第18話 再会
「ここで何をしているんですか・・・」
後ろから湿った懐かしい、優しい声がした。
振返った夢幻斎は静かに微笑んだ
「貴方をお待ちしておりました」
スーツ姿の背の高い華奢な印象の、眼鏡をかけた優男がにっこり笑った
「私が誰だか判りますか?」
夢幻斎の瞳から涙がこぼれた・・・・・
「また泣いていますねえ・・・・・・泣き虫史也君」
男は止まらない涙をどうする事も出来ずにいる夢幻斎の腕を掴み、木の陰に連れ込む
(え?)
瞬間相手の顔が近づき唇が触れた・・・・・・・・・・・
「政宗様!!!!」
痴漢にあった娘のように叫ぶ夢幻斎・・・その口を手で塞ぐ男・・・
「人が見るでしょう?だめですよ、この続きは寝室で。」
嗜好回路がショート寸前な夢幻斎に笑いかける・・・・
「それに・・・今は政宗じゃなくて政明です」
変わり果てた政宗の姿に今更ながら言葉も出ない夢幻斎・・・・・・
「泣き止みましたね。お元気でしたか?」
明るい笑顔はそのままだった・・・・・夢幻斎と並んで政明は木にもたれ、煙草を取り出す・・・・
夢幻斎はすかさずライターを取り出し火をつける・・・・
「それ・・・・まだ持ってたんですか・・・」
政宗のライター・・・・・・・・
政明は自分のライターを夢幻斎に渡す。
「持っててください。これからは史也君が私のライター。」
政宗のライター・・・政明のライター・・・夢幻斎の手には二つのライターが光る。
二人は月光館にむかって歩き出す・・・・・
「さっきから気になってたんですが・・・・史也君て・・・」
「昔・・・名前で呼んで欲しいといわれたことがありましたから・・・今度生まれ変わったら史也君て呼ぼうと決めてたんです。」
えっー
(そんなことまで覚えてなくていいです・・・・・)
俯く夢幻斎に微笑みかける政明。
「お気に召しませんか?」
「主従関係で・・・・史也君は・・・どうかと・・・」
政明は人差し指を夢幻斎の目の前で立てて左右に振る
「古いです。今時、敬語の主従関係なんて埃被ってます。新世代主従はフレンドリーなんですよ。だから私のことも政明さんとお呼びなさい」
戸惑いながらも”史也君”その響きが夢幻斎の胸をくすぐる・・・・
「さぁ・・・50年分語り明かしましょう」
政明が月光館のドアを開ける・・・・・止まっていた夢幻斎の時間が動き出す・・・・
これからは政明のとなりで歳をとってゆく。
「これからはずっと一緒ですよ。」
政明が差し出した手の上に自分の手を重ね夢幻斎は微笑んだ・・・・
「お帰りなさい、政明さん。」
完
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