任侠道 3

 

 

「若ぼんは藤島に情夫(いろ)宣言されて萎えたと?」

島津の作業場に訪れた龍之介・・・・・

伊吹と言い、龍之介と言い、頼るところはここしかないらしい。

「ぼん・・・どうぞ」

由布子が茶を薦める・・・・・

「由布子さんお久しぶりです」

湯のみを受け取りつつ、龍之介は会釈する。

「このまえは、藤島さんがいらしてましたのよ」

「伊吹も来てたんですか?」

「深刻そうに来たわ・・・若ぼんの事、あれこれ考えて埒があかんかったらしい」

(伊吹・・・・)

深刻な龍之介の表情(かお)を見て、島津は笑う・・・・・

「心配せんでもよろしい・・・・もうすでに精神的には、藤島は若ぼんの下僕になっとる。

この先、情夫(いろ)になったとて惜しくもなんともあらへん」

「でも、どうして僕が鬼頭の跡取りだからという理由で、伊吹をそんな立場に追い込めるでしょうか・・・」

は・・・・

島津はあきれる・・・・・・

「こりゃあ、とんだバカップルやなあ・・・」

「信康さん・・・」

由布子がいさめる

「気持ちはわかるが、若ぼん・・要は2人の気持ちとちがいますか?たとえ、藤島にそんな不名誉な呼び名がついたとしても

若ぼんが藤島の事、大事に思うてるんやったら、あいつは情夫(いろ)ちゃいます。若ぼんが藤島の事、

情夫(いろ)と呼んだとしても、その響きには愛おしさが詰まってるはずや。言葉に惑わされたらあかんよ。

大事なんはここです」

と島津は自分の胸を叩いてみせる・・・・・

「信さん・・・・」

はははははは・・・・・・

島津は大笑いする。

「そんなことで悩むとこ見ると、若ぼんも藤島にぞっこんなんやねえ・・・幸せな奴や藤島は」

 「信さん・・・」

困ったように龍之介は頬を赤らめて俯く・・・・・・

「2人の絆は心だけでも充分強い。それでええというならそれでよし。馴れ合いでも寂しさでもなく、

身体の繋がりがほんまに必要なら、それもよし。それは若ぼんが決めること。まあ・・・見るところ・・・

精神愛では済まんようやけどなあ・・・・」

「信さん・・・」

顔を上げられなくなった龍之介・・・・・・・

「焦らんと、ゆっくり考えはったらいいですよ。後悔だけはせんように」

「うん」

「そろそろ・・・・迎えに来るやろ」

「え?」

「うちに若ぼん来てるて電話しといたから」

本当に伊吹は現れた・・・・・・

「な?」

「伊吹・・・」

「話は済みましたか・・」

「うん」

龍之介は立ち上がり、島津に頭を下げる。

「ありがとう信さん。」

「成功を祈ります。」

 

 

 

「ぼん、成功って・・・なんですか?」

帰りの車の中・・・ハンドルを握りつつ、伊吹は尋ねる

「秘密。」

「ぼん!」

ふふふふ・・・・・

(どんな立場をとっても、僕と伊吹の関係は変わらない。世間的にどう呼ばれようと・・・)

その確信があれば・・・・乗り越えられる気がした・・・・・

 

TOP   NEXT 

 

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system