京都旅行 6

 

  

夕食時には皆、集まり食卓を囲んだ

「明日は初日の出拝みに行くか?」

島津が鍋を突付きつつ言う。

「神社におまいりに行くとか・・・・」

龍之介が哲三に酒を注ぎつつ笑う・・・・

「起きれるんですか?皆さん、今夜も飲み明かしでしょう?」

杯を傾けつつ、静かに突っ込む伊吹・・・・

「除夜の鐘は聞かなあかんなあ・・・・」

哲三が刺身を突付きつつしみじみと言う。

こんな騒ぎの中でも、伊吹は留守番の南原が心配である・・・・・・

(組でも酒盛りしてるんかなあ。あいつ真面目やさかい・・・誰かが盛り上げたらんと大変や・・・・)

冗談言いまくりの島津と違って、ハメを外せない南原は宴会で隅っこにいるタイプである。

「なんの心配してるの?」

龍之介が伊吹の顔を覗き込む・・・・・

「残してきた南原が心配で・・・・」

「こういう席で、南原さんの心配するかなあ」

少し面白くない龍之介。

あれ以来、伊吹と南原との会話に敏感になっている龍之介がいる

南原に対する伊吹の行動、総てに敏感に反応する

「無礼講で楽しんどるんとちゃうか?藤島はオカンやなあ・・・・」

島津は笑いつつそう言う・・・・・・・

誰にでもオカンは許せない龍之介

「宮沢さん・・・ここからじゃあ聴こえないよねえ?」

「ぼん・・・・私のことなんやと思ってるんですか?」

宮沢の困り顔に皆は大笑いする。

ボケと突込みが自然に出来ている鬼頭ファミリーの宴会は、明け方まで続いた

 

 

 

翌朝・・・・

徹夜で宴会をした5人は初日の出を宿の前に出て拝むことになる・・・・

「普通・・・山に登るよねえ・・・」

「かな〜〜り昇りきってませんか?」

「うるさい!文句言うな」

龍之介と宮沢の突っ込みに渇を入れる哲三・・・・

 

「で・・・このまま帰りますか?」

「うん・・・ワシら新幹線で帰るわ。」

「え?」

島津の言葉に伊吹は驚く・・・・・

「宮沢が睡眠不足で運転は無理やし・・・・新幹線でうつらうつらしながら帰ったらええやんか・・・・」

「車は?」

「置いてく。ついでに藤島と若ぼんも置いていくさかい、明日 車で帰って来い」

島津の言葉に哲三は大笑いした・・・・

「信さん・・・今回の旅行の趣旨はそれでしたか」

「それだけやないけどな。ワシにも、宮沢にも、ぼんにも、有意義な旅行やったやろ?」

まだ意味の判っていない約2名・・・・・伊吹と龍之介・・・・・

「大幹部親睦旅行の最後の一日は、新婚旅行に当ててやるつー事や」

「新婚旅行・・・」

つぶやく龍之介に島津は耳打ちする・・・・

「若ぼんが限界に来てるみたいやから一晩2人っきりにしてあげますよ」

「え」

凍りつく龍之介・・・・

「徹夜したから、お前らもこれから一眠りしいや。くれぐれも無理するなよ」

部屋に帰りつつ哲三が笑いつつ言う。

「組長まで・・・・」

伊吹はため息をつく・・・・・

 

 

 

 

早めの朝食を終えて哲三たちはタクシーを呼ぶ・・・・・

「ゆっくりして来い。組のモンには若ぼんが熱出して寝込んで、帰り遅らせることにしとくから・・・・」

そう言いつつ島津は携帯で由布子夫人に電話して京都駅で落ち合う約束をする・・・・・

「あの・・・宮沢の兄さん。一つ聞いていいですか・・・」

タクシーの到着を待ちつつ、伊吹は思い出したように訊く

「なんや・・・」

「兄さんのお姉さんも、兄さんと同じ能力をお持ちなんですか?」

はははは・・・・・・

大笑いを始める宮沢

「まさか。俺は突然変異でこうなったんや・・・・安心せい、俺でも本館からは離れの音なんか聴こえへんから。

でも、念のため、暴れるなよ」

「兄さん・・・・・」

「夕食までは放置するよう言うてあるから・・・観光するなり、まったりするなり・・・・好きにしてええよ〜」

そういい残して、やって来たタクシーに島津は乗り込む。

「気ぃつけて帰っておいで」

哲三と宮沢も乗り込み走り出した・・・・・・・・・・・

 

 

「・・・・置いてかれた・・・・」

あ然とする龍之介・・・・・・・・

「とりあえず・・・寝ましょう・・・」

部屋に向かう伊吹の後を追う龍之介

「え?やだ〜いきなり?」

「違います。睡眠とるんです。3時間ほど寝かしてください。後のことはそれから・・・」

 

新婚旅行は、まずは充電する事からはじまった・・・・・・・・・・・・

 

 

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