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忠は、うつ伏せの甲斐の背中に舌を這わせる。背骨に沿って上から下にゆっくりと・・・なぜか甲斐は背中が弱点で

普段でも背中に触れられる事を極力避けるのだ。そんな甲斐を見て、忠は背中攻めを始めたのだが、仕事上、数人と

廊下を歩く時にも、甲斐は一番後ろを歩く。そして誰かが自分の後ろに立つ事を拒むのだ。

 ー まるで某スナイパーじゃないか ー と冷やかした事もあるが、忠としては他人に知られてはならない、自分だけが

知る甲斐の弱点でなければならなかった。よって最近では、忠が甲斐のすぐ後ろを守っている。

特に玲二には悟られないよう注意している。彼は受けだが、ドSな性格のため、人の弱点を攻めて悦ぶ癖がある。

それが性的なものであれば、なおさらである。

「おい、じっとしてろ」

悶えて身をよじる甲斐に、忠はわざとそんな無理難題を言う。

「ダメです・・・もう・・」

クールな、デキる無敵の男のこんな姿は、とてもそそるものだと、忠は思う。

「まだだろう?いきなりは危険だぞ?解さないと」

わざと焦らす忠に、甲斐は膝を曲げて腰を高くし、交接の姿勢をとる。

「昨日もシたんだから、大丈夫ですよ・・・」

「え?お前の穴はそんなに緩いのか?」

苦笑しながら忠は常備してあるローションを手に取り、甲斐に塗付けながらゆっくりと中指を差し入れた。

「ふぁっ」

甲斐の肢体がびくりと跳ねた。うねる指にかきまわされ、上体が反り返る。長い時間ゆっくりとじわじわと慣らされ

全身で忠を望み、渇望した頃、ようやくご褒美が与えられた。入口に熱く硬いモノが触れる。じれったくて甲斐は

我知らず腰を振り、それをねだる。そんな甲斐が限りなく愛しい。

「これが欲しかったのか?」

一気に中に押し込まれて、甲斐は全身を震わせた。滞っていた快感が一気に体中を駆け巡り、痺れさせる。

耐え切れず自ら、腰を動かし忠を貪る甲斐を眺めつつ、忠は焦らすように、自分から動く事をしない。甲斐が

自分自身を果てしなく、切ないほど貪欲に求める様を見ながら幸福を感じるのだ。最愛の男に身も世もなく

求められる幸福を・・・

「忠さん・・・突いてください、奥まで」

哀願されて、忠は甲斐の腰を両手で掴み、自らの腰を甲斐に打ち付けた。甲斐の望むものを全力で、すべて与えたかった。

はぁっ・・・はぁっ・・・

苦しい息をしながら、甲斐の白いうなじが揺れている。忠はこのうなじを見る度に、甲斐との行為を思い出し欲情する。

ので、仕事中や人前では、見ないようにしている。まるでパブロフの犬である、この条件反射は限りなく危険である。

いっそ甲斐がロン毛にでもしてくれれば・・・とさえ思う。そろそろ限界が近づいて来た忠は、甲斐に体を密着させて

右手を甲斐の下腹部へと滑らせる。既に甘い蜜を溢れさせて、それは別の生き物のように反り返っていた、そして

忠の手のひらの中で苦しそうに震えるのだ。溢れ出しそうな熱情を内に秘め、しかし恥じらい故に、表に出すことができずにいる

甲斐自身のように、それはただ、忠に解放されるためだけに存在していた。忠には甲斐の全てが愛しい。

甲斐は全てを明かそうとはしないが、隠した想いはすべて身体が語る、身体は絶対嘘を吐かないのだ。忠の手がゆっくりと

甲斐の熱い塊を擦ると同時に、キュッと甲斐の中が蠢き、締めつけが始まる。

「うっ・・・」

忠は耐え切れずに声を上げた。これで甲斐と同時に達するはずだ、手の動きを早めると締めつけもきつくなり、甲斐が蜜を

放出させると同時に、忠も甲斐の中で達した。

ぐったりとした甲斐が、右手を拭っている忠を見上げた。

「シーツ汚しちゃいましたね。いつものことだけど、これ従業員に洗いに出させるんですか?」

「何か問題でもあるか?ルナ・モルフォはラブホテルではないが、新婚旅行のカップルが宿泊する事もある、恋人同士や

夫婦の利用客もある。これくらいでは驚かない」

そういう意味ではなく・・・社長専用のルームのシーツなのだ、しかも甲斐がそこに出入りしている事も皆知っている。

「心配するな、ここのシーツは部屋を出る時に、俺が折りたたんでランドリールームに置いていく。ほかのシーツの

中に混ざればこの部屋のものとはわからんだろう」

「あ、いつも社用のペーパーバッグをお持ちなのは、中にシーツが?」

ここに来る時、忠がいつもルナ・モルフォのロゴ入りのペーパーバックを持っていた事を甲斐は思い出した。

「ここでのポイントは、シーツを回収している職員に廊下で会っても、知らんぷりで通り過ぎることだ。こっそり

洗うシーツの中に人知れず紛れさせる」

なんという完全犯罪だろうか・・・甲斐は言葉を無くす。忠は再びベッドに身を横たえた。

「忠さんは玲二と私を掛け持ちして、本当に元気ですね」

嫌味なのか、素直に感心しているのかわからない甲斐の言葉に、忠は答えに困る。甲斐は玲二が

ただひとりの最愛に巡り会ってくれる事を望んでいる。もっと若い、一緒に人生を歩んで行ける誰かを・・・

「支倉から戻ったら、また一緒に暮らすんですよね」

これは、ヤキモチなのか?忠は甲斐を見つめる。養子縁組をしたら、同じ家に住むことになるだろう。そうすると

その家に甲斐が出入りするのは難しくなるだろう。玲二が以前、忠と暮らしていた時も、甲斐との逢瀬は、ここか

会社のどちらかであった。いや、それより何より、玲二にせがまれる回数が増えるという事にもなる。

「甲斐?入れるの無しになったら、怒るか」

はあ?忠の問いに甲斐は首をかしげる。

「ちゃんとご奉仕して抜いてやるから、あ、大人のおもちゃで代用とか」

忠さん!甲斐に睨まれて忠はショボンとする。

「玲二に散々吸い取られてるんですね?」

妻に浮気を問い詰められた夫のようになってしまい、忠は何も言えない。甲斐は笑って忠を抱きしめた。

「その困った顔、可愛いですよ。私は基本、こうして抱き合って眠れるだけでも満たされてます。入れなきゃ

済まないのは忠さんの方じゃないですか?もう無理〜って時でもがんばってやってませんか」

それは甲斐限定だ。いつ飽きられて捨てられるか、気が気ではないのだ。そこまで忠は甲斐に惚れ抜いてしまったのだ。

しかし、そんなことは甲斐に決して知られたくなかった。

「玲二とはだんだん、子供にするようなハグっぽいものに変えていこうと思っている。陵辱や拘束が愛情だと思っていた玲二が

やっと本当に愛される事を学ぼうとしているんだ」

頷きつつ甲斐は、忠の腕に自分の腕を絡ませる。そんな忠だから、玲二との事も責められないのだ。

「私とは?」

「見れば発情する条件反射・・・」

なんの事だかわからない甲斐は、首をかしげる。どう反応していいのかさえもわからない。

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