罠   3

 

 

「ぼん・・・夕食準備しときましたから、温めて食べてください」

午後6時30分・・・伊吹が出て行き際にそういう・・・

「一緒に行ったら・・・ダメ?」

「行きはりますか?」

龍之介を一人残して行くのが心配な伊吹は、同行を進める・・・

が・・・・・

「ううん・・・留守番してる。」

「何か心配事でも?」

「早く帰ってきて・・・」

心配げに伊吹は出て行った・・・・

 

伊吹は三条が何を言っても、きっと自分の言葉を信じてくれるという確信はある。

しかし・・・・

無理やりであっても、三条とキスしたなど、知られたくなかった・・・・

そんな事で、伊吹が自分を嫌ったりはしないだろうでも・・・龍之介は、自分で自分が赦せないのだ・・・

自分で自分を守れなかった事が・・・・・・

脅迫されて、言いなりな自分にもイラついた・・・・

 

携帯が鳴る・・・・・

「鬼頭?今ドアの前だから開けて」

「いいえ・・・帰ってください・・・・伊吹には、ありのまま話します」

「そう・・・じゃあ・・・証拠写真も添付してあげるね・・・」

「なんの・・・」

「あの時、携帯で撮っといたんだ。君とのキスシーン。」

「!」

「開けないと、今すぐ保護者さんの携帯に送るよ・・・・彼の今日の会食ね、うちのオヤジとなんだ。

彼のスケジュールも、携帯番号も、オヤジのスケジュール帳見りゃあ判るんだよ・・・・」

むかつきつつ、龍之介はドアを開けると、三条は自分の携帯を見せる。

「ほら・・・藤島伊吹・・・番号あってるだろ?」

中に入りつつ、後ろで手で鍵をかける・・・・

「で・・・証拠写真というのは?」

はははは・・・・・・笑う三条・・・・

「信じた?」

(コイツ!)

「お茶でもいれてくれないか?」

ずかずかとリビングに押し入り、ソファーに座りつつ三条は言う・・・・

警戒しつつ、龍之介はティーポットに紅茶の葉を入れ湯を注ぐ・・・・・

「お茶菓子は用意してきたよ。スイスのチョコレート・・・」

三条は持ってきた包みをとき、テーブルに置いた・・・

「どうぞ・・・」

龍之介が紅茶のカップを置くと、三条はチョコレートを一つつまんで龍之介の口に入れた。

「!何なんですか!」

チョコレートの中の液体が、口内に広がる。

「ウイスキーボンボン・・・びっくりした?」

龍之介はシンク台まで行き、口内のアルコールを、うがいでゆすいだ・・・

少し流れ込んだウイスキーがのどを焼く・・・

三条はすかさず隠し持っていたブランデーの小瓶を開け、龍之介のカップにこっそり注ぐ・・・・

「アルコール弱いの?ごめん、ごめん・・・・」

と何事も無かったかのように紅茶を飲む・・・・龍之介もつられて紅茶を飲んだ・・・・・

「!!!!」

まさかの二段攻撃に、まともに飲んでしまった龍之介・・・・

「何を入れたんですか!」

「紅茶にはブランデーたらして飲むモンでしょ?君のには、うっかりたくさん入っちゃったけど・・・」

(やられた・・・・)

顔が火照る・・・・眩暈がしてくる・・・・・

「君は見かけによらず腕が立ちそうだから、細工させてもらったよ・・・眠らせてもいいけどそれじゃあ、

初体験の記憶なしで、かわいそうだし・・・・」

「・・こぉ・のぉ・・・」

立ち上がろうとして、よろける龍之介を笑いながら三条は支える・・・・・

「ソファーに横になるといいよ。テーブルは邪魔だから片付けようねえ・・・・」

三条は龍之介をソファーに寝かすとテーブルをダイニングに運んだ。

「・・・どうして・・・こんな事を・・・」

朦朧とする意識と戦いつつ、龍之介は上半身を起こす・・・・

「君は、君だけは僕のものにはならなかった・・・僕を愛さない人はいないはずなのに・・・君だけは・・・」

三条はそう言いつつ、龍之介の目の前にかがむ

(コイツ・・・頭おかしい・・・)

酔っ払っても、心で突っ込む龍之介・・・・・・

「だから決めたんだ。もう一度会えたら、君をモノにすると」

「ざ・・・けんなぁ・・・」

力なく飛ばされた龍之介の拳は、あっけなく三条につかまれてしまった。

「どうして、場所をここにしたかわかる?完全犯行狙うなら、ホテルとかの方が邪魔がはいらないよね・・・」

残酷な笑みを浮かべつつ、三条は龍之介の肩を押してソファーに押し倒した。

「君と保護者の仲を、完全に裂くためだよ・・・」

もがく龍之介の両腕を左手で一まとめに掴み、三条は右手で龍之介のシャツのボタンを外す・・・・

「濡れ場見せ付けられたら、ショックだろうねえ・・・」

(伊吹・・・・・)

あっさりと、こんな奴の罠にはまり込んだ自分に嫌気がさす・・・・・

 

龍之介は決意したように瞳を閉じる・・・・

自らの舌を歯で強く噛んだ・・・・・・・

 

 

その時・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

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