第3話 接触

 

 

 

第三聖地の聖木の上。来栖マリは身を潜めている。

 

(今度こそ捕まえてやる)

夕日が総てを赤く染め、そこに黒衣のジャンヌダルクが現れた。

ザッー

音がして大門架怜が振返ると、来栖一族の紅薔薇の巫女、来栖マリがいた。

「なに?木の上にいたの?サルじゃあるまいし。その修道服で木のぼりなんて はしたなくてよ・・」

「オバさんには無理でしょうね。私、若者だから。今度こそ逃がさないわよ!」

架怜は手の平から火炎を放射させる。それを避けつつ、マリは聖句を唱え続ける。

次の攻撃態勢に入った時、架怜は来栖レイに羽交い絞めにされた。

「白薔薇!何処に潜んでいた?」

気配は感じなかった・・・・不覚を取る架怜。

「いつまでも、やられてばかりだとでも思っているの?」

ショートヘアーの、ボーイッシュなレイが静かにささやく・・・

「天にまします我らが主よ、哀れなるこの悪しき魂に貴方の深き御慈悲を与えたまえ・・・

尊き神と精霊の御名の下に我、来栖マリが命ずる・・・・・」

マリが静かに近づく・・・・

「悪霊よ悔い改めよ!」

架怜の姿が消え、木の人形がその場に残った。

「ダミー!?」

 「お父様!」

マリとレイは聖堂に向かい走り出した。

 

 

 

マリア像の前で、葉羽瑠は架怜、矢守和磨と対面した。

「ごきげんよう・・・ハウル・・・」

赤い唇が嘲笑った。

「黒薔薇の君。今日はお友達もご一緒ですな」

神父服の葉羽瑠は、にっこり微笑んだ。

「矢守和磨と申します。初めまして・・・」

尖った印象の矢守和磨に、彼は笑いかける。

「初めまして・・・お噂は甥から伺っております」

「夢幻斎から?」

「先日は、甥がそちらにお世話になったようですな」

ふふふふ・・・・架怜は笑う。

「ええ・・・あんまり可愛いから さらいましたが・・・政宗一筋のようで逃げられましたわ。惜しい事を・・・あの時は処女だったんだけど。

さっさと食っとくんだった」

葉羽瑠はため息をつく。

「淑女が、そういうお下品な事を言ってはいけませんよ」

それには答えず架怜は辺りを見回す。

「何処からこの結界、破ろうかな・・・」

大聖堂のマリア像はセント・ローザンのご神体である。これを崩せば結界はすべて崩れる・・・そしてそのマリア像には

葉羽瑠の結界が張られている・・・

「ここさえ崩せば、首都を守るものは無くなる」

「お前に、私は倒せない」

葉羽瑠の瞳が鋭く光る。

「やっと、本気になったね・・・・オジサマ。でも今日は和磨付きだから、どうかなあ」

 架怜の火炎攻撃をかわした葉羽瑠は、和磨のおこした竜巻に切り裂かれ倒れた。

「2対1とは卑怯じゃないか?」

振り返れば、聖堂の扉に政宗の姿があった。

「政宗・・・」

「和磨。ひさしぶりだな、この前は夢幻斎が世話になったな。今日は警護の家の者を全滅させてくれたようだが」

「貴方ね、かわい子ちゃんと合体してパワーアップした土御門政宗は」

架怜が髪をかき上げる。

「お前か?うちの夢幻斎をいじめた女は。2対2でやるか?」

懐から呪符を取り出したとき、マリとレイ、ユキが現れた。

「お父様!」

「2対5になるじゃない」

不服そうな架怜

「いいえ。薔薇十字軍も呼んだわ。」

マリはそう言い、葉羽瑠に駆け寄った。

「今日はここまで・・・またね」

架怜と和磨は消える。

「様子を探りにきたのか?土御門との共同戦線の張り具合とか・・・」

とっさにガードしたものの、あちこち斬れて血が滲む葉羽瑠。

「大丈夫ですか・・・・」

政宗も駈け寄る。

「不覚を取りました。来てくださり助かりました」

いつもの明るい笑顔に変わっていた。

「お父様、ここは私達と薔薇十字で守るので、お手当てを・・・」

マリは父を政宗に託した。

「お願い致します」

政宗はうなづくと葉羽瑠を支えて出て行った。

 

 

「ね〜見た見た?政宗様!」

政宗が出て行くなり、マリがはしゃぎだす。

「凄くかっこいいよね〜」

黄薔薇のユキが瞳を輝かせる。

「私は夢幻斎様のほうがいいわ」

レイがそう言うと、マリは割り込んできた。

「お二人一緒の方がもっといいのよ!」

さっきまでの緊張感は何処へやら・・・・かしましい薔薇巫女達を、マリア様は優しく見守っておられた。

 

 

TOP    NEXT

ヒトコト感想フォーム
ご感想をひとことどうぞ。作者にメールで送られます。
お名前
ヒトコト

 

 

inserted by FC2 system