旅立ち2

 

 

「藤島!本気か?」

鬼頭組組長、鬼頭哲三は、明日東京に行くと言う伊吹の言葉に眉根を寄せた・・・・

「ひとり立ちさせるのはよろしいですが、いきなり一人で送って・・・ぼんは自炊も出来ませんのや、

いきなりあんまりや無いですか・・・・」

「荒治療や。わしもいつまでも、あいつの傍にいてやれへん・・・・その時、組長の器もなしに

一人残された龍之介はどないなる?いっそ組たたむ事も考えてるのや・・・」

「何でぼんは一人なんですか?私がおるやないですか!」

哲三は伊吹を見詰めた・・・・・

「お前は・・・龍之介を一生かけて、守るゆうのか?」

「13年前、ここに来た時からそのつもりでした。ですから、私は、ぼんから離れたらあきませんのや。」

「若頭の仕事、放り出していくんか?」

「南原がおります。若頭代理に任命いたしました。」

哲三には初耳だった・・・・・

「いつ・・・任命した?」

「さっき。帰りの車の中で。」

あきれて声もでない哲三・・・・・

「一つ訊いてええか?お前、組と龍之介のどっちか選べ言われたら、どっち選ぶ?」

「ぼんです。組長は組を守ってください。私はぼんを守りますさかい」

ははははは・・・・・・・哲三は笑った。

「判った。行け。わしの息子、お前に託した。」

「ありがとうございます」

伊吹が早々と去った後、奥の間から哲三の秘書である宮沢が現れた・・・・

「いいんですか・・・ぼんの為に簡単に組、捨てるような者を手元に置いておかれるのはどうかと・・」

彼は哲三の参謀としていつも影に潜んで総てを見聞きしている。

「あいつやったら、組がつぶれても、龍之介を傍で支えて共に生きてくれる。わしは安心して組のことだけ考えられる」

「信じられるんですか?」

「ああ、親に捨てられ、親を捨てたあいつがここで唯一、手にしたんが龍之介や。死んでも守り続けるはずや。」

 

 

「兄さん!!」

東京行きの荷造りをする伊吹の元に、南原が怒鳴り込んできた

「明日、東京に行かれるゆうのはほんまですか?」

伊吹は大きな手帳を南原に渡す。

「若頭の仕事、朝から晩まで曜日別に書き留めてあるから、これ見てやってくれ。引継ぎ終わり。」

「兄さん!!!」

「すまんな。俺の下に付いたのが不運やと思って諦めろ。」

時々、とんでもない事をする人だと言う事は知っていた。

特に ぼんに関しては、常識さえも無い事も。

しかし・・・・・・・・

戦闘力といい、統率力といい、カリスマといい、右に出るものはいない・・・・・・

失くすには惜しい人材だ。つまり皆、彼を頼っていたのだ。

「判りました・・・・諦めます」

手帳を手に、とぼとぼと出て行く南原を見て、少し罪悪感を感じる伊吹。

(すまん・・・・)

しかし・・・・譲れない・・・これだけは・・・・・

 

その時・・・・携帯がなった。

「伊吹、マンションに着いたよ〜従姉の薫子さんが色々手伝ってくれたから、心配しないで。お休み〜」

愛しい龍之介の声が聞こえる・・・・・

「ぼん・・・明日、そちらに行きますから、待っててください」

「来るの?伊吹?」

「一緒に暮らしますから・・・・」

「ホント?一緒に暮らせるの?」

「はい。掃除洗濯、料理・・・皆して差し上げますから」

「伊吹〜だ〜〜い好き!」

可愛すぎて軟化する伊吹・・・・・・・

「おやすみなさい。」

「うん。おやすぅ〜〜」

可愛い声を残して切れた電話に、頬擦りする伊吹・・・・・・

 

 

・・・・・・しかし・・・・・・

 

 マンションで・・・・・龍之介と2人暮らし・・・・・・・

 2人っきり・・・・・・

 

(どうしょう〜〜〜〜〜)

 

今頃焦る、藤島伊吹・・・・・・・・

 

 

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