京都旅行 4

 

 

宮沢の実家、秋月庵の離れについたのは昼過ぎ・・・・・・

「この時期は家族旅行されるお客さんがほとんどですから、大座敷はあいてますんや・・・」

宮沢に似ても似つかない、愛想のいい女将が案内してくれる。

彼女は宮沢の実姉で婿養子をとり、家業を継いでいる。

 

本館からはかなり離れていた。景色はなかなか風情があっていい・・・・

 

中に入ると付き添いの仲居が茶を入れてくれた。 

「5人さんには広いですか?」

「狭いよりはずっとええよ・・・」             

島津が笑う・・・・

「姉さん、こちら陶芸家の島津信康先生。」

宮沢の紹介に女将は改めて挨拶をする

「それは、そんな有名な方がお越しとは・・・」

「そんなに・・・有名ですか?」

と困り顔である・・・・・

「あと、こちらは私の勤め先の社長と息子さん達です」

息子にされた伊吹・・・・息子のようなもんだが。

 「息子さんたち、どちらも男前ですねえ・・・・社長さん、弟を宜しくお願いします。

10年前にリストラされた時はどうなるかと思いましたが・・・・雇ってくれる会社が見つかって、

ほんま・・・よかったと思うてます」

やくざの組長にも見えるが、何処かの会社の社長にも見える哲三はそのまま社長になった。

事実、宮沢は鬼頭のトップシークレットで他の組員の扱いとは違っていた。

鬼頭組に属さない唯ひとりの人物で、哲三個人に雇われていた。

「いいえ・・・こちらこそ、宮沢君はよくやってくれますんで・・・・」

笑顔の哲三・・・・・

「ほな・・・7時にお夕食お持ちします。離れの横に露天風呂があります、貸切りにしときましたから

皆さんごゆっくりどうぞ」

笑顔で出て行く女将・・・・・・

 

「本当に宮沢さんのお姉さんなの?似てないよ?」

龍之介がつぶやく・・・・・・

「若ぼん、与一ちゃんに似てたら 女将でけへんよ・・・・」

無愛想な女将を想像して大笑いする龍之介・・・

「それはそうと・・・早速、露天風呂行きましょうか・・・・皆さんお疲れやから、湯にでも浸かって疲れ取りましょう」

とりあえず風呂に誘う宮沢・・・・

「幸い、皆男やし、刺青してる者もおらへんし・・・」

島津は部屋の隅に置かれたタオルを一人一人に渡す

 

 

 

 

「こんなメンバーで風呂に入るのも最初で最後かなあ・・・・」

湯船に皆で浸かりながら島津は笑う

「あんまり銭湯は行かんしなあ・・・」

哲三も頷く・・・・・

「でも・・・昔、ワシは ぼんを風呂にいれてやってたなあ・・・」

「子供の時ですやろ」

島津の言葉に哲三は突っ込みを入れる

「藤島も若ぼんが小さい時、風呂に入れてたよなあ・・・・」

島津が自分にふってくるので伊吹は気が気でない。

「今は・・・どうしてる?」

が〜〜〜ん 恐れていた方に話がむかう

「いくら一緒に入ろうって言っても入ってくんないよ〜」

龍之介の言葉に必死に笑いをこらえる宮沢・・・・・

「笑うなよ・・・・与一ちゃん。今度は海外旅行になっても知らんぞ」

とことんおちょくる島津に困っている約二人・・・・・伊吹と宮沢・・・・

「若ぼん、よかったなあ・・・今回一緒やぞ〜」

ハイテンションな島津にあきれはてる哲三・・・・

「信さん。ワシの息子おちょくるのはええ加減にしてください・・・」

 

「でも、皆と一緒で修学旅行みたいで楽しいよ」

鬼頭組という組織の中に入り込んだのは、初めての経験だった。

「8代目修行の為の旅行でもあるんですよこれは。」

島津は笑って言う・・・・・

「気を使ってくれたんだねえ・・・」

龍之介の言葉に島津は笑う・・・・

はははははは・・・大笑いの島津を不審げに見詰める伊吹・・・・・

「はい。若ぼんには、めちゃめちゃ気ぃ使ってます」

 

その言葉の意味は最後の日に判ることになる・・・・・・

 

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