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月明かりの差し込む応接室のソファーに腰掛けた慎吾の膝の上に、俊介は向かい合う姿勢で座り抱きついて、気だるい安堵感とまどろみに身を任せていた。

「俊介、近いうちに俺に辞令が出る。親父からの情報なんだが・・・」

え・・・慎吾の首にまわしていた腕を緩めて、俊介は慎吾の顔を覗き込んだ。

「警視庁入りする事になったんだ。ここの署長も後任が決まった」

「それで・・・不安になってたんですか」

「職場が変わることへの不安は微塵もない。ただ、お前と離れる事だけが・・・」

ふっー軽く笑って、俊介は再び慎吾を抱きしめた。

「帰る家が同じなんだから、離れるわけじゃないですよ。でも、おめでとうございます」

ああー頷いて、慎吾は俊介の胸に顔を埋める。馬鹿みたいに依存している自分がありえなくて、それでも、そんな誰かが自分にもいるということが嬉しくて、これも悪くないな・・・などと思える。

「親父も、超心配しててな、覚悟しとけよと言ってきたんだ」

「ここで慎吾さんに出会えてよかった。僕も早く追いかけて、そちらに行きますから」

早くそうなる事を、誰よりも慎吾は願う。

「だから、栄転のご褒美に、このイベントを企画してみたんだけど」

それにしても、凄い大冒険なイベントではないか。

「だから」

と慎吾は目の前にある、俊介のシャツがはだけた胸元を舌でなぞる。釣り上げられた魚のように一瞬、俊介が身体を跳ね上がらせた。

「今日はたっぷり頂いてもいいよな?」

え、あ・・・答える暇もなく、俊介は胸の突起を口に含まれ、身をよじる。

「そこは・・・だめ・・・」

「だんだん、ぷっくりと膨らんできたなあ、こんなの他の奴に見られたら食われるぞ?」

慎吾に舌で舐め上げられて、俊介はたまらずに腰をくねらせる。

「だって、慎吾さんが、そこばかりいじめるから・・・」

「いじめてるんじゃないだろ?可愛がってやってるのに・・・でも、マジやばいぞ?人前で服を脱ぐなよ」

「やあっ・・・そこはもう許してください・・・」

慎吾の肩を押して離れようとする俊介の背に腕をまわして、慎吾は引き寄せた。

「ダメ、俺はお前のここ、大好物なんだから」

ええ・・・涙目になっている俊介を見上げて慎吾は微笑み、くちづける。

「慎吾さん・・・当たってます」

「そうやってお前が腰を擦り付けるから、また元気になっただろ?自分で挿入てごらん」

カッー俊介は自分の顔が熱くなるのが判る。多分耳まで赤くなっているだろう。暗闇なのが幸いして見られる事はないが。

「欲しくないか?これが?」

慎吾は、もうすでに戦闘態勢に入っている、はちきれそうな自身のソレに俊介の手をあてがった。華奢な白い指に恐る恐る触れられただけで、じわりと体液がにじみ出てくる。

俊介は手の中の肉の熱さと硬さに吐息を漏らした。先ほど、これを迎え入れた部分がもう疼き出す・・・

「欲しい・・・です」

「挿入てごらん。満足するまで貪っていいぞ。2発目だから、さっきよりは長持ちすると思う」

熱を帯びた、ぼうっとした頭で俊介は腰を浮かすと、位置を定めてゆっくりと腰を沈めてゆく・・・

あっ・・・こらえても甘い喘ぎが漏れる。目の前の慎吾に、こんな自分を観察されているという羞恥心が全身を痺れさせた。

慎吾を侵食しているのか、貫かれているのか分からないまま、俊介は夢中で腰を振り続けた。欲望を忠実に満たしているその表情が、慎吾には、とても愛おしく思える。

今まで出会った男たちには無い、神々しさが俊介にはある。知れば知るほど好きになり、繋がれば繋がるほど、のめり込んでゆく。

割り切って結んだ過去の男たちとの関係が悔やまれた。達彦ではない、俊介が自分の初恋なのだと確信するほどに、俊介は慎吾にとって特別な存在だった。

そっと、俊介の首筋に唇を這わせつつ、指先で胸をまさぐる。先ほど口に含んだ突起は固く尖っている。

夜毎に繰り返される睦言が、いつも新鮮で刺激的なのは想いの差だろうか・・・

俊介と会うまでの、一夜限りの関係はただ、空腹を満たすための食事のようなものだったような気がする。

心の繋がりが、これほど大きなものだとは思わなかった。世間知らずの少女でもあるまいし、好きな相手としかできない・・・などという考えはなかった。

しかし、今では俊介以外のパートナーは考えられない。そういうものなのだ。

薄い月光の光に、荒波に浮き沈みする小舟のように俊介は、慎吾の上で波打っている。どこか儚げで、しかも情熱的なその姿はとても美しい。日頃のどんな俊介よりも、美しかった。

