横恋慕の風景 4

 

 

登校第1日目の放課後、龍之介は薫子に呼び出された。牧田薫子教授の部屋に・・・・

「鬼頭君、困った事があったら何でも言ってね。」

そう言って、コーヒーを入れてくれる

「はい」

「それで、藤島さん、好きな人いるの?」

「僕です」

「そういう好きじゃあなくて、女の人・・・」

「いません」

にっこり・・・・・薫子は気をよくして、机の引き出しから洋菓子を出してくる。

「これも食べて」

「どんなタイプの人が好みかなあ・・・」

「女の人、好きじゃないかも知れません。」

「晩熟なのかしら・・・・」

(いえ、僕しか好きじゃないんです・・・・・)

コーヒーを飲みつつ、龍之介は薫子を見る。

「私とか・・・どう?」

「伯母さんが反対してませんでしたか?」

ふっ〜

ため息の薫子・・・・・

「藤島さんは、私の運命の人なのよ!」

(なんで?)

首をかしげる龍之介・・・・・・

「龍ちゃん、手伝ってくれない?」

「すみません。伯母さんが嫌がること、僕できません。」

「夜、2人っきりの時間作ってくれないかなあ・・」

(嫌です。伊吹とのまったりタイム邪魔しないでください)

心では激しく拒否しているが、実際きつい事も言えないままでいる。

「どうするつもりなんですか?」

「既成事実を作る。そしたら、お母さんも仕方なく折れるんじゃないかと・・・」

(大学教授の言う事ですか?)

 「今週末・・・考えてみて・・・」

「何で今週末なんですか?」

「排卵日なの・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

固まる龍之介・・・・・・

「あら・・・妊娠できたら、それに越した事は無いでしょう?」

 

 

とぼとぼと校庭に出ると、校門の前で伊吹が待っていた。

「ぼん・・・どうされましたんや・・・なんかあったんですか?」

「うん・・・」

浮かない顔で車に乗り込む龍之介・・・・

 

マンションについても、龍之介は無言だった。

「どうされたんですか?」

ダイニングテーブルをはさんで、向かい合って座る伊吹と龍之介

「あのね・・・・薫子さんが・・・・・」

「牧田教授がなにか?」

「既成事実作るんだって・・・」

「ぼんとですか?従姉や無いですか!!」

信じられないと言う面持ちで、伊吹は声を荒げる。

「伊吹と・・・」

え????????

首をかしげる藤島伊吹・・・・・・・

「伯母さんが、伊吹との仲を反対してるから、子供でも出来たら結婚赦すかもって、計画してるんだ」

え???????

「僕に手伝えって・・・・」

え〜〜!!!!!

「未成年者に、教育者がなんと言うことを言うんですか!」

怒る伊吹・・・・・

「それに私を無視して、そんな話が進められること自体、おかしいんと違いますか」

「薫子さんのこと・・・どう思う?」

「ぼんの従姉」

「それだけ?女の人として・・・なんか・・・こう・・」

「それだけです」

あっさり即答されて、話が続かない。

「でも・・・迫られたら・・・そういう関係になる?」

「私のこと、何やと思てはるんですか?」

少し・・・ホッとする・・・・

「組長経由で、この事、和子様に伝えましょう。牧田教授には、まっとうな道を歩んでもらわなあきません。」

「僕が告げ口したって言わないでよ・・・」

「当たり前です。ぼんの学校生活が、気まずくなりますさかい」

 

伊吹は立ち上がり、夕食の準備を始める・・・・・

「ねえ・・・伊吹、もしかして女の人に興味ないの?」

伊吹の横でジャガイモの皮を剥きつつ、龍之介は訊く。

「さあ、今まで、ぼんだけ見て生きてきましたから・・・・」

「いつかは・・・結婚するよねえ・・・」

「ぼんも・・・でしょう・・・」

龍之介は首にかけた革紐を外して見せる・・・・・

「これ・・・覚えてる?」

革紐に通されたおもちゃの指輪・・・・

「まだ・・・持ってはったんですか」

「婚約指輪だもの」

あまりの愛しさに眩暈がする

「誕生日のプリクラも保管してあるよ」

言い終わらないうちに、伊吹に抱擁され額に接吻された・・・・

「お礼です」

「・・・・・・」

茹蛸のように真っ赤になった龍之介は、俯いてそっと額に手を当てる・・・・・・

 

子供の頃、おやすみのおでこにチューは、してもらっていた。

伊吹にとっては、その延長線上かもしれない・・・

でも・・・・・

 

龍之介の感じ方は、あの頃とは違っていた。

あの頃無かった胸のドキドキが今、龍之介を支配していた・・・・・

 

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