横恋慕の風景 3

 

 

朝、伊吹を送り出した龍之介は、ソファーに座って放心状態だった。

(これじゃあ、家にいた時と変わらないじゃん。せっかく伊吹を独占出来ると思ったのに・・・)

当てが外れてがっかりしている・・・・テレビをつけるとモーニングショー・・・

(つまんないなあ・・やはり組長継ぐかなあ・・・)

組長になれば、若頭の伊吹は自分の傍にいる・・・・・

(なれるのかな・・・・)

かなり不安である・・・・

(髪の毛、茶色だし・・・・)

やくざ映画で、茶髪の親分など見たこと無い。

(黒に染めるかなあ・・・・いいなあ伊吹は・・・)

もともと真っ黒な髪。力強い瞳・・・背は高い、肩幅はある、腕力もある。カリスマもある。

凄まなくても、あの威圧感・・・・

(こんなでかい目・・・どうしたらいいの・・・・)

手鏡を見詰めつつ、ため息をつく。

ーバンビちゃんー

今までそう言われてきたどんぐり目。

アイドルになるならまだしも・・・・・やくざにバンビ目はいらない。

 

ーぼん・・・ええですか、ぼんが凄むのは無理です。どやすのは周りに任せましょう。

目指すはクール。インテリ極道ですー

 

昨日の晩、伊吹が言っていた。

 

ー冷たい感じさえ出せたらええんですー

 

(伊吹も難しい事言うなあ・・・・)

一応・・・武道は一通り習得していた。

護身術として・・・・なのに、身体が華奢と言うのはどういうことだろう?

声変わりしたのか、してないのか、わからない声も問題だ。

発育不良の疑いで、精密検査にかけられたこともある。が・・・異常はなかった・・・・

女性ホルモンがかなり多いらしい。しかし生殖機能に異常は無かった。

そういう検査にかけられる事、事態が情けない。

 

ーホルモンが活性化したら、突然男らしくなるケースもあります・・・−

 

医者がそう言った。つまり、女性経験とか・・・・

(彼女もいないのに、どうしろと・・・・)

悶々しているうちにチャイムが鳴り、ドアをあけると加瀬がいた。

「龍君。遊びに来たよ」

と入ってくる・・・・・・・

「伊吹さんいないの?」

嬉しそうだ・・・・・

「仕事。でも・・・午前中で帰ってくるから」

早く帰れといいたい龍之介・・・・・

「じゃあ、それまで一緒にいてあげる・・・・お茶入れるね・・チーズケーキ買ってきたから」

ここはおまえん家じゃないと、言いたい龍之介

 

龍之介の葛藤をよそに、お茶する2人・・・・・・・・

「また4年間一緒だね」

(4年間、伊吹と2人暮らしか・・・・・)

加瀬の言葉に、龍之介はふとそう思う・・・・・

「困った事があったら何でも言って。」

「うん・・・」

龍之介は上の空・・・・

(伊吹まだかなあ・・・・・)

「龍君?」

「ああ・・・・ごめん・・加瀬君は大学の寮にいるの?」

「うん。遊びに来ていいよ。放課後にでも。」

「うん・・・」

再び生返事・・・・・・・

 

ドアが開き、伊吹が帰ってくると、龍之介はいきなり目を輝かせて駆け寄る。

「伊吹〜お帰り」

「お友達がお越しですか」

玄関の靴を見て、伊吹は訊く。

「加瀬君来てるよ」

「お邪魔しています」

微笑みつつ、挑戦的な眼差しを向ける加瀬。

(またこいつか・・・・・・)

と思いつつ、にっこり笑う伊吹

「いらっしゃい。お昼食べて行きませんか?」

「お言葉に甘えて・・・」

(え〜〜〜加瀬!!!帰らないの?)

横で不満爆発な龍之介・・・・・・・・・・

「加瀬君、明日の準備とかないの?」   

「無いよ」

昨日のシチューを温めて、野菜サラダ・・・・・食卓を3人で囲む

「龍君、今日予定ある? 映画見に行かない?」

どうにかして、外に連れ出そうとする加瀬

「今日は・・・部屋ですることあるから・・・」

「何?何するの?」

「勉強・・・・」

「じゃあ一緒にしよう」

「いいよ・・・・伊吹に教わるから・・・・」

「藤島さんて・・・大学出てないじゃあないの?」

「お父さんに気を使って行かなかっただけで、大学入れる学力はあるんだよ。伊吹は。」

「ふ〜ん・・・・」

 そのまま沈黙の昼食・・・・・・・

 

食後の洗物を追えた頃、チャイムが鳴り、薫子がやってきた

「藤島さん!おられました?よかった〜映画でも見に行きましょうよ〜」

 

 

 

こうして龍之介、伊吹、加瀬、薫子の4人は団体で映画ツアーに出かけた・・・・・

 

 

まったりの予定は吹っ飛んでしまったのだ・・・・・・・・  

 

   

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