襲名式 1
4月初め・・・・大阪に戻った龍之介と伊吹は、鬼頭組から近からず遠からずの処に新居を構えた。
式までは龍之介のものとして使われ、その後は別宅として情夫(いろ)の住居に割り当てられる・・・・・
つまり伊吹のものになる・・・・・・・
「あと少しか・・・・」
東京にいても、大阪でも、相変わらずの風呂上りのお茶会で龍之介はつぶやく・・・
・・・・次期組長として哲三について回る日々・・・
組長になっても、後ろには哲三も宮沢もいるので不安は無い。
「組長て・・・日曜休みじゃないんだな」
年中無休・・・・・辛いものがある・・・・・
「祭日も無いですよ。ゆうても、出入りが無い時は結構暇ちゃいますか・・・・」
「まあ、’組に待機’・・・だよな」
「組長は下のもんに仕事振り分けたらええし・・・楽でしょう?」
ふ〜〜〜ん
と紅茶の飲む龍之介・・・・・・
「当分は顔見せで、組回りが忙しいでしょうが・・・・」
「襲名式は紋付袴だよなあ。なんか・・・七五三みたいじゃないか?」
見合いのときもそんな心配をしていたなあ・・・・と思い出す伊吹
「まさか!こんなに図体のでかい七五三ありますか?」
「でも、似合わないんじゃあないか?」
「似合いますよ。きっと」
にっこり笑う伊吹・・・・・・
「今の組長は普段も和装ですが、龍さんは普段スーツでいいですよ。動きづらいと困りますさかい」
「姐は和装と決まってんだなあ・・・」
「絶対ていう訳じゃないですけど。臨機応変ですよ・・・・今時、洋装だの和装だの言うてる時代と違いますから」
気負いすぎの龍之介を伊吹は案じる・・・
「俺・・・やくざに見えるか?」
昔の華奢だった頃のコンプレックスがまだ抜けない・・・・・
「だから〜やくざのコスプレせー言うてませんし。だんだん”らしく”なるもんなんですって。無理せんでええです。
自然体で行きましょう・・・」
「伊吹は、不安は無いのか・・・」
「龍さんなら大丈夫だと信じてますし・・・」
「毎晩一緒じゃないんだぞ・・・」
「でも毎日一緒でしょう。逃げも隠れもしません。ここで会えますから。」
ずいぶん長い間一緒にいすぎた・・・・そんな気がする・・・・
もう離れられないほど近づいてしまった・・・・・・
かな〜〜り遅いひとり立ちの時を迎える龍之介だった。
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