罠 2

 

 

鬼頭商事東京支店・・・・本店は大阪と言う、不思議な会社

高利貸しというケチな商売は、やめたいという哲三の意志により10年前に新装された

一応・・・東京進出を果たしたと言うべきか・・・・・・

 

「店長・・・ありました。三条さんのデーター」

秘書の安田文子が書類を差し出す。

三条安富・・・・取引先の社長・・・

「何か問題でも?」

今まで、たまにしか顔を出さない組長の留守を守ってきたベテラン秘書、安田文子。

初老の一筋縄ではいかない、豪傑女丈夫・・・・・・・

「息子さん・・・F大でしたよねえ」

「高校は大阪のようですが。あちこちのタレント事務所からスカウトが来るほどの美男子だそうですよ。

お父さんに似なかったんですかねえ・・・・」

(間違いない・・・・)

「問題ありましたか?」

「息子さんが問題なんです」

「は?」

「うちのぼんに付きまとってるんです・・・・」

「龍之介ぼっちゃんも美少年ですからねえ・・・」

「圧力かけに言ってきます」

伊吹の後姿を見つつ文子はつぶやく・・・・・・

「ひと嵐来そう」

 

 

 

朝・・・・校舎の入り口で、三条は龍之介を待っていた・・・・

無視して通り過ぎようとする龍之介に鞄を差し出す。

「昨日の忘れ物・・・・」

無言で鞄を受け取り、去ろうとする龍之介の前に、婚約指輪の通されたチェーンがゆれる・・・・

「これは・・・預かっとくよ・・・また連絡するから、取りに来て。」

さらに不快感が増す龍之介に、背を向けて三条は去ってゆく・・・・・

 

鞄の中身は・・・・そのままだった・・・・手帳に貼られたプリクラも・・・・

しかし・・・携帯には・・・三条の携帯番号が入力されていた・・・・

(この携帯の番号は三条に知られていると見ていい・・・・携帯を変えよう。

指輪は伊吹に謝って、また貰えばいい・・・・もう関わりたくない・・・・・)

そう決意していた・・・・

 

 

 

が・・・・・・

 

 

 

「鬼頭・・・今何してる?」

夜、12時過ぎに携帯に三条から電話があった。

「横に保護者いないよねえ。携帯買い替えようなんて思わないほうがいいよ。

そんなことしたら、保護者に君と僕の仲バラすよ」

「どんな仲だというんですか!」

「キスした仲・・・」

「それはあなたが無理やり・・・」

「”伊吹とは何でも無いんです。好きなのは先輩だけ・・・”

そういって、俺に指輪渡したんだって彼に言いつけるよ」

「伊吹は僕の言う事信じてくれます。先輩の嘘なんて信じません!」

「そうだとしても・・・キスしたのは事実だよ・・・きみは・・赦せるかな・・・もし彼が他の誰かとキスしてたら・・・」

考えても見なかった・・・・そんな事・・・

「無理やりされちゃってたら?」

(薫子さん・・・やりそうだ・・・僕にはおでこなのに・・・他の人と?)

「もう一度だけ会ってくれたら、返してあげるよ。明日、彼は仕事で遅くなる・・その間会ってくれたらいいんだ・・・

7時ごろ、君の部屋に行くよ」

「僕の部屋も・・・ご存知と言う事ですか・・・」

「牧田教授と話していたら、ぽろっと言ったよ・・・また明日・・・・」

 

携帯を置くと、龍之介はため息をつく・・・・

(何で・・伊吹の勤務状況まで知ってるんだ・・・・)

ーぼん、明日は仕事で夜出かけますから・・・・戸締りして先に休んでくださいー

夕食の時の会話・・・・・

 

(明日・・・・ここに来る・・・)

 

 

いやな予感がする・・・・

 

 

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