道標1

 

 

 

冬休みも終わり、しばらくして龍之介は大学2年生の春を迎えた。

春休みは哲三から”宮沢が笑い死ぬから帰っていくるな”と言われ、東京で過ごす事になる・・・・

 

 

「複雑だなあ・・・・帰ってくるな、なんて言われちゃあ」

夕食後洗いものを済ませて、龍之介はソファーに座る

「組長も気ぃ使ってはるんですよ・・・」

トレイに紅茶を載せて伊吹が龍之介の隣に座る。

「何の気?」

紅茶のカップを受け取りつつ龍之介は訊く

「龍さんに・・・・限界がきて大変になるから。」

ふっー

ため息の龍之介・・・・・

「そうかぁ・・・一週間ももたなかったからねえ」

これからが思いやられる・・・・・・

「京都から帰ってきてからは5日くらい・・・もってましたねえ。」

「べ・・・別に・・・いちゃつけないから とかで限界来たんじゃないよ。なんか伊吹が”組”に取られた気がして、

寂しかったんだよ・・・」

「8代目継いだ後は、ずっと私らは”組”の中で生きることになります。」

うん・・・

龍之介は頷く

「それでも、僕は伊吹とその中で生きる事を選んだ・・・」

伊吹は龍之介の手から、からのカップを取り、流し台に運ぶ・・・・

「後悔しますか?」

カップを洗いつつ後姿で訊く伊吹・・・・

「ううん。でも、なんていうか・・・・3年後も、こんなのかなあ・・・僕・・・」

「・・・今のままでは襲名は・・・ちょっと・・・・」

「だよねえ」

「でも、龍さんは日々成長してはるから大丈夫ですよ。」

 少しつづ男に成長してゆく龍之介を感じる・・・

もう昔のようなあいまいな瞳はしていない。まっすぐ見据える、自信に満ちた目は伸びて行く若木のようだ

「背伸びたかな?」

「・・・その成長と違います・・・?でも」

龍之介に歩み寄り、伊吹は彼を立たせる・・・・

「・・・・・伸びてますよ・・・背。」

伊吹の肩のあたりにあった龍之介の顔がだんだん伊吹の顔の位置に近づいてきた・・・・

「あ!ほんとだ!気付かなかったなあ・・・」

「どうりで・・・龍さん、太ったわけでもないのに最近、やけに重たいなあと思うてたんです。」

複雑な気持ちの龍之介

「え〜〜じゃあ、これ以上背が伸びたら、抱っこは無理なのかな?」

「・・・きついですねえ・・・」

ふうん・・・・・・

ため息の龍之介・・・・

「もし、このまま僕がガテン系になっても嫌わないでね」

目が点になる伊吹・・・・

「ガテン系には・・・なれないと思いますよ・・・どう頑張っても・・・」

かな〜り遅い成長期が始まったらしい

少女漫画から抜け出たような美少年系だった自分が、男っぽくなっていく姿を想像して龍之介の胸に不安がよぎる・・・・

「僕が・・・野郎になったら嫌いになる?」

「は?」

真意がつかめない伊吹は、突然の龍之介の問いかけに戸惑う。

「野郎だと・・・ちゅーしたくなくなるよねえ・・・」

(・・・・・)

思考が停止状態の藤島伊吹・・・・・・・

「伊吹が僕で抜けなくなったらどうしょう・・・」

「!変な事いってないで、さっさと風呂に入ってください!」

眉間にしわを寄せて叫ぶ伊吹・・・・しゅんとなって風呂に向かう龍之介・・・・・

 

(そういえば・・・組の皆、伊吹は下ネタ通じないって言ってたなあ・・・・)

変に潔癖症とも・・・・

バスルームのドアを開けつつ、龍之介は考える・・・・・

(でも・・・ほんとに、抜けないどころか勃たなくなったらどうしよう・・・)

新婚生活の危機である・・・・・・

服を脱いで浴室に入ると、正面の鏡に映る自分の上半身を見詰める・・・・

確かに肩の辺りがガッシリしてきた・・・・骨格がしっかりしてきている・・・・・

(昔は伊吹みたいになりたいって思ったけど、伊吹は同性愛者とかじゃあないじゃん・・・僕が完全男になっちゃったら

嫌われるのかなあ・・・)

 

なまじ、今まで中性的なタイプで来ただけに、龍之介は成長する事に不安を感じる。

 

(でも・・・組長がかわいいっていうのも、なんかだしなあ。やはり、男っぽくならないとねえ・・・)

 

内外共に成長しようとする龍之介・・・・

 

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