秘密     イラスト  サイト名/@MK 管理人/mk様 

「樹(いつき)・・・」
ガラス越しに、芝生の広い庭を眺めていた僕は、彼の声に振り返った。
その瞬間、彼の顔が迫り、僕はテラスに面したガラス戸に追い詰められる。
サッー 
カーテンが僕の背中を通過して、広いリビングの半分は日光を遮断され
影となった。
「義兄さん?」

彼は、僕の姉の夫。
ある日曜日、僕は姉の新居を訪ね、昼食をご馳走になり、ゆったりとくつろいでいた。
郊外にある、庭付きの一戸建ての新居。
エリートサラリーマンとの幸せな新婚生活・・・
幸せそうな姉の姿が、羨ましくてたまらなかった。
しかし、姉が洗濯物を干しに庭に出た瞬間、ゆったり流れていた空気の流れが
突然変わった。

「ずっと、お前の事が好きだった・・・出会った時から」
思いもしなかった、義兄の告白。
そんな事・・・あるはずが無い。僕は首を振る。

彼は、大学の友人の紹介で、姉と交際を始めた。
長身のスマートなシルエット、一流大学に通う才色兼備な彼に、姉は一目惚れし
交際が始まった。
デートは、いつも我が家。高校生だった僕の勉強まで見てくれて、家族ぐるみの
つきあいで、実の兄のように彼を慕っているうちに、僕の想いは、いつしか恋慕へと
変化していった。
そして、叶うはずもない片思いは3年後、彼が、僕の姉と結婚した事で終結した
はずだった。



「愛している。もう、離さない・・・」
顎の下に指を添えて、持ち上げられた僕の顔に、彼の顔がゆっくり近づいてくる。
憂いを秘めた彼の瞳、涼しげに通った鼻筋、強さをたたえた口元・・・
僕も、彼を愛していた。片思いしていた彼を、実の姉に奪われた・・・そう思っていた。
突然の彼の告白に動揺しながらも僕は、拒む事が出来ないまま、気がつけば彼の唇を
受け止めていた。
「でも何故、姉さんと結婚したのですか」
「誰にも疑われずに、お前とずっと繋がっている方法は、これしか無かったから」
姉との結婚は、僕との逢瀬の言い訳のための、周到に仕組まれた罠だった。
でもそれは、実の姉を裏切る行為だ。義理の兄弟で、こんな事は許されない。
姉は何も知らない。今、ガラスの向こう側で、僕に背を向けて洗濯物を干している。
「もう、お前は逃げられないよ」
そう囁いて、もう一度、唇は重ねられた。今度はもっと深く・・・
この人からは逃げられない・・・どんなに罪の意識に囚われても、後悔しても。
するりと侵入してきた彼の舌先を、僕は受け入れてしまった。
そして自分から舌を絡めた。
ショートする思考回路、流れ落ちる涙。
気持ちとは裏腹に僕の腕は、彼をかき抱いている。
(好きです・・・貴方が・・・)
胸に閉じ込めた禁断の愛の言葉。
はずされてゆくシャツのボタン、露わになった首筋に彼の唇が這い回る。
「樹・・」
うわずった声で名を呼ばれ、身体の中心が痺れて、もう何もかもがどうでもよくなる。
無防備になった僕の、シャツの裾から彼のしなやかな長い指先がするりと滑り込み
胸元をまさぐる。
「っはあっ・・」
のけぞった僕の首筋を、彼は強く吸いたてた。
痕がついたかもしれない、ちゃんと服で隠れるだろうか?
そんな心配を、頭の隅でしている。
「こんなところで・・・嫌です・・」
「じゃあ、寝室なら、いいのか?」
余裕たっぷりの黒い瞳に見据えられて、僕は彼から顔を背ける。
きっと僕は今、物欲しそうな顔をしている、拒絶の言葉など意味を持たない。
そして彼は、こんな危険なシチュエーションを楽しんでいるのだ。
「意地悪しないで・・・義兄さん」
残酷な、僕の愛しい人は、余裕の笑みを浮かべる。
「意地悪だなんて・・・樹のここは、嫌じゃないみたいだけど?」
庭に姉がいる、カーテンをひけば、僕と義兄との痴態が露わになる。
そんな非常事態の中で、浅ましくも僕の身体は反応していた。
スラックスの上から、彼はそれを確認して、さらにそれを煽る。
「苦しそうだから、開放してあげないと・・・」
ガチャガチャとベルトを外す音が、僕の朦朧とした意識を覚醒する。
かすかな理性が快楽を拒絶した・・・
「やめてください!」
やっとの思いで、彼の胸を自分の身体から引き離す。
ずっと、彼に愛されたいという、叶わぬを夢を見てきたけれど、でも、これは違う。
まるで悪夢だ。
そんな僕の葛藤を嘲笑い、僕の前にかがんで、彼は僕の衣服をずらし、下腹部に
顔を埋める。
「やめて・・・」
身体の一番敏感な部分を弄りまわされる。唇で・・・舌で・・・
姉がいつ来るか判らないのに・・・こんな姿、見られたくないのに。
「義兄さん・・・酷い・・・」
涙が一筋流れる。
しかし、その涙は偽りの色に満ちていた。
一番酷いのは僕だ。被害者を装って、まんまと義兄を寝取ろうとしている。
本当は、これは僕が望んでいた事なのに・・・
総てを義兄のせいにして、綺麗なままでいようとしている僕は、紛れもなく共犯者だ。
すでに身体中が彼を欲し、受け入れているにもかかわらず、心でもがき、身悶えすれば
するほど快楽の波にさらわれていった。

