追憶ー龍之介編ー1

 

 

 

龍之介は夢を見ていた・・・・

7歳になる前・・・紗枝と永遠の別れをしたときの・・・・

昨日の夜、マンションで一人で寝た時は、緊張して夢も見なかったが

伊吹の顔を見て安心した為か、夢の中で泣いていた・・・・・

 

「お母さん・・・いなくなっちゃった・・・」

葬儀の支度で忙しく、誰も構ってくれない中、伊吹はずっと龍之介を抱きしめていた。

何も言わず、ただ抱きしめられて、龍之介は泣き疲れていつか眠っていた・・・・

目覚めたら夜中で布団の中にいた。

横には龍之介の手を握りつつ何時しか眠ってしまった伊吹の姿・・・・・

(伊吹も・・・・お父さん、お母さんいないんだった。僕とおんなじだ・・・)

月の光に照らされて伊吹の横顔が闇の中に浮かぶ・・・・

女の子みたいと言われる自分とは違う、彫りの深い凛々しい横顔に見惚れる。

(僕も伊吹みたいにかっこよくなりたい・・・)

可愛い自分が嫌だった・・・・・・・

(でも・・・・伊吹は・・・可愛いほうが好きかなあ・・・・)

気配に気付いてか伊吹も目覚める・・・

「ぼん・・・起きはったんですか?」

「ねえ・・・伊吹は、僕が可愛い方がいい?かっこいいほうがいい?」

「可愛いくても、かっこよくても、可愛くなくても、かっこ悪くても、ぼんが好きです」

「?」

「可愛いからぼんが好きなんと違うし、かっこいいから好きな訳でもありませんし・・・」

「じゃあ・・・僕の何がすきなの?」

「存在全部です。」

幼い龍之介にはよく判らなかった

「私の傍にいてくれるだけでいい という事です」

(そうか・・・・傍に・・・・)

龍之介は再び眠りにおちた・・・・

 

 

次の場面は小学4年生の頃・・・・・・

学校で”将来の夢”と言う作文を書いた。

伊吹のお嫁さんになること・・・・と書いて、皆にそれは無理だと言われて、迎えに来た伊吹に泣きついた。

「伊吹・・・・僕は伊吹のお嫁さんになれないの?」

真剣に伊吹を問い詰める・・・・・・

「伊吹は僕をお嫁に貰ってくれないの?」

あまりにも真剣な龍之介に伊吹はにっこり微笑む・・・・

「喜んでもらわさせていただきます」

そういって帰る道すがら伊吹は文具店に立ち寄りおもちゃの指輪を買って

龍之介の左手の薬指にはめた。

「婚約指輪です」

 

 

・・・・そこで目覚めた・・・・・・

起き上がって龍之介は首にかけた革紐を外して目の前に掲げる

革紐には、おもちゃの指輪が通されていた・・・・・

「婚約指輪・・・・・伊吹はもう忘れたかな・・・」

自分を傷つけまいとあの時、嫁に貰うといっただろう事は今の龍之介には察しが付く。

男を嫁に貰う男はいない・・・・・

我ながらバカな事を言ったものだと思う・・・・・・

(でも・・・・嫁になりたいなあ・・・・)

 

 

何で嫁なのか理解しかねるが・・・・・・嫁になりたいらしい・・・・・・・

 

 

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