第4話 尽きぬ願い     

 

 

  傷の手当てを済ませて、葉羽瑠は夕食を政宗と摂った。

「和磨の様子が、変ではありませんでしたか?」

葉羽瑠が切り出す。

「俺と対決するのを避けていたようですが、まさか!パワーダウンしているのでは?」

「儀式のせいですか?」

「はっきりは分かりませんが・・・そんな気がします」

「今回は偵察に来たと言うことですか?こちらが、どのくらいの共同戦線張っているのか・・・とか・・・」

あまりにも、あっさり引き上げすぎである。

「黒薔薇団も連れていなかったし」

スープを飲みつつ、葉羽瑠はつぶやく。

「黒薔薇団?」

「うちの薔薇十字に対抗して、架怜が作った親衛隊です。」

 向こうも、夢幻斎の力を得た政宗がどれだけの力を出すのか知りたい処だろう。

しかし、それはまだ政宗にも判らない事だった。

「夢幻斎はどうですか」

「力は完全に同化しました。離れていても会話も出来ますし、まあ儀式は成功したと言えますが」

「凄いですね。いい補充基地を得られましたなあ」

 

葉羽瑠の言葉に苦笑しつつ、政宗は訊く。

「あの女、大門架怜はどんな人物なんですか?」

「守るものも、失って惜しい者も無い。破壊のみを生きがいにする非道な女」

「自分の命も・・・ですか?」

「ある意味、自分の事もおもちゃにしてますから」

ますます判らない、政宗は首をかしげる。

「多分、理解不可能ですよ」

はははは・・・・・・と笑う葉羽瑠、苦笑する政宗。

「傷は、大丈夫ですか?」

「これくらいは、日常茶飯事です。架怜に丸焼きにされかけた事もありますし、祭司はつらいですねえ」

はははは・・・・・笑えない話題を、笑って話す葉羽瑠は偉大だった。

「大丈夫なんですか?」

「ええ、あんまり腹が立ったんで 雷落としてやりました」

ははははは・・・・怖い話題を笑って話す葉羽瑠は脅威だった。

「薔薇様のお食事は?」

「私と交代で取らせます。ご心配なく」

 

 帰り際、政宗は葉羽瑠を振返った。

「運命は変えられないのですか?」

「私達の思っている運命と 天が下さった運命は違っている事もあります。その真意は計り知れません。が・・神は愛であることを忘れてはいけません。試練も運命も、のり越えて得る何かがあると思うのです」

「・・・・受け入れろと言う事ですか・・・・」

「変えられない事を受け入れる平静な心と 変えられる事を変える勇気、そしてそれらを見分ける知恵。それが必要なのですよ」

(それでも・・・・それでも・・・・俺は・・・・たとえ神に逆らっても奇跡を起こす)

譲れない願いに政宗はすがりつづけた。

 

 

 

無性に夢幻斎に逢いたかった。

 

 

 

欠ける事の無い月を、自らの胸に昇らせる。

 

 

 

尽きぬ願いいは次から次から溢れてきた。

 

 

 

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