17

 

 

「最近、行きと帰りが一緒なだけで、別々だよな・・・俺達」

夕食後の晩酌で慎吾がつぶやく

「仕方ないですよ、慎吾さんは署長の引継ぎがあるんですから・・・」

しかし、俊介は少しほっとしている。

うっかり慎吾を”慎吾さん”と呼んでしまいそうで緊張しているのだから・・・

「まあ、いいか。張り込みであの、動く密室でお前と二人でいる自信ないから。」

え・・まさか・・・俊介は苦笑する

「俺、公私混同はしないから。」

はい・・俊介もそうありたいと思う。

「てか、もうそのくらいにして寝ないか?お前、酔ってねえか?」

風呂上りの一杯のつもりがもう4杯くらいになっていた」

「ああ・・・そうですね・・・顔が熱いなあ・・」

「つーか、全身真っ赤なんじゃないか・・・」

「なかなかアルコールに強くなれませんねえ」

「寝るんじゃね?そのまま?」

「うん・・・眠くなってきました・・」

おい・・・・俺を置いて寝るなよ・・・

「なんで、今日はこんなに飲むんだ?もしかして、ストレス?俺がいないから、お前をいじめる奴とかいるのか?」

「別にいじめられませんけど・・・慎吾さんが傍にいないと気が抜けちゃって、こんな依存症の自分が嫌だなあとか・・」

「俺も気抜けてるよ。それも当たり前で、しょうがないと思わないとなあ。」

「自分がこんなにダメダメとは思わなかった。かなりイカレてしまいました」

「それは光栄だな」

とうの昔に、慎吾は敗北感を味わっていた。

相手よりも、より深く相手を愛してしまった自分に・・・

しかし、俊介も同時に、そんな敗北感を感じていたとは。

「だからって、自棄酒しても解決しないだろうが・・・」

気持ちはわからないでもない。慎吾自身、仕事中、俊介と離れている事に耐えられないのだから。

こんなに、ありえないほど好きになってしまって、壊れてしまった感は否めない。

「なんでも、初めて感じる感覚は少し違和感があって、怖いよな。でも認めてしまえばなんでもない」

そう、とりあえず、仕事を終えて帰れば朝まで一緒にいれるのだから・・・

「頭のいいヤツは色々考えすぎてややこしいな。依存すりゃあいいじゃないか?依存させてやるから〜」

そう言って席を立つと、慎吾は俊介を抱きかかえる。

「もう寝ろ」

と寝室に運ぶ。

こんなにも、離れたくないと思える誰かに出会えた事が奇跡だった。

(イカレてるのは俺の方だ)

部屋の明かりを消して、慎吾もベッドに入る。

俊介の髪を撫でながら、苦笑する

(寝オチってありかよ・・・耐えて帰ってきたのに・・)

「慎吾さん・・・」

いつかのごとく突然抱きついてくる俊介。

(はじまった・・・・)

いつかのごとく、キスしてくる。

このままどうするのか、最後まで見てやろうなどという気になってしまった。

すると、いきなりのしかかってきて、慎吾のパジャマを脱がし始める・・・

(おい・・・)

うつろな俊介の瞳が近づいてきたかと思うと、慎吾の首筋に舌を這わせる。

(酔っ払って、別人って、何事・・・)

だんだん舌は降りてきて、今度は肩口に吸い付きはじめる

こういうことは、し慣れていても、あまりされた事がない慎吾は戸惑う。

受けに襲われるなどという経験は今までなかった。

肩口から胸に・・・

泣き上戸、笑い上戸というのは聞くが、襲い上戸は初めてだった。

しかも、あの俊介が、別人のようになっている・・・

あちこち、強く吸われて、痕がつくのが心配になる。

(どこまで行く気なんだ・・・)

かなり冷静な頭で俊介を観察していた。

が、その反面、見たことも無い俊介の媚態に心を奪われる。

あばら骨の辺りまでくだり、時々わき腹を舌でくすぐられる・・

(おい・・・)

だんだん微妙な感覚が生まれる

(この先は・・)

臍まで下りてきた時、ふと、再び俊介の顔が近づいてきた。

これ以上は進まなかった、という安堵感でほっとしつつ、再び、俊介の唇と舌を受け入れる。

散々貪られた後、俊介の妖しげな瞳に遭遇した。

「慎吾さんは僕だけのものですから・・・」

恍惚としたその微笑に心を奪われた瞬間、俊介の手がすばやく慎吾のパジャマのズボンを下ろした。

「え!」

あまりに器用な早業だった。あろう事か動揺してしまった。

「俊介・・・」

肩をつかんでみるが、以前のように眠りに落ちる事はない。

 外気に晒された慎吾の下腹部の、熱を持つ部分を俊介の滑らかな手のひらが覆う。

濃厚なキスと唇の愛撫で、我知らずそこはすでに反応していた。

「あっ・・」

なまめかしく動く指先に思わず声が漏れる

 まさか、予想もできない俊介の行動にパニック状態のまま、慎吾はその後をそのまま、俊介に任せてしまった。

「愛しています・・・貴方のすべてを・・」

伏し目がちな俊介の表情に見とれているうちに、手の中のものは口に含まれた。

湿った生暖かい感覚に襲われる。

チロチロとうごめく舌の動きに息をのむ。

寝オチを覚悟した直後の、この急展開は、どうしたものか・・・

(いくらなんでも、俊介に襲われるとは思わなかったな)

などと考えている余裕も、そろそろなくなってきた。

「やめろ・・・もう・・」

そろそろ限界が来る・・・

しかし、俊介は構わず攻め続ける。

「っはぁっ・・・」

慎吾の息が漏れると同時に、俊介は口内のものを飲み干した。

「おい・・・飲むなよ・・出せよ?」

「貴方のものは、すべて僕の中に入るべきなんです」

微笑みつつ、そうつぶやいて、とうとう俊介は慎吾の胸の上で眠りにつく。

一体なにが起こったんだ・・・・

未だにパニックな慎吾はしかし、俊介の身体の重みを胸に感じつつ、眠りに襲われる。

(俊介・・・)

腕を俊介の背にまわして抱きしめると、とりあえず眠る事にした。

 

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