第6話 離脱
朝、朝食の準備に出勤してきた茜は驚いた。
「政宗様!」
客室のソファーに横たわる政宗の姿を発見したのだ。
「あの後、来られてお話をしていると、突然気を失われて」
「夜通し、付き添っておられましたの?」
「私が傍にいれば、気の補充はすぐ出来ますから」
「大丈夫なんですか?」
「ええ。でも最近、私といい政宗様といい・・・」
確かに、何かが起こっている。二人が繋がると言う事は、予想以上に大掛かりな事だったらしい・・・・・
茜はとりあえず朝食の支度を始めた。
昨夜、土御門の先代には報告してある。来栖にも昨日のことは大まかに聞いた。夢幻斎は、矢守和磨が気にかかった。
自分自身が土御門政宗と繋がった本当の意味を。
静かに、政宗は目を開いた。
「夢幻斎・・・」
「気がつかれましたか」
「夢を・・・見ていた」
「夢?」
「高彬公の・・・」
起き上がって政宗は、夢幻歳の肩を掴んだ。
「お前は・・・俺が守る。今度こそ絶対に。」
迷いは無くなった。強い想いだけが総てだった。
「お食事してくださ〜い」
茜がそう呼びかけつつ現れた。
「外泊しちまった。奥さん怒るかなあ」
「連絡しておきましたから・・・先代に。」
「すまんな。まっすぐ帰らないで、寄り道したのがいけなかったらしい」
しかし、高彬の夢により、政宗は覚醒しつつあった。
テーブルを挟んで政宗は、夢幻斎と朝食をとる。
「夢幻斎様・・・お疲れですね」
茜が心配して覗き込む。
「俺のせいで眠れなかっただろう?」
「いいえ・・・これくらい何でもありません。」
「そうですよねえ。一晩中一緒にいられたのなら、それでも幸せですよね」
ありえないほど長い間、夢幻斎は政宗のすぐ傍にいた。おそらく、もうこのような事は二度と無いだろう。
「お心を決められたようですね」
「ああ。もう迷わない。」
迷う暇も無い。願いが総てだった。
信じている・・・・自分の能力(ちから)を・・・・夢幻斎の能力(ちから)を。
「なあ、守るものが無い者と、守りたいものがある者とでは、どちらが強いと思う?」
スクランブルエッグを突付きつつ、政宗は訊く。バターロールをちぎりつつ、夢幻斎は答える。
「戦いの本質は、何かを守る為・・・守るもの無しには限界が来ましょう」
(そう、守るものがある限り・・・俺は負けるわけにいかない)
前だけを見て闘う。それだけだった・・・・
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