「やはり、かなり溜め込んでましたよね」

忠の放った体液を飲み干して甲斐は事もなげにさらりとそう言う。

「それ、早いって事?と言うか、お前の舌技は凶悪だ」

溜息をついて、忠は甲斐を組み敷く。

「ゆっくり時間かけてほぐすから、慌てるな」

「松田さん・・・」

今まで見たことのない、甘えたような表情の潤んだ瞳の甲斐の顔が忠を見上げた。

「こんな俺は嫌いですか?」

甲斐は、こんな自分を史朗に見せる事が出来なかったのだろう。

「いいや、いい顔してるよ。相手のモノくわえ込んでこれじゃあ、これからどうなるのか

楽しみでゾクゾクする。孝雄さんにもこんな事を?」

甲斐の耳朶に唇を這わせながら忠は耳元でそう囁く。

「いえっ・・・支倉さんにはっ、してもらうだけで・・・」

「でも武田には、してやってたんだ?」

史朗の名を聞いただけで甲斐の肢体はぴくりと跳ね上がった。

「何今、感じた?思い出したりして?でも、もう忘れさせてやるから松田さんじやなくて、忠さんと呼べ

ベッドで松田さんとか呼ばれるほうが萎える」

耳朶から首筋、胸元に唇はだんだん降りてくる。

「閨にまで体裁繕ってちゃ疲れるだろ、それでもいいくらい好きだったんだから、しょうがないけどな」

とうとう、薄く色づいた突起に辿りつき、咥えられた時、甲斐は大きくのけぞった。

「こんなに感度いいのにどうやってたんだ、今まで」

「忠さ・・・ん、いやっ・・・いちいちそんな事・・・集中してくださいっ」

頭を両腕で抱かれて、忠は反省する。ついあれこれ考えてしまう、きっと無意識に自制しているのだと思う。

史朗と別れさせて、長い間片思いしていた甲斐と今、こんな事になっている罪悪感、意図的ではないが

結果的にそうなった。そして、孝雄の愛人だった自分が、孝雄と関係のあった甲斐と関係を結ぶ事も

倫理的にどうかと憚られた。

「すまない、ついつい・・・」

いつまで持ちこたえられるかわからない自制心に苦笑しながら忠は甲斐をうつ伏せに寝かせた。

「ちゃんと裏表可愛がるから、じっとしてろよ」

うなじから肩口、肩甲骨のあたりまでまんべんなく唇を這わせながら、忠は甲斐に集中する。

孝雄と不倫し、ノンケの史朗をモノにした男の背中が、今目の前にある。まるで、追い求めても手に入らず

手からするりとすり抜けて行った美しい蝶のように、甲斐は忠の手の中に存在している。それがまるで夢のようで

その淡い背は今にも消えそうに月光の中で仄めいていた。

「ふぁっ・・・忠さ・・・ん、だめで・・・すっ、そこ・・・」

脇腹を撫でられながら、背中を攻められて、甲斐は身悶えする。自分でも気づかなかった、こんなところに弱点があろうとは。

1ヶ月の禁欲生活も手伝って、ありえないほど快感の強い波が押し寄せてくる。だんだんジタバタ暴れるところまで来て

忠が呆れて後ろから抱きしめた。

「背中弱いのか?なんだか、えらい騒ぎだけど」

「忠さん、もうそろそろ・・・」

「でも大丈夫か、もう何年も使ってないんじゃないのか?」

そう言いながら、それはお互い様な事に忠は気づいた。そして、そう思うと少し緊張したりする。

孝雄が自分に使っていた潤滑ローションがとりあえずあるので、サイドテーブルから取り出し、手に取る。

「忠さんこそ、挿れるのはかなり久しぶりじゃないですか」

甲斐は少し腰を上げて甲斐は煽るように呟く、会社でのクールさは微塵も感じられない湿った妖艶な声を聞き、忠はその声に

酔い始める。

「じゃあ、お互いいつものスタンスで行くか?」

「冗談でしょ、今更・・・」

さらりと受け流された。最初から甲斐は受けのスタンスにいた事は忠も知っているのだ。

「だよな」

少し笑って、忠はローションを甲斐の後孔に塗るとゆっくり指を差し入れる。意外とすんなり、吸い込まれるように

指が飲み込まれてゆくのに少し驚いて忠は顔をあげる。

「浴室で少し、自分で慣らしといたんです、それとか、背中攻めとか重なって・・・」

甲斐が自分とヤル気でいた事に忠は戸惑う。忠の部屋に引き込んだ事が誤解を招いたのか、部屋代に夜のお供などと

