冬休み 3

 

 

とにかく冬休みはやって来た。

「車じゃなくて新幹線で帰るんだ・・・」

一応、グリーン車を予約して乗り込んだ2人・・・・・

「車だと、まったりできないでしょう」

「・・・電車でも膝枕はむりだよ〜」

(それは・・・無理です・・・)

「おとなしく・・・・座っててください」

「うん」

伊吹の肩に頭を乗せて目を瞑る龍之介・・・・・

(まあ・・・こうやって寄り添っていられるからいいや・・・)

 接触している方の龍之介の左手を伊吹はそっと握る。

「気を使ってくれたんだね・・・僕の為に・・・」

瞳を閉じたままつぶやく龍之介に、伊吹は微笑みかける

「私が、まったりしたかったから・・・・です。」

 何も考えずにただ龍之介の隣で。

「伊吹って隠れ煩悩魔人だったんだ・・・」

 「変なキャッチフレーズつけんといてください。・・・あきませんか?」

ふふふふ・・・・・

「いいよ〜僕がもっと開発してあげよう。」

「何をですか・・・」

「煩悩を」

やれやれ・・・・・・

ため息の若頭

「龍さん、キャラクター変わってますよ・・・」

「僕を変えたのは誰なの〜」

「私じゃありません。・・・・ところで、加瀬君は一緒じゃないんですか?」

「妹が来るから・・・・東京見物させてゆっくり帰るみたい」

冬コミに参加する妹の世話を義務付けられている加瀬俊彦

「同人誌やってる・・・・あの妹ですか・・・」

「うん」

加瀬百合子・・・・やたら自分と龍之介に興味を持っていた事を思い出す・・・・・

「なんか・・・今回、主従関係でいくんだって、極道界が舞台で、鬼頭組に取材によく来てたらしいよ」

嫌な予感がする藤島伊吹・・・・・・・

彼の予感は当たっていた・・・・・・

 

 

やくざの組長のひとり息子、鬼瓦幸太郎と世話役の粟島庵の18禁やおい漫画、「薔薇天使症候群」は

至上最高の売れ行きだったと、かな〜〜り後で加瀬から聞くことになる・・・・・・

 

 

それはそうと・・・・・・

「龍さん、私らのことは、わざわざ公開する必要はないと思いますが、隠す必要もないので。そこは組長の判断に任せましょう。あと、南原の事は武士の情です。忘れてください。若頭代理を押し付けた私に文句言いに来たことになってますから・・・」

「うん。」

と頷く龍之介の頭に伊吹の肩の震えが伝わる・・・・・

(?)

笑いをこらえている伊吹をいぶかしげに見詰める龍之介・・・・

「なにさ?」

「あの時の龍さん・・・迫力ありましたよ。言葉は丁寧ですが、内容は”俺のイロに手ぇ出したら承知せんぞ!”ていうもんでしたよねえ・・・」

ふっ・・・・・

龍之介は余裕たっぷりに微笑む

「結構・・・・心の中じゃあ喜んでるんだ〜」

「そうですねえ・・・」

あっさり降伏する伊吹

「あ〜あ。2週間、離れ離れか・・・」

「・・・・いえ、ずっと一緒ですが・・・」

「寝室が」

「龍さん・・・・」

思いつめた伊吹の顔が近づいてくる・・・・

「身体が離れていても、心はいつも一つ。私達は繋がっています。」

「はい。」

何も言えない龍之介・・・

「昨夜まであれだけベタベタしておいて・・・2週間くらいこらえてくださいよ・・・」

「はい。」

 

 

2週間の試練が待ち構えている鬼頭組に突入の龍之介・・・・・

 

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