受難の日々1

 

 

あれから、嘘のような平穏な日々を暮らしている龍之介・・・・

ー龍ちゃん・・・お母さんに何かいった?−

昨日、薫子がそう訊いてきた。急に お見合い攻撃が始まったらしい。

ー当分計画は実行できそうに無いわ−

 

伊吹が手を回して操作したらしい・・・・

とにかく・・・日曜のまったりは加瀬に邪魔されているものの、特に問題の無い日々を送っている。

来るべき未来の不安より、今の幸せを噛み締めようと健気にも決意した龍之介・・・・

大学生活も順調・・・・

 

「鬼頭?」

学校の廊下で呼ばれて振り返ると、肩までのワンレングスの黒髪もつややかな美青年がやってくる・・・・・

(誰????)

モデルはだしの麗しさに、びくともしない龍之介

「君もF大に来たんだ?また会えて嬉しいよ。」

(て・・・誰かわかりませんが・・・・)

「忘れたの?生徒会・・・君が生徒会の副会長だった時の・・・」

「ああ・・・生徒会長・・・三条先輩」

花の美男子と異名の、超イケメンだったはず。

この三条雅臣と鬼頭龍之介の生徒会カップルは、稀に見る綺麗どころで伝説となった。

 

しかし・・・・

龍之介にはどうでもいいことだった・・・・・

下手に学年トップだったが故に、生徒会に任命されて、

放課後の伊吹とのまったりタイムを大幅に削られた苦い記憶しかない。

「君も相変わらず美人だね。遠くからでも輝いて見えるよ」

(そうそう、昔からこういうキザな人だった)

やっと思い出した龍之介・・・・・

「サークルに入らない?」

「何の・・・ですか?」

「自作映画・・・俳優を集めているんだ・・・」

「いいです。興味ありません」

もう、これ以上伊吹との時間を奪われたくなかった。

「つれないねえ・・・そういうところが可愛いんだけど」

(げぇ〜〜〜)

笑いが引きつってくる・・・・

「あのお・・・急ぎますんで・・・」

 

駆け出す龍之介・・・・・

高校の頃から、ベタベタしてくるアヤシイ先輩だった・・・・・

「変な人に会っちゃった・・・・」

 

世話焼きの加瀬・・・・ベタついてくる三条先輩・・・・・伊吹を狙う薫子・・・・・

F大に進学した事を初めて後悔した。

 

 

 

これが受難の幕開けであった・・・・

 

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