任侠道 2
伊吹と並んでソファーに座っていた龍之介は、コロンと伊吹の膝に頭をのせる・・・・
最近、自然に”まったり”モードに入るテクニックを習得したらしい。
「髪さ、黒に染めようかなあ」
「容姿にこだわらんでええです。なにも、ぼんにやくざのコスプレせーゆうてんのと違いますから。」
「中身が問題だと?」
「はい」
「生き様です。その時その時の・・・」
龍之介は瞳を閉じる・・・・・・
「そうか、だから・・馴れ合いの関係を伊吹は嫌うのか」
そんな龍之介の髪を、伊吹はそっと撫でる・・・・・
「欲しいんなら手に入れたらええです。しかし、自信ないとか、寂しさで手に入れたら、もっと不安になります。
今度は、何時失くすか判らんという恐怖感がきます」
龍之介は伊吹を見上げる・・・・・
「確かに、極道の世界の男女関係は一見、薄利多売に見えるかも知れませんが、じつはそう軽いモンと違うんです。
上下関係は厳しいから上司の情婦(いろ)に手ぇ出したら終りです。ほな、逆は?と言う話ですが、
下克上狙って女差し出す奴もおります。寝首かかれて命取りです。腕がいくら立っても
情関係でつぶれた兄さん達、何度も見てきました・・・・ここがしっかりしてたら、なんも心配ないんです」
「だから伊吹は・・・女嫌いなの?」
「嫌いでも、好きでもないですよ」
自分を見下ろす伊吹の優しい目が、龍之介の心を満たす。
「好きなのは・・・・ぼんだけですから」
伊吹の手が龍之介の頬に触れる・・・・・
「僕も、女の子にちっとも興味なくて、男が好きなホモかなって思って悩んだけど、男も別に好きじゃないんだ。
好きなのは伊吹だけ。」
それが判ったから迷いは無い。と龍之介は思う
「でも・・・伊吹も、あの時の僕みたいになる事ある?」
頬に置かれた伊吹の手に、自分の手を載せて龍之介は訊く。
「それは・・・しょっちゅうです」
動じることなく、平然と笑顔で答える伊吹に、龍之介は疑いの目を向ける・・・・
「ほんと?全然そう見えないけど」
「ぼんは、無意識に誘惑するから・・・」
えっ!
突然ひざから起き上がる龍之介・・・・・
(もしかして・・・これも・・・誘惑してる事になるの?)
「大丈夫ですよ・・・・襲い掛かりませんから・・・」
「?どうして?」
「私はぼんのモンですが、ぼんは私のモンではないから」
伊吹の肩に自分の頭をのせて、龍之介は目を閉じる・・・・
「どうして、お互いがお互いのモノにしあえないの?」
「ぼんは次期組長。私は若頭。そやから、ぼんが私を情夫(いろ)にする覚悟が出来たんなら、いつでもどうぞ・・・・・」
ふー
龍之介は静かに息を吐く
「ずるいよ。そんな事言われたら萎えるよ・・・」
「こういうことは簡単なものやないんです。でも、私は覚悟できてますから。」
「ずるいね。そうやって境界線敷くんだ・・・・」
ふふふ・・・・・・伊吹は笑う
「ぶち破って、乗り越えるのが漢(おとこ)ちゅうモンですよ」
そう・・・それを越えれば・・・・・と伊吹は思う。
(ぼんは、本当の8代目の位置を手に入れる)
「待ってますよ」
おやすみのキスは龍之介の額にされた・・・・・・・・・・・・
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