一番美しい彼の姿を、独り占めしているという優越感に浸りながら、俊介の腰に手を添え、下から突き上げると、のけぞった俊介の首筋が月明かりに照らされて白く映る。

同時に中がきゅっと絡みつくように締め付けられ、慎吾は思わず眉をしかめた。

「ちょ、締め過ぎだ・・・」

「だって、慎吾さんが・・・」

涙目になった俊介が、慎吾の首に腕をまわしてしがみついてきた。抱きしめられた力と同じくらいの力が結合部分にも加わる。

「力抜けよ、これじゃ長くもたない」

「だって、止まらないんです、苦痛ですか?」

開発されているのか、日に日に進化を遂げる俊介の身体に、慎吾は翻弄されている。

(これだから毎日ヤっても足りないくらいなんだ・・・)

はぁっ・・・とうとう慎吾の唇から吐息が漏れた。

「慎吾さん?締まりすぎて痛いですか?」

いや・・・慎吾も俊介の背に腕をまわして、強く抱きしめた。

「ちがっ・・・イイんだ、すごくいい。もう限界・・・」

これほど余裕を無くした事はないと思える程、慎吾は快感に翻弄されて我を失うほどの高みに打ち上げられた。強く抱き合った状態で2人は同時に果てた。

ぐったりとしている俊介をソファーに横たわらせ、慎吾も背もたれに身を委ねる。

「・・・なかなか大それた事をしたなと自分でも思うけど、これが最初で最後だから」

俊介は頷く。もう同じ職場になることはないだろう。次に同じ職場に就く時は、警視総監と副総監という立場になっているかもしれない。

「じゃあ、貴重な思い出、大事にします。ところで・・・さっきの慎吾さん、いつもと違ってたんですが、僕締め付けすぎました?痛くなかったですか?」

「ああ、お前締め過ぎだ。痛かないけど、意識ぶっ飛ぶかと思った」

え・・・心配そうに俊介が上体を起こして慎吾を見る。

「気絶するくらいヨかったってこと、心配するな」

そんな俊介に微笑みでこたえ、慎吾は俊介を抱き寄せる。

今まで乱れた慎吾を、俊介は見たことがない。恍惚の表情は浮かべても、喘いだり、表情を崩すことはなかった。

「僕は慎吾さんは、静かな水面のような人だと思ってましたから、さっきは驚いて・・・」

おいおい・・・慎吾は苦笑する。

「人を不感症扱いするなよ。俺は仏様みたいに達観してないぞ?」

「じゃあ、今まであんまり満足してなかったとか?」

「抑えてたんだ。喘ぐ攻めって萎えるだろ?」

うーん 首をかしげて俊介は考える。慎吾しか知らない彼には返事が出来ないでいる。

「じゃあ、さっきのは悪い事じゃないんですね」

「つーか、お前以外、もう考えられないとさえ思った」

慎吾の肩に頭をもたせかけて、俊介は窓の月を仰ぐ。

「経験不足の僕に、そんな魅力がありましたか・・・」

「経験関係なく、潜在意識がエロいんじゃないか?」

酔っ払って襲い掛かるところや、無意識的な媚態は経験でカバーされるものではないだろう。

「なんだか、嫌ですね、そういうの」

「そうか?昼は清純で、夜は淫乱って、パートナーとしては最高だと思うけど。それより何より、こんなにハマったのはお前だけだ」

それは何よりの勲章かも知れないと俊介は思った。自分に出会うまで、行きずり相手との一夜限りの関係を幾度も繰り返してきた慎吾に太鼓判を押されたのだから。

「とにかく、落ち着いたら宿直室のシャワー使って、着替えて休め。着替え持ってきておいたから。明日も仕事だし・・・」

そう、明日も仕事・・・頷いて俊介は身を起こした。そして、よろける・・・

「膝が笑って立てません・・・」

「だから、やりすぎだって・・・ソコも、もう勃たないだろ?」

慎吾に抱き起こされて、再び膝の上に座らされた俊介は苦笑した。

「とは思いますが、これ以上は無理なんで、刺激しないでください」

そう言いつつ、俊介は上体を慎吾に預けた。

「しょうがないな〜シャワー室に運んで、洗ってやるか・・・」

ええ・・・答える暇もなく俊介は抱え上げられ、シャワー室まで運ばれる羽目になった・・・

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