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「ちょっ・・・デスク発言は本気で言ってたんですか!」

鍵をかけた暗闇の署長室で、いきなり署長の机に押し倒された俊介が叫ぶ。

「こういうの男の夢でしょ?」

どこが?と心で突っ込みつつ、俊介はじたばた抵抗する。

すぐ横には机に置かれたスタンドが慎吾の姿を照らしている。

おそらく、自分の姿も慎吾には丸見えなのだと思うと、急に羞恥心が湧いてきた。

「灯りは消してください。それに、皺になるからスーツは脱いで・・・」

「皺になるから・・・脱ぐのか?」

ゆっくりと慎吾の顔が近づいてくる。彫りの深い美しい男の顔に、俊介が見とれた瞬間に唇は奪われた。

「着替えは持ってきたから大丈夫。せっかくの職場プレイなんだから、着衣プレイでないと・・・」

確かに、スタンドのライトに照らされたデスクで全裸になるなんて抵抗がある。しかし・・・

「いつも職場で、お前に合う度に妄想してたよ。キャリアで優等生の稲葉俊介警部を愛撫して喘がせたいって」

「慎吾さんが仕事中にそんな事・・・」

考えるはずがないと、俊介は思っていた。

俊介のネクタイを解くと、ワイシャツのボタンは外さずに、慎吾は手をシャツの中にくぐらせる。

「お前があんまり可愛いから、意識をオフれないんだ。でも悟られまいとオフったフリをしてきた」

シャツの中の手は胸元をまさぐり、突起を探り当てた。

「俺をこれほどまでに翻弄したのは、お前が初めてだ。信じるか?」

はい・・・唇を噛んで刺激に耐えながら俊介は頷く。慎吾は恋や欲望に溺れるタイプでない事を、彼はよく知っていた。

「だから、責任取れ。ずっと俺の傍にいろ」

「離れません、いえ、絶対貴方を離さない」

慎吾の背に腕を回して俊介はしがみつく。慎吾は俊介の上体を起き上がらせると、俊介を抱きしめる。

「お前が傍に居てくれるなら、俺はどこまでも行ける。自信と勇気はお前がくれる・・・」

「ついていきますから、どこまでも」

慎吾は頷いて、俊介のベルトを外して彼の足のあいだに屈む。

「慎吾さん!」

俊介の抵抗は虚しく、スラックスの中から、いとも簡単にそれは取り出された。

「窮屈そうだから、開放して上げないと。いつも反応いいね〜一回出しとかないと・・・」

「え、あっ・・・」

後ろに仰け反りそうなのを、俊介は腕をついてかろうじて支えた。

こんな間近で、ライトのあかりの元で、自らの体の一部を慎吾に咥え込まれて思わず顔を背けた。

その羞恥心ゆえに快感が増し、慎吾の舌に導かれるまま、あっけなく俊介は達した。

「すごくいい光景なんだけど・・・俊介のイク顔まともに見ちゃった・・・」

「慎吾さん・・・酷い・・うわあ!」

慣れた手つきで、俊介に、するりとスラックスと下着を剥ぎ取られた。

「着衣プレイでも、これは脱がないとできないよね?」

ワイシャツを着たままで、下半身を露出した状態は、全裸よりも、ある意味恥ずかしい。

しかも、慎吾は上着はとりあえず脱いでハンガーにかけてはあるが、ネクタイを緩めただけで、いつもの勤務時の服装である。

「こんな事、他の相手ともしてたんですか?」

慎吾を見上げて、困り顔の俊介は、か細い声で訊いてみる。

「まさか〜。そこまで凝った事は一度も無い。相手も割り切って慣れたもんだから、俊介みたいに恥じらったり、たどたどしい態度は見せないし」

楽しんでるんですか・・・僕を辱めて・・・俊介は更に渋い表情を向ける。

「可愛いし、愛しい。本当に俺って愛されてるんだなあ・・・って思う。とにかく、俊介のそういうところがエロい」

身を屈めて耳元で囁かれると、身体の芯がとろけそうな感覚を覚える。

「僕は特別なんだ・・・」

「当たり前だ。俺の初恋なんだから」

そう微笑んで、デスクに置かれていたボトルを手に取ると、慎吾は自分の目の前にある、俊介の足の付け根に、中の液体をそっと垂らす。

ひやっ・・・ひやりとした感触と、とろりとしたぬめりを同時に感じて、俊介は腰を浮かした。

「だから〜ローションにもいいかげん慣れてくれないかな・・・・いつものことなんだけど」

苦笑する慎吾の言葉に、顔が火照る。本当にいつまでも慣れない自分が恥ずかしい。

「いい、そういう一つ一つにそそられて、お前にはハマっちまったんだから責任は取れよ?」

指で蕾を刺激されながら、俊介は改めて、自分にそんな特技があったのか・・・などと思う。

俊介自身、慎吾に出会うまでは、自分がこんなに性に貪欲になるとは思ってもみなかった。

大学時代、大勢の友達の中には女友達もいたが、友達の域を超えることはなく、異性として考えたこともなかった。

何の性体験もないまま社会人になり、ずっとこのままのような気がしていた頃、慎吾に一目惚れをした。

相手が女でなく男であった事に戸惑いつつも、気持ちを抑えきれずに、どんどん慎吾に接近していく、怖いもの知らずな自分・・・

「あっ・・・」

そんな思考が突然吹っ飛んだ。慎吾の指が俊介の中に滑り込んできたのだ。

「集中しないか・・・」

軽く叱られて、俊介は意識を戻す。

(初恋だなんて言うくらいだから、慎吾さんは、もう八神さんの事は決着をつけたんだ・・・)

再び、慎吾を見上げると、微笑む。幸せだと感じることができた。

「慎吾さん・・・愛してる・・・」

「そういうこと言うと、俺が限界になるんだけど・・・」

慎吾は俊介の手を取ると、自分のスラックスの腰のあたりをさぐらせた。

「慎吾さん・・・僕が・・・」

上体を起こして俊介はベルトを外し、慎吾の膨張しているものを取り出し顔を近づけた。

「あ、いい、マジで限界なんだ。中に入りたい」

”中に入りたい”の部分を耳元で囁かれて、俊介はかっと顔を赤らめた。体の芯が火照るのを感じる。

「どうぞ・・・」

俊介が、起こしていた上体を再びデスクに預けると、慎吾は彼の両足を自分の肩に抱え上げて、その間に身を割り込ませた。

(これじゃ丸見えだ・・・)

パニくる俊介にお構いなしに、慎吾はゆっくりと、俊介の中に侵入してきた。

「下のお口は慣れてきたな。すんなり受け入れてくれる」

根元まで入れて、慎吾はそう呟く。

「本当は、欲しくて待ち遠しかった?」

からかうような微笑みで、ゆっくりと腰を打ち付けて来る慎吾に、答える余裕はもう、俊介にはない。

「そんなあ・・・あっ・・・慎吾さ・・・」

「さっきまで考え事するほど余裕満々だったのに?俊ちゃんは指よりこっちのほうがいいのかな・・・」

からかわれても、もう何も言い返せずにいる俊介に、慎吾はふと真剣な表情を見せ、激しく動き始めた。

「俺も、もう、余裕無いから」

余裕を無くしている慎吾を、俊介は愛しいと感じる。自分に夢中になってくれているという優越感と、征服感と一体感・・・そんなもので心が満たされる。

その後は・・・何も考えられない、ただ、押し寄せる波に身を任せていた。

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