思われているのか複雑だった。ゆっくりと中を掻き回すと指に吸い付く様にまとわりついて来る。

「こんな名器、長い間封印してたなんて勿体無いな」

孝雄が夢中になるのも当然かと思われる。

徐々に指を増やして、3本まで入った時、甲斐が待ちきれずに腰をさらに高く上げた。

「忠さん、早く・・・」

今度は忠が緊張する番だ。

「甲斐、ブランクあるから、多めに見てくれよ」

しかし、自身を甲斐の後孔にあてがうと、なんの心配も無くするりと咥え込まれた。が、中はやはりかなりきつい

こんなに締め付けられては、長く持ちそうになかった。

「痛くないか、大丈夫か」

少し動き始めると、甲斐の苦しそうな吐息に、忠はそう訊いた。

「いえ、忠さんやはり、凄いです・・・いいですよ、激しくしても」

甲斐のタフさに半分呆れながら忠は加減しながら徐々に加速を付けながら動きを速める。先にリタイヤしたのは甲斐だった

果てる寸前の締めつけで忠も続いて終焉を迎えた。

ほぼ同時にベッドに倒れ込みながら、忠は甲斐を抱き寄せる。

「やはり俺、お前に嵌まりそうだ」

「その割には今まで、手も出さなかったじゃないですか?ずっと待ってたのに」

待ってたのか?忠は少し頭を起こす。

「だって、俺を部屋に引き入れたのはそういう意味なんじゃないんですか」

そんな誤解を受けていた事を知ると、忠はため息を付く。がすぐに、そんな誤解をしつつも、のこのこと

この部屋に来た甲斐の胸の内に気づく。

「それでいいと思ってお前は、ここに来たということか?」

「まあ、忠さんならタイプなんで、いいかなと」

そう簡単に言われては、あまり嬉しくもない。遊ぶにはお手頃的なものではないか。

しかし、それでもいいと思った、次の本命を見つけるしばらくの間でも、自分が慰めになるのなら付き合う事も

一種の責任の取り方だろう。しかし、真剣に惚れている相手から、そんな言い方をされて、忠は少し落ち込んだ。

「さらに新しい恋を探せなんて、突き放されて自尊心傷つきますよ、同棲のつもりで来たのに、同居でしたなんて」

だから、襲って来たのか・・・甲斐恐るべし・・・

「これでよかったのか?」

後悔されたくは無い、しかし、忠には後悔させない自信がなかった。

「ええ、思った通り相性最高ですね。なんだか、受けの自分がやはりピッタリ来るなって。忠さんもそうでしょ?」

そうかも知れない、本来の自分に戻った気がする。こんなにも、甲斐も自分も本来の自分を偽ってきたのかと

思い直すほどに。

「まあな、お前の中すごくいい。あの吸い込まれるように入って、中で吸い付く感覚が半端ない」

そう言いながら忠は甲斐の背に腕を回してゆっくりさする。

「あっ、ダメですよっ・・・」

すぐに身をよじって悶える甲斐が可愛くて忠は口元が緩む。

「そんなとこ誰も触らなかったのに、忠さん俺の性感帯開発して喜んでます?」

「開発したんじゃなくて、お前はもともとそこが弱かったんだろ?綺麗な背中だったからついついヤッちゃったんだが

大当たりだな〜」

やはり・・・と甲斐は忠にのしかかる。

「忠さん、上手そうだなと思ってたんですよ〜大当たりだ」

忠の下腹部に手を添えて、少し撫でるとさっきまで萎えていたものはだんだん硬さを取り戻す。

「それに、何度でもいけそうですね、もう絶倫の域ですよ」

え?忠は驚いて甲斐を見上げる。すでに2回戦の準備に取り掛かっているのだ。

「ほら、硬さも太さも理想的だし。忠さんも久しぶりでしょ?もっとしたくないですか?」

しかし、答えを聞かずに、甲斐は十分に反り勃った忠のモノに自らの腰を下ろした。

「じっとしていていいですよ、俺が動きますから」

久しぶりに味をしめた甲斐は、忠の上で、狂おしいくらいに夢中で腰を振り続けた。

そんな甲斐を見上げながら、忠はその姿がとても崇高で美しいものに思えて、恍惚の表情を浮かべる甲斐をずっと

見つめていた。きっと、史朗の前では、こんな顔さえ見せてはいないのだろうと思いながら・・・

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