「はぅぁっ・・・」
執拗に攻められて、僕は、彼の口内で達してしまった。
それを造作も無く、すんなりと飲み干した彼。
そして、脱力してくずおれる僕を、彼は余裕の笑みで抱きとめた。
「樹は、本当に可愛いな・・・」
耳元で囁きながら、僕の乱れた服装を慣れた手つきで元に戻す。
あっとい間に、先ほどの淫行の痕跡は、跡形も無くなく消え去った。
その後・・・・
「雅之さん、どうしたの?」
洗濯物を干し終えた姉が入ってきた。
かろうじて体裁を整え、ほっとしながらも、僕の罪悪感は拭いきれない。
「樹君が、急に貧血で倒れたんだ。寝室に運ぶよ」
何も無かったような顔で、僕を抱え、姉に背を向けて彼はリビングを出る。

「危なかったね。バレなくてよかった。次はちゃんと奈津美のいない所で、しようね」
寝室に入り、ベッドに僕を下ろして、彼はそう言って微笑む。
「もう、やめてください、こんな事は」
僕は、心にも無い事を言った。彼をモノにするために。
「やめられるの?俺の事、忘れられる?」
そう言って、肩にまわされた自信たっぷりな彼の腕を、僕は振り払う。
おそらく、逃げれば逃げるほど、彼は僕を追ってくるだろう。
追われたい、強引に奪われたいー
そんな、背徳の思いに支配されてしまった自分を感じる。
引き返す事なんて、もう出来ない。

だから
絶対言ってやらない。


”愛している”なんて。

END

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これは、いつもお世話になっておりますmk様のサイト@MK

【妄想人に捧ぐ48のエロお題】という企画をされていてお題に沿ったSSを募集されておられたので

私も1つだけ応募させていただきました。

サイト@MKのodaiにて、閲覧できます。

mk様の素敵なイラストと、他の作家さん達の素敵なSSもご覧になれますのでぜひ、足をお運びくださいませ。

自分の作文に素敵なイラストをつけていただけただけで、有頂天な夕月です。

mk様、色使いの美しさといい、アングルといい、構図といい・・・超素敵なイラストありがとうございます

とっても美しいイラストでうっとりします。

あ・・お題コーナーはR18です。


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