追憶ー龍之介編ー2

 

 

  ルームライトをつけ、龍之介は机の上のシステム手帳を手にする・・・・・

明日は大学の入学説明会・・・・

「9時からか・・・・」

確認した後、手帳に貼ってあるプリクラ写真を見詰める・・・・・

15歳の誕生日から、誕生日ごとに撮ってきた、伊吹とのツーショット

15歳の誕生日・・・・あの日から恒例になった写真撮影。そして・・・水族館デート

 

 

中3の誕生日、学校に伊吹は車で迎えに来た・・・・・

「ぼん。今日は ぼんの誕生日ですから、ぼんの行きたい所行きましょう。」

「え?このまま行くの?制服着て?」

「家の方、取り込んでまして・・・・」

(出入りか・・・・・)

やくざの闘争は日常茶飯事・・・・・

伊吹には、龍之介をとりあえず、危険な鬼頭組500m圏外に連れ出し、保護する事が任務となっている。

 「すみません・・・・今年こそは組中の皆でお祝いしたかったんですが・・・・・」

運転しつつ伊吹はそう言う・・・・・

「いいよ。僕は伊吹と2人の方がいいんだ〜」

反応の無い伊吹に、龍之介は不安になる。が・・・・当の伊吹は実は、声にならないほど感動していたのだ。

 

「何処に行きますか?」

「水族館」

 

 

アフター・フアィブの水族館はデートコースになっていた

「ぼんは・・・女友達とこういうとこにきはるんですか?」

場違いな雰囲気に、いたたまれない伊吹はそう訊いてきた・・・・・

「ううん。友達が、デートでこういう処に行くんだって教えてくれたんだ・・・」

ブルーの水槽には、優雅に舞う熱帯魚・・・・・・

その色彩をバックに微笑む龍之介は、本当に絵になっていた・・・・・

「将来のデートの下見ですか?」

伊吹も微笑む・・・・・・

「ううん・・・・・本番だよ。これが。」

そう言って、龍之介は伊吹の手を握ると歩き出した。

「来年もここに来ようね。その次も・・・・その次も・・・その次も・・・」

「はい。」

 

 

「プレゼントは何がいいですか・・・」

レストランで夕食をとりつつ、伊吹は訊いた。

「う〜〜ん別に・・・・」

物質欲は皆無な龍之介だった・・・・・・・

「あ。デートの締めくくりはプリクラだって伊藤君言ってたなあ・・・・一緒に撮ろう!」

何故か、コギャルを相手に援助交際しているような気になる伊吹・・・・苦笑・・・・・

 

こっぱずかしいのを耐えながら、伊吹は龍之介とツーショットで写真を取る・・・・

「伊吹にもあげるね〜手帳に貼ってね〜」

(いえ・・・人に見られたら、エライ事になりますがな)

戸惑いつつも、結構大事にしまっている・・・・

「来年も一緒に撮ろうね〜その次もその次も・・・・」

「はいはい・・・・」

 

 

 

「今年も行けるかなあ・・・・水族館・・・・」

手帳を枕元に置いて、龍之介は再び眠りについた・・・・・

 

 

 

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