ・・・」

「冗談だよ」

(閉じ込めておきたいのは私のほうです・・・・・誰にも渡したくない)

伊吹の顔から微笑が消えて真剣な眼が龍之介を捕らえる・・・・

「伊吹・・・・」

顎を持ち上げられいきなりキスされる龍之介・・・・・

(どうしたんだ?こんなトコで・・・伊吹らしくない)

「ここじゃあ・・・誰か来たらまずいって・・・・」

「来ませんよ・・・」

「でも・・・・」

いきなり人が変わってしまった伊吹に焦る龍之介・・・・・

「また・・・嫉妬に狂ってるな」

「狂ってません」

「狂ってる・・・・いや、狂っててもいいから寝室に行こう・・・落ち着かない。」

何故立場が逆になっているのかわからないまま、龍之介は伊吹を寝室に引っ張っていく

 

公の場に出る事が多くなればなるほど、周りの目を意識するようになって来た龍之介

以前のようにはいかない・・・・・

 

「さ・・・・続きしろ。もう狂っていいぞ」

戸締りと万全の準備を済ませて、ベットに腰掛けた龍之介が伊吹を見上げる

「狂ってませんってば・・・」

ムキになって龍之介を引き寄せキスする伊吹・・・・

(なにムキになってんだよ・・・・)

離れ離れで寂しかったと素直にいえない伊吹の不器用な愛情表現に戸惑いつつあきれる龍之介だった・・・・

(コイツ・・・前からこんなだったかなあ・・・・)

 

ひとり立ちしていく龍之介に若干の寂しさを感じている若頭は思ったより素直じゃない。

